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第3話 ー 初めての狩り成功


日々の鍛錬は、着実に積み重なり、そして結果を生み出す。


「ふんっ!!」


ぶん投げた先端を尖らせた木の棒──いや、もう“木の槍”と呼ぼう。


それは真っ直ぐに飛び、兎の脚の付け根に突き刺さった。


「っ!! よっし!!」


俺は“初めて成功した狩り”に歓喜しながら、地面でもがく兎の長い耳を掴む。


そして木の槍を握り直し、首元をもう一度突き刺した。


肉を割る感触、生命が静まる瞬間──それが確かに、手のひらに伝わった。


『テレレンッ!! レベルアップしました!!』


《2Lv → 3Lv》


あの心地よいレベルアップ音。


脳内で弾けるような高揚感。


ドーパミンが脳を駆け巡る。


命を奪う行為が、報酬へと直結するこの世界の理。


「やっと……レベルアップしたぞ!!」


両の手を天に掲げ、誰もいない草原で勝利を叫ぶ。


その声はどこか子供じみていたが、胸の奥は確かに熱かった。



そういえば、両親の紹介がまだだったな。


俺の父マサノブと母ヨシコは、揃って農業を営んでいる。


毎日、畑と太陽にまみれ、手の皮は厚く、腕は真っ黒に焼けている。


この村では、そうやって地を耕し、穀を育てるのが“当たり前”の生き方だった。


俺はその二人のもとへ、戦利品の兎を誇らしげに掲げて持っていった。


日頃の感謝を形で返すのは、大人として当然のことだ。


「どうしたんだ、その兎は」


父マサノブが振り向いて言う。


「この木の槍で狩ったんだよ! 今日の晩飯にしよう!!」


「おお、やるじゃないか。毎日棒を投げてたと思ったら……そういうことか。」


父の口元がわずかに緩む。

理性的で穏やかな人だ。俺はこの父が結構好きだ。


「アンタ、どうしたんだい」


そこへ、腰に手を当てた母ヨシコがやってきた。

俺の持つ兎をじぃっと見つめ──


「っ!? どこから盗んできたんだい!!」


「いってぇっ!?」


頭をパシンと叩かれる。


クソが。だから俺はこの母が苦手なんだ。


短絡的で、すぐ手が出る。


そのくせ後から機嫌を取るのも早い。


「フジタカが自分で狩ったそうだよ」と父が助け舟を出すと。


「え、そうなの? あら、すごいじゃないの」


と母はオホホと笑い、さっき叩いた頭を今度は撫でてきた。


「そ、そうだよ母さん……」


めんどくせぇが、まぁいい。

俺の方が精神的にも年上なんだ、ここは大人の対応をしておこう。


──何せ、この世界では俺が“10歳児”でも、

中身はもう、三十路を超えたおっさんなんだから。




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