第20話 ー 北門突破
冒険者達と交易都市ベネルトの兵士達は連携しながら、共に鬼共の進行を食い止めていた。
血飛沫が辺りを舞い、罵声が響く。
森から溢れた炎が風に煽られ、夜空を焦がす。
火の粉が雪のように舞い、者達の上に降り注ぐ。
角笛が二度、短く鳴った。
「盾、詰めろ。槍、間合いを保て」
兵が荷車の胸壁に盾を合わせ、冒険者が肩越しに穂先を並べる。
前へ出た鬼一体を三本の槍で止め、短剣で喉を断つ。列は崩れない。
右手の下水口から小型の鬼が抜けた。
ミナが矢を三本。
目、喉、背骨。
カイが片手剣で押し戻す。
フジタカは炎の向こうを見た。群れを束ねる個体がいる。
「俺が行く」
一歩だけ跳び、槍を滑らせて鎖骨下に差し込む。
捻って抜き、すぐ退く。
空いた間は二列目が埋めた。
地鳴り……オーク達の突進が来る。
「投槍、今! 土壁上げ!」
術師が石畳を盛り上げ、勢いを削る。
投槍が走り、一体が膝をついた。
前列が一歩出て突き、引き、替える。押し返す。
フジタカが滑り込み、顎下を突いて巨体が倒れる。
遠く北門で轟音。鬼の列が一瞬だけ鈍る。
「今だ、押し返せ! 門へ寄せるな」
矢が増え、詠唱が重なり、槍がさらに低く構え直される。
列はそろって一歩、前へ出た。
◆
門柱が折れた。
鉄板がめくれ、空が覗く。
巨人のような鬼ーーC級魔物のオーガが肩で裂け目を広げ、岩をもう一度、叩き込む。石と鉄が悲鳴を上げて弾け飛ぶ。
「北門が破られた!!退け!!」
油壺が飛ぶ。黒い炎が口を開き、門前に火の帯が走る。
オーガは怯まない。踏み抜き、火が跳ね、足に煤が貼り付く。
破られた北門から小型の鬼が侵入を開始する。
ーー戦闘は激化の一途を辿り、市街戦に持ち込まれた。




