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30.過去ー防衛ー


「いったい何があったのですか?」


まず口を開いたのは小野田先生だった。


そこから私たちは事情を説明した。もちろん深入りする内容は言っていない。真由たちも言わないでくれた。


「分かりました。もう大丈夫ってことでいいんですね?」

「はい。」


本当は苛立ちはまだ残ってるけど頷いておいた。こういうことを隠すのは得意な方だ。

まあ、隠すつもりはないんだけど。


「なら、教室に戻りましょう。」


教室に戻る。ホームルームはもう終わっていて、もうみんなしゃべっていた。


良かった。これなら目立ちにくい。

こんな状態なのにそんなことを思う自分はどうかしている。


そこからはあまり良くはなかった。

先生方は私が大声で怒った?と思っているから、授業毎に聞かれ、毎回答えなければならない。

めんどくさい。


あぁ…早く帰りたいな…。なんで噂話って回るの速いんだろう?


そんなことを思っているうちに放課後になり、帰っている…と、またしても牟田が追ってきた。はぁ…。


「何?またストーカーに来たの?」

「そうだけど…そうじゃないよ。」

「どっちだ?」

「ストーカー初期状態です。」

なんだその言い方は。変なの。

「じゃあどうするべきだと思う?」

「今すぐ戻るべきだと思う。」

「なあんだ、分かっているんだね。じゃあその通りに行動してよ。」

いつもだったら、この場の内容は変わらずとも、多少は優しさを混ぜられた言葉にできるのだけど、今日はそれもやりたくなかった。やる気力も無かった。


「嫌だ。」

「はあ?」

何いってんだよ。正しい行動を理解しているのなら、その通りに行動すればいいじゃん。何でわざわざ私の方に来るわけ?

って、牟田は私のこと好きだったんだっけ?じゃあそれが理由か。


私はいつもそうだ。自分に好意を持つ人との接し方が分からない。だから、普段はそれを知らないことにしている。だけど…それでも喜びを顔に出してくる人がいる。そんな人に、私はその好意を向けられたくなくて、過剰に反応してしまうのだ。


◇◆◇


そう、私のことを百合とは言わないけど好きっぽく思ってくれている子がいた。

そして、席替えのとき、その人と隣の席になってしまった。

「やったぁ。」

その子はそう言った。

だけど…私はそう思う気持ちが分からなかった。私はその子と係が一緒だからしゃべることがあったけど、その子を泣かせたこともあって、あまりいい関係ではないと思っていた。だけど、それなのに私と同じ席になったことを喜ぶのだ。

「あぁー嫌だ。あんたと隣になるなんて」

そんなことを本人にも直接、そして係中も他の人に言ったりした。

そう、過剰に反応してしまった。


その子は一般に可愛いと思われるような子で、私も可愛いとは思うのだけど、それを言ったらその子が変に喜びそうで、そして私はその姿を見たくなくて…だから言ってはいない。


だけど、だからこそ疑問に思う。なぜ性格も何もかもかわいげがない私をそう思うのか。男子だったら、あぁそうなんだね、としますようにした。そう慣れていった。

だけど、女子からの好意らしきものというのはまったく慣れることができない。


その子は結局私をそういうことをする人物だと知っていたようで、特に関係が変わることはなかった。


◇◆◇


今考えてみれば、あれは敬愛みたいなものだったかもしれない。こんな人に敬愛を抱くことも理解できないけど。

それでも、私は好意を向けられることに慣れていない。男子からのは無理に納得させているが…それでも慣れていないし、向いていない。

牟田のように、相手が好きだから、という理由で行動するときも、自分以外の相手向けなら納得できるが、自分向けでは納得できない。


つぐつぐ自分は厄介な性格だな。


改めてそう思った。


「今の水無瀬さんを放っておくことは正しくないと思う。」

「変なこと言わないでくれる?」

ほら、こんなふうに過剰に好意にさらされないようにしてしまう。

「それは自覚している。だけど、本当にそう思うんだよ。」

「はぁ…好きにして…」


急に顔が明るくなっている。こんな私についてくることを認められただけなのにどうしてそんな喜ぶんだろう?

…これの答えもさっきの疑問ときっと一緒なのだろう。


「ありがとう。」

「はぁ…」


私はまたため息をついた。



「さすがに家は整理されてないからここでいい?」


そう言って指差したのは公園だ。かなり家に近い。

あーあ。これで家を特定されちゃうかもな…。


「いいよ。」

「で、何を言いに来たの?」

「え?」

「そうじゃないの?言うなら早くしてくれる?」

「そうだけど…なんで分かったの?」

ああもう、苛立っているのが分からないかな。さっさと本題に入ってよ。

「追いかけてきたのなら昨日と同じようにかもしれない、って想像付くでしょ!」

「あ…そう…。」


そう言ってため息をつく牟田。

私はただの推察を言っただけなのに、しかもそれが偶然当たっただけなのに、なぜため息をつかれなければならないのだろう?

私も話を飛ばした感はあるけど、牟田には通じるぐらいかと思っていたけど…。

不思議だ。


「で、何を聞きに来たの?」

「え…いや…それは、」


言葉を濁す。言いに来たのにしゃべらないとは。それなら何をしに来たんだ?って感じだ。


「何があったのか聞こうと思っていたんだけれど、それは今日の朝叫んでいたし…」

「つ・ま・り、何も聞くことがないのに追いかけてきたってこと?」

「いや、違う。ちゃんとあるんだよ。あ、そう。」

どうやら思い出したみたいだ。


「水無瀬さんって白明高校のことどう思っているの?」


ん? 今までにそんな話につながるような内容ってあったっけ?

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