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地域密着型重工よしはる  作者: 雨露しのぐ
プロローグ
1/7

栄光の日々


 シェア業界ナンバー1!


 株価上昇天井知らず!


 有能な社員! 優れた設備! 福利厚生!


 学生の入りたい企業、3年連続ナンバー1!!!


 それら全てを作り出した人物こそ……今世紀、いや人類が誕生して以来最高の傑物との呼び声名高い……!






「ふふ」

 自信に満ち溢れた若き顔。

 立派な装飾のされた、大男が優に3人は横並びで入れるであろう自動ドア手前。

 それは記者に囲まれた会長、その人なのである。


「会長! またやりましたね!」

「会長! 新開発のボディースーツ! 開発の秘訣は!」

「会長! 今度はどの国に……!!」

「会長!」「会長!!」「会長!!!」


 騒音のような声の塊。

 しかしそれらに圧倒される事も無く、常に全てを理解、把握し丁寧に答えていく会長。

 傍らにいる秘書じょせいは無言であり無表情ではあるけれどもどこか誇らしげである。


「ふふ」

 会長は髪の毛をぴったりとオールバックに固め清潔感に溢れている。

 スーツも特注だろう。

 細部までこだわった装飾の時計にいたるまで全て、彼だけに相応しく、彼以外が着てもこれらの価値を十分に活かすことは出来ないと思わせる。

 それだけの魅力が彼自身から終始放たれているのだ。


 細面の顔に通った鼻。

 齢は――いまだハタチ手前といったところか。

 あまりに、わかい。

 けれども雰囲気はどんなに年齢を重ねた老人よりも重厚さを感じさせる……。


 なによりも特徴的なのはその目。

 いわゆるオッドアイと言われるその目である。

 右はどこまでも深い黒、左はなによりも激しい赤。

 目がたまたま合った女性記者などはもう腰砕け。


 女性だけではない。

 男性も、それこそ自身の決して届かぬ理想の姿にもはや嫉妬することも無く、尊敬のまなざしを向けているのである。

 

 そんな記者たちだ。

 質問する内容も一切合財が褒め言葉であり、

「今日もイイ記内容にしてくれよ」

 とでも会長が冗談めかして囁いて見せれば、こちらは冗談ではないとでもいいたげな真剣なまなざしで、それこそヘッドバンギングでもするかのようにがくがくと首――というより頭をを縦に振る始末。

 それでマスコミの役割が果たせるのか? とも思えるが、もはやコレは日常であり疑問をはさむ者は数少ない。




――そうして3分もした頃だろうか。

「……会長、会議のお時間が」

 秘書が耳元で囁く。

「そうかい?」

 お? と少し演技がかった顔を作って返事をする。

「もうそんな時間か……僕は構わないんだけどね」

 

 えぇ!? とざわめく記者一団。

 きわめて残念そう。

 会長の演技がかった顔と違い、やはり本気なのはそれぞれの顔を見れば明らかである。

 まるでファン倶楽部じゃないか。


「ふふ……」

 福見を持たす笑顔。

 そうして十分に聴衆たちの期待を一身に集めたのち、

「どうだろう。 あとでまた時間を取ろうじゃないか」

 ウインク。


 気前よく、情け深い。

 この会長は巨大兵器産業のトップとしてはあるまじき好評価をされている。

 それはこういった気さくな部分も評価されているからこそだろう。

 

 わー!

 わーー!

 もはや万歳三唱一歩手前。


 クルリと。

 優雅に翻ってみせる会長。

”声援”を背に、秘書とともに自社へと向かい歩みゆく。


 歩幅は一定。

 テンポよく、コツコツと音色を鳴らし堂々と。





 オフィスへ続く通路。

「大学の教授にでもなった気分だ」

 満足げな表情の会長。

 いつもの事ではあるのだが、今日は特に気分がいい。

 ならばこそ意味も無く横を歩く秘書へと語りかけてみせる。


 すると、

「そのとおりですわ会長」

 美しい女だ。

 社長を流し目で一瞥。

「いまや会長は世界を導く立場なのですから」

 会長の心を更に満たす一言をさりげなく言ってみせる秘書官。

 薄いココア色の滑らかで美しい肌に腰まで届く黒く長い髪。

 毛先から10センチほど、緑に染色されているのも合っている。

 藍色の透き通った目をした彼女もまた、この会長の秘書として相応しい能力を持ち合わせている事だろう。


 そんな秘書の言葉を聞いたから、という風ではない。

 会長は大きく息を吸い込むと。

「よし……」

 目を少しだけ険しくする。

 赤い目はますますその炎を燃やすかのよう。

 まるで、これが本来の彼であるとでも言うかのように。

 

「――先だ!」

「もっと先へ!」

「時計の針を進めて見せようじゃないか!」

 それは決してうぬぼれなどではなく。


 彼には確かな能力があった。


 知恵があった。


 風格があった。


 環境があった。


 なにより仲間が、いた。


……。  




 ただ、そう。

 一つだけ足りていなかったのは。

「会長! 以前開発された新兵器がまたも罪のない人々を!」

 ”あの時”奥の方にて健気に叫ぶ、ごくごく小さな声。

 けれども大事な。

 何よりも聞かなければいけないはずであった声が、彼の耳に届く事が無かった……。

 それだけなのである。







会長の年齢変えました。

ミソジ前からハタチ手前に。

わかいっすねー。会長。


年齢変えたのに伴い、

学生の入りたい企業→10年連続から3年連続に変えました。

8,9歳で会社興す(会社そのものは親から引きづいているかもしれない)とかいかにも漫画っぽいけどやめておきます。

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