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第24話 ー 責任逃れ


拝啓


時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。突然の書状、失礼いたします。


私が生まれ育った国は、アルティ王国と呼ばれる土地でございます。

その国には、著名なダンジョン都市が存在しており、ルーベントと称されます。


このたび、私は交易都市ベネルトを離れ、ルーベントへ移住いたしました。

移動したと申しますが、正直に申しますと、避難するように逃げてきた次第です。


率直に申し上げます。


私の軽率な判断と行動が原因で、交易都市ベネルトが多大な被害を受ける事態を招いてしまった可能性が高く、責を問われることを恐れておりました。深くお詫び申し上げます。


当該事案の経緯を申し上げますと、現地の状況を「鬼の巣」と誤認し、躊躇なく排除の手を取ったところ、それは実際には「鬼の村」であったことが後に判明いたしました。


結果としてあの交易都市ベネルトに生じた火災と破壊は、私の行為と無関係とは言えず、被害が拡大した一因となってしまいました。誠に申し訳ございません。


私自身、法の裁きを受けるに足る行為をしたと自覚しており、極刑に処されてもやむを得ないのではないかとさえ考えております。ゆえに、私はその場を離れ、ルーベントへと身を寄せる決断を致しました。


ただ、逃避によって過去が消えるわけではないことも承知しております。いまはまず生き延び、行く先でできる範囲の償いと責任の取り方を探したく思っております。


取り急ぎ、ご報告並びにお詫び申し上げます。

何卒、ご容赦のほどお願い申し上げます。


敬具


フジタカ



ルーベント――この国でもっとも有名な“ダンジョン都市”だ。


街の中央には巨大な陥没穴がある。


人の手では到底掘れぬ深さと広さ。


その底は見えず、吹き上がる風は常に湿っている。


古くから「神の墓」と呼ばれ、無数の冒険者を飲み込んできた。


だが同時に、莫大な富を吐き出す街でもある。


地底から採れる魔鉱石、魔獣の素材、そして――“経験値”という名の狂気。


それらを求めて、他国からも冒険者や商人、傭兵、犯罪者までもが集まる。


昼は交易の喧噪、夜は酒場と血の匂い。


街の通りには常に何かが動いている。


生きるためか、強くなるためか、それともただ“死にたくない”だけか。


表向きには王国の管理下にあるが、実質はギルド連盟が支配している。


中央ギルド《深淵探索局》を頂点に、下部には数十の独立ギルドが存在し、街は常に競争と裏取引の渦の中にある。


“地上は市場、地下は戦場”


それがこの都市の合言葉だ。


――俺が今、足を踏み入れているのは、そんな街だ。



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