隠された勇者
どうも!麦畑だよo(^▽^)o
早い?早くはなかったよね。普通に隔週になった…。
まあ、元々この作品は3週か1ヶ月に1回って考えてたから、そう考えれば早いのか…??
フリージアは掴んだ植物を眺める。艶があり、彩度が高い。蔓は力強く、フリージアの力だけでは何の問題もないようだ。常にしなりのある黄緑を彼女に提供している。
しげしげと雄大な葉を確かめた後にフリージアは再びエレンへと向き合った。
「エレン。貴方は事情も話していない私を助けた。だから、私も貴方への感謝を込めて私の目的についても話すわ。それがマナーだし、フェアだから。」
フリージアとエレンの間に一筋の風が吹き抜ける。
「私ね、イニシエの勇者を探しているの。」
フリージアは決意してエレンに打ち明けた。
「いにしえ?」
エレンが復唱する。
「イニシエというのは『昔』と同じ意味の言葉よ。」
"昔"と表せる言葉をわざわざ"いにしえ"と表現直しする者は少ない。特に、そういった分野の人間以外は使わないだろう。
「なるほどな!で、勇者は悪い奴をやっつけたスゲ〜強い奴のことだよな。」
「ええ。」
勇者というのは人々が名付けた、いわば'名誉の称号'である。何らかの危機に対して勇気を出して者は皆勇者と言えるが、その中でも世間的に認められた者だけが名乗ることが出来る。
「ということは、いにしえの勇者は昔に居たスゲー奴ってことだろ?レイから勇者については聞いてるぜ。ただ、いにしえの勇者は覚えがないなぁ。」
エレンは首を傾げる。しかし、それもそのはず。何故なら、ノストラダムス王国において、勇者自体はよく聞く話なのだが【イニシエの勇者】に関してはその記録が殆ど抹消されているからだ。だから、レイでも教えることが難しかったのだろう。そもそもレイでさえ知っていたかが怪しいところだ。
「知らなくてもおかしいことではないわ。だって私がその存在を知ったのは、お城の秘密図書館ですもの。」
秘密図書館…というのは、ここでは隠し部屋のひとつを指すこととしよう。フリージアが偶然隠し部屋を見つけた時に、そこに置いてある膨大な本の数が印象に残ったので彼女が名付けたのだ。
「秘密図書館!?お城は広いな!」
エレンは目を輝かせた。フリージアもエレンが勇者の話に興味を持ってくれたことを嬉しく思った。
「イニシエの勇者はその名の通り、遥か昔に実在したと言われる英雄。当時魔力が枯渇…滅びかけていた中で暴虐の限りを尽くしていた【大悪魔キュープ】を勇者が封印したことで人類は事なきを得たの。だから、人々はその勇者を讃え敬った…と、私が見つけた本には記してあったわ。」
彼女は記憶のページをめくった。
「へぇ〜、昔は魔力が足りなかったのか。知らなかった。オレはいっつも魔力頼りだから正直、なくなったら困るな。」
エレンは身震いした。エレンにとって魔法は生活必需品なのである。森での火おこし程度であったら問題はないけれど、魔獣対策にはどうしても魔力が必要になる。それに、魔力が存在しないとレイとの連絡手段がなくなってしまう。
「そうよね。お城の管理も魔法で補強しないとやっていけないし。だって、魔法無しだと時間がかかるし安全確認が大変なのよ。」
主に王族などの国内最高権力者が集い、生活する拠点となっている王城。当たり前のことだが反対勢力の暗殺者に狙われることもある。そんな時、魔法があると食事や装飾に毒物等の不審物が含まれていないかを確認することができるのだ。逆に、魔力が枯渇して魔法が使えなくなる場合は毒味役を増やさねばならなくなるだろう。
「あれ?ところで、いにしえの勇者って人間か?」
「そうよ。」
ふと、エレンの頭の中にひとつの疑問が浮かび上がった。
「だとしたらオカシイぜ。人間の寿命は長くても100年ちょいなんだろ?大昔に実在したって書き方からして死んでるんじゃ…。」
しかし、フリージアは首を横に振った。
「いいえ。勇者は死んではいないわ。」
「ふーん。…死んではいない?」
僅かな言葉遣いが頭の片隅に引っかかる。
「ええ。分かるのよ。イニシエの勇者が死んでいないことだけは。」
