表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/59

第33話 ー ルーベントの門


都市のど真ん中に、世界がひと口かじられたみたいな巨大な穴が口を開けている。


その外周を、切り立った石壁がぐるりと取り囲んでいた。


魔物が這い上がる最悪の時に備えている。


壁に穿たれた唯一の扉――それが《ルーベントの門》である。


門前は朝から市のように賑やかだ。


薬草の匂い、油と金属の匂い、焼き串の香ばしさ。


地図売りの声、仲間募集の呼び込み、


装備の留め具が鳴る金属音。


観光客も冒険者もごった返し、ここだけ時間の密度が濃い。


「すごいでしょっ!!」


エリナが振り向いて笑う。


袖をちょん、と引かれ、俺も思わず見上げた。


「あぁ、こりゃデカいな……。」


開け放たれた鉄門は、首が痛くなるほど高い。


胸の奥がすうっと冷えるのに、同時に熱くなる。


不安と期待が同じ重さで揺れた。


背中に確かな重みがある。


鍛冶士ドルードから餞別にもらった鋼の槍だ。


革紐越しに、鉄の冷たさが体温を盗っていく。


「その槍をくれてやる。――絶対にエリナちゃんを死なせるなよ、小僧。」


渡された日の声が、金具の軋みと一緒に蘇る。


俺は槍の柄を握り直した。


重い。


だが、悪くない重みだ。


門は開いている。


俺たち二人のために、開かれている。


――行こう。


門の向こう側から風が吹き上げた……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