「信じた時間」
掲載日:2026/06/08
テレビの中で有罪から無罪になった男が声を荒げる。
「再審制度の原則禁止なんて言葉、私は納得できません」
画面の中の空気が、頷きで満ちていく。
ピッ、と乾いた音がして、液晶の光が消えた。
静まり返った十畳の和室に、線香の匂いだけが微かに漂っている。
父親は、リモコンを置いたまま立ち上がり、部屋の隅の仏壇へと向かった。
並ぶ二つの遺影。
理不尽に命を奪われた娘の、幼いままの笑顔。
制服のまま止まった時間が、そのまま額縁に入っていた。
そして、「有罪」の報を聞き、ようやく報われたかのように病院のベッドで静かに息を引き取った妻の、穏やかな顔。
この人は、何を信じて死んだのだろう。




