森は美しい
こんばんはなお時間!麦畑だよ_φ(・_・
遂に始動!新シリーズ〜。楽しくて欲深いファンタジーですよー。…他の作品もあるのに、どうするつもりなんだろ。
少女は走っていた。ただ我武者羅に、ひたすら足を動かしていた。
矢が体に刺さるのは何度目か。
火傷が隠せなくなったのはいつだったか。
なんとか致命傷は避けているものの、普段走ることのない彼女にとって走り続けるだけでも苦難であった。しかし、太陽はまだ怠惰を貪っている。
まだだ。
足に刃物が突き刺さる。ほとばしる激痛に耐えながら少女は走り続けた。
痛い。イタイ。いたい…。
少女の視界が古いカメラのようにピンボケしていく。ああ。私は運命に見捨てられたらしい。少女はそう思わずにはいられなかった。
そして遂に、少女は痛みさえも感じなくなってしまった。身体も軽い。しかし、死にかけの身体は重くなると耳にしたことがある。実際は、どちらが正しいのだろうか?
「…どうして動けるんだろう、私。」
眩しい。もう2度と見れないと思っていた
光が目を温かく照らしていた。
周りには緑の木々だけが元気に生い茂っている。どうやら、まだ森を抜けてはいないようだ。
「お城の森って、こんなに綺麗だったっけ。」
人間は、死を目前にすると何もかもがどうでも良くなったり、むしろ全てが素晴らしく見えたりするらしい。この感覚もそれに当てはまるのだろうか。
考えたところで、今はその答えをくれる人はいない。まあ、臨死体験なんて答えられる人の方が少ないだろう。兵士に聞く…のは、あまり良くない気がする。
とうとう少女は思考を放棄した。齢15歳になったばかりの彼女には早すぎる議題だったようだ。
「私は生きてる。それだけで充分じゃない。」
前向きな考え方は前向きな結果をもたらす。それが彼女の考えであり、モチベーションだ。
ふと、少女は足元に違和感を感じた。痛みではない。この感覚はーーー。
「冷たっ!」
不規則で、柔らかくて、神秘的。
水だ。気づかないうちに足が浸かってしまっていたようだ。慌てて飛び退くその水面には不思議そうに水を見下ろす少女の像が結ばれた。
美しい金色の髪に色白の肌。そして、まだ幼さが残った瞳にはスミレが咲き誇っている。もっとも、全力疾走と追手のせいで髪は乱れ、肌から水面に向かって鮮血が滴っているのだが。
少女は下を見下ろしたまま、しばらくの間呆然としていた。こうして立ち止まると、あれほど鬱陶しいと思っていた風が気持ちいい…。
そのまま木々の会話を聴いていると自分も森の音楽隊の一員になれた気がした。そういえば、お城の聖楽団は今日も王様の為に演奏をしているのだろうか。
「…自然の音って、子守唄なのかしら?」
安心しすぎたのか、なんだか眠くなってきてしまった。
ウト、ウトウト、ウトウト…。
少女はそのまま静かに瞳を閉じたが、首先をくすぐる何かを感じ取ってすぐにまた開いた。
少女の目の前には、上下逆さまの顔があった。
「よっ。」
大木に足を引っ掛けた状態で、ソレは挨拶をした。
「うわっ!?」
平衡感覚を失った少女は、そのまま地面に尻餅をついてしまった。
ーーー尻餅をついたと、勘違いをした。
「…え?」
反射的に自分の腕を掴んでくれたらしい。親切な誰かさんは、人間かどうかを疑うくらいにしなやかな身体をしているようだ。
「んー、大丈夫?」
間延びした調子で話す相手の瞳は何かを求めて燻っているようだ。
「…貴方は誰?」
慎重に正体を確かめようとしたところ、ソレは丸くしていたその瞳をさらに大きな円形に変えた。
「オレのこと?」
少女が体勢を整えたことを視認すると、引っ掛けていた足を外してそのまま華麗に地面へと降り立つ。足が地面に触れると同時に木々の間からは光が漏れ、飛び降りたその姿をはっきりと照らした。
年齢は少女よりも数歳上のようだが、そこまで離れていない。また、髪は赤寄りのピンク色で、襟足の一部分だけが長い。どうやら、長い髪は黄金の小さめのリングで留めているようだ。そして、まとめられていない他の髪は短くあちこちへ跳ねている。
どう見てもサバイバル慣れしている様子からココの住民であることは容易に想像できた。
森の住民は輝く笑顔で自分を紹介した。
「オレはエレンだ。よろしくな!」
少女に差し伸べられた手は、運命の別れ目であった。
エレンの髪色は説明し辛いなー。作者的にはカーマイン色みたいなのだと想像しているよ。気になったら検索してみてね!




