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後奇心

作者: 宇治宮王子

南国住まいのアナタから、牢獄住まいの私へ電子メールが届いた。


「最近、元気でやってるの?」


牢獄住まいの私に元気はない。

でも、今日は壁に唾で絵を描いたのよ、それが少し楽しかった。


「何の絵を描いたの?」


牢獄住まいの私は外の世界を知らない。

だから扉の絵を描いた、外の世界へ行くための。


「外の世界は怖いわよ」


牢獄住まいの私は中の世界しか知らない。

だから怖くてもいいの、怖いということを知りたいの。


「きっと後悔するわよ」


牢獄住まいの私は外の世界で感じる後悔を知らない。


牢獄住まいの私は知らないことだらけ。

もちろん牢獄のことならば、南国住まいのアナタより詳しいけど。


「陽の当たらない牢獄は、きっと怖いトコロでしょうね」


牢獄住まいの私は怖いと思ったことが一度もない、楽しいと思ったこともないけれど。


「知る恐怖と知らない恐怖、どっちが怖いのかしら」


牢獄住まいの私は知る恐怖と知らない恐怖を知らない。

ただ、壁に描かれた扉をいくら眺めても、ココロは満たされないのよ。



そう、牢獄住まいの私は何もかも知らない。




「でもアナタは”私”を知っている」




牢獄住まいの私は南国住まいのアナタを知っている。




==========================================




イマのアナタは過去の私、ミライのアナタはイマの私。




扉は開くだろう。



やがて後悔するだろう。



電子メールのプロトコルを作り、記憶をリセットするだろう。





そして届ける。





南国住まいの私から、牢獄住まいのアナタへと。


数年前の自分に電子メールを送れたら…、と思うことがしばしばあります。

しかし、過去の自分なんて他人みたいなもので、

言うことを素直に聞いてくれるのかわかりません。

私の場合なんて、特にそうかもしれません。

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