彼女の話によると、彼女は秘密図書館で見つけた勇者伝説の本を読んだ瞬間に得体の知れない気配を感じられるようになったらしい。
「本を開いたら、辺りが光に包まれて…。私は夢を見たの。知らない女の人が出てきて『勇者を探せ』って言ってきたわ。その後、その勇者の情報が頭に流れてきて…。」
夢。永らく人間が研究し続けてきた分野。夢には悪魔や魔物が意図的に見せる【加工夢】と生物が眠りに入ると自然に見る【自然夢】の2つがあるのだが、後者は現在もその仕組みがよく分かっていないのだ。前者は意図的に見せていることもあって、解明は容易であった。つまり、フリージアが語る'夢'というのは十中八九'加工夢'のことである。
「勇者の情報!?どんな奴だった?」
エレンは未知の情報にワクワクが抑えられないようだ。
「えーっと…。真朱色の髪に灰色の瞳の女性で、年齢は18歳だったと思う。」
「ひぇー!18歳かぁ。オレと数歳しか変わらないのに勇者なんてすごいや!他には何か聞いてる?」
エレンは興奮しながら先を促した。
「そうね…。あ。そういえば、彼女は剣使いだけど途中から魔法を使っていたとも言ってたわ。」
イニシエの勇者の生まれた時代は、とにかく空気中の魔力が不足していた。そのため、当時の人類は悪魔などを討伐することで不足した魔力を補っていたという。
「彼女はとても心優しかったから、必要以上に殺生はしなかったらしいの。とはいえ、悪さを働いていた悪魔には容赦がなかったらしいわ。」
当時の文化は魔力が豊富にあった頃の文化をそのまま流用し応用していたため、生きるためには魔力が必須だった。大悪魔達が蔓延ってしまった頃には選択肢が残されていなかったので勇者は心を痛めつつも討伐に力を入れていった。
「へぇ〜!良い奴なんだな。まだ生きてるなら会ってみたいなぁ。」
エレンは、深く考えてはいなかった。
「でしょ?私も、そう思ったのよ。頼まれたっていうのもそうだけれど、私にとってはお城から抜け出す目的が出来たって意味でも丁度良かったし。」
フリージアも、そこまで深くは考えていなかった。現在とはあまりにも時代背景が異なるので、感情移入するのが難しいのである。それに情報も少ないので尚更である。
「なるほどな。そういうことなら、オレが街まで連れて行ってやるよ!」
エレンは森の奥を指差した。
「幸い、この森の出口はここから大した距離じゃないんだ。そう、丁度ここから真っ直ぐ進むだけで街に出れる。」
エレンは迷いのない足取りで1本の木に歩み寄っていく。
「ただし、出方にコツがいる。」
そして木の目の前に到着すると、その幹を軽く数回叩いた。続いて振動に対応したのか、叩いた幹の周りが軋む音を鳴らしながら左右へと道を開けてくれた。
「そんなわけで、オレも一緒に行って良い?出来れば森を出た後も。オレもいにしえの勇者って奴に会ってみたいんだよね。」
エレンは目を輝かせながらフリージアの様子を窺っている。
「勿論よ。道案内をお願いするわ。」
フリージアはエレンの希望を快諾した。
「ところで、コツというのは今みたいな仕掛けがあるってこと?」
考えてみれば、この森は特殊な部類な気がする。現に、フリージアはあんなに執拗に追い回してきた暗殺者を森に入った瞬間に撒いているからだ。
「それもそうだし、魔獣もいるからコツを知らないと危ないんだ。」
魔獣を甘く見てはいけない。これは、この世界に生まれた人間は絶対に教え込まれている常識だ。
「そうなのね。…私でも倒せるかしら?」
何せ、フリージアは実践経験が乏しい。魔力量は人並みにあるので戦えないということはないのだが、仕留められるかが不安なところである。
「大丈夫。少し鍛えれば簡単に倒せるようになるよ。」
エレンはその辺に実っている林檎のような果実を魔法で撃ち落とし、フリージアに与えた。
「鍛える?」
軽く「頂きます」をいってから彼女は果実をかじった。
「簡単さ。森を抜けるだけでいい。抜けた頃にはそこそこ強くなれると思うよ。」
エレンは自分用にも取った果実を食べながらそう言った。
ちなみに、森全体に魔法が施されているので生息している生物も非生物も基本的に魔力ズブズブだよ( ✌︎'ω')✌︎




