第35話 決戦! 巨大モンスターハウス!
:???
:何が起こったの?
:気付いたら敵が死んでた件について
:おそろしく速い刀、私でなきゃ見逃しちゃうね
:まばたきしたら終わってた
:だからまばたきするなとあれほど・・・
「あはは。まあ、そこまで難しい話じゃないんですよ」
この〈風絶ち〉の解放技〈風牙断空閃〉は遠距離攻撃技だが、「遠くに斬撃を飛ばす」技ではなくて、「遠くに届くほどデカい斬撃で敵を斬る」技。
技を発動すると、天から地上に落ちる巨大な斬撃……まさに「断空」の斬撃が発生し、その斬閃上にいた相手を攻撃する。
これの何がやばいかは、一般的な遠隔攻撃スキルである〈血風陣〉と比べるとよく分かる。
例えば〈血風陣〉の場合、遠くの敵を狙うと、飛んで行った斬撃が相手に着弾するまでに時間がかかる。
素早い獣系の敵などであれば、余裕で避けられてしまうこともある。
しかし、〈風牙断空閃〉は違う。
剣を振った直後に超射程に届く巨大な斬撃が発生するため、一メートルの近距離にいる敵でも、二十メートル先の敵でも、全く同時に斬撃が当たる。
いかに素早い敵でも、ほとんど回避のチャンスがないのだ。
さらに、〈血風陣〉であれば、飛ばした斬撃が先頭の敵に当たればそれで消滅、もしくは威力が弱まり、その奥の敵には当たらない。
しかし〈風牙断空閃〉は大きな刃で同時に全ての敵を斬っているため、直線状にいる敵が何体いたとしても、全員に最大のダメージを与えることが出来る。
それでいて威力は〈血風陣〉よりも高く、上方向への範囲も広いので飛んでいる敵にも有効で、さらにダメ押しで命中時に吹き飛ばし効果もあるというのだから、もうとんでもない。
:壊れすぎィ!
:うらやましすぎる!
:説明あんまり強そうじゃないとか言ってごめんなさい
:私も正直舐めてました、許して!
:しょうがないにゃあ・・・いいよ
:何目線なんだこいつは
:いくらなんでも強すぎませんこと!?
:血風陣くん涙目すぎる
「まあ、〈風絶ち〉は〈無銘刀〉より二段階上、ランク2の刀ですからね」
さっきの試し撃ちの時も、事前に〈似非剣豪〉をかけてスキルレベルを上げていたから使えただけで、本来なら〈風絶ち〉は〈刀装備〉のスキルを2にしなければ装備出来ない。
スキルを2以上に上げられるのは、ジョブレベルが10以上になってからなので、本来のバランスならゲームを十数時間プレイしてやっと使える想定の技ということになる。
流石に〈サムライ〉の初期装備で、スキルなしでも使える〈無銘刀〉の技と比べるのは可哀そうだろう。
そういう意味では、本当にチート性能なのは〈似非剣豪〉だとも言える。
「……とにかくこれで、準備は整いましたね」
:いよいよか
:二階層攻略ですね!
:いつ出発する? 私も同行する
:同行できないんだよなぁ
:あれほんとに敵の数おかしかったよね
:さっきまでは爆買いヤバって思ってたけど
今は20本で足りるか不安になってきた
:M5000 お金の補充なら任せて!
:M3000 支援!
:M500 少ないですけど初スパチャです!
「ありがとうございます。でも、きっと大丈夫です」
深く呼吸をして、試し撃ちで減ったMPを〈瞑想〉で回復する。
ホブゴブリンの部屋を抜けて、階段へ。
二階層の敵に気付かれない位置で、立ち止まる。
(……よし)
僕はHPMPが全快になっているのを確認してから、最後にこれまで付き合ってくれた視聴者に向き直った。
「すみません。ここからは真剣勝負になります。しばらくはコメントを読む余裕はなくなると思いますが……」
:そんなのいいから戦いに集中して!
:むしろこっちからお願いしたい
:安全第一でね!
:わたしまで緊張してきた!
:がんばってください!
:お願いだから死なないでね!
あいかわらず、僕にはもったいないほどに温かいコメント欄に笑顔になりながら、僕は静かにうなずいた。
「……行ってきます」
その言葉を最後にコメント欄から目を逸らすと、
「刀気解放〈刀夜光〉――〈似非剣豪〉」
決戦を前に、まずはバフを更新。
崩れて消えた〈刀夜光〉の代わりに、新しい刀を取り出して握りしめると、階段を上る。
徐々に部屋の様子が見えてきて、そこにひしめく敵の数に、思わず足がすくみそうになる。
:敵の数おかしい! あんなの見たことないって!
:あんな強い武器があるんだし、勝てるって信じたいけど……
:あああ! ライ様が気になって仕事が手につかない!
:仕事して♡ と言いたいけど私も家事とかやってられない
:いま手汗やばい、大洪水
:どうかライ様が怪我しませんように!
(……流石に、緊張するな)
目視ではもう判別はつかないけれど、おそらく部屋の中にいるモンスターは数十程度ではきかない。
数百か、下手をすれば千を超えている可能性もある。
「……上等だ」
だからこそ、それを攻略すれば見返りは大きいし、配信映えだってする。
(そのために大量の刀を揃えたし、スケルトン相手に試し撃ちもして、ゲーム通りの効果が出ることもちゃんと確認した。手抜かりはない……はず!)
自分に気合を入れると、そっと足を前に出す。
:とうとう行く? 行っちゃうの?
:がんばれ、がんばれっ!
:あれ……おかしくない?
:勝てるはずだよ絶対!
:おかしいって?
:武器! 持ってく刀間違えてる!!
:えっ!?
:ほんとだ! 〈風絶ち〉じゃない!
:ええっ! それってやばいんじゃ・・・
:ライ様! 刀確認して!
:気付いて! ライ様!!!
:ダメだコメント見てない!
:まずいよ! 誰か伝える方法ないの!?
:ねぇ待ってよ! こんなのって……
モンスターの一体が、こちらに気付く。
これでもう、引き返せない!
「おおおおおお!!」
自分を鼓舞するように声をあげながら、モンスターに突貫する。
ここから頼りに出来るのは自分の実力と、この手に握った刀のみ!
「くら、えぇ!」
もはや、迷いはない。
あとは、〈サムライ〉の……この刀の力を信じるだけ!
いまだに反応出来ていない魔物の群れに向かって、僕は右手の刀を振りかぶる。
そして、
「刀気解放〈千鳥〉――〈雷鳴衝〉!!」
突き出した刀の先端が、魔物の一体に触れる。
その瞬間、
:は?
:ふぁっ!?
:なんとぉ!?
:えっえっえっ?
:私たちいっつも驚かされてんな
部屋中にひしめく魔物が一斉に痙攣を始め、その動きを止めた。
(上手くいった!!)
これこそが僕の秘策。
部屋にひしめく魔物の多さを逆手に取った、一発逆転の攻略法。
「――大部屋丸ごと感電作戦だ!!」
リベンジ開始!




