15.団ダンスー見極めー
「団ダンスの説明をしまーす。」
やってきたのは男女一人ずつのペアが一組だった。
白明高校の体育祭では、団ダンスが行われる。男女でペアを作って、踊ったりとか、そんなことをするやつだ。
団ダンスはLINEで一応広まっている。今年は白はハズレ、らしい。あたりは青団だと、まことしやかに囁かれている。
あながち間違っていないと思う。だって青団は、ペアと手を繋ぐ、だとかハートを作る、だとかが一切なかった。しかし、それはどうやら上級生にはつまらないという印象を与えているらしい。
白明高校、未だよくわからない高校であり、個性豊かなメンバーばかりの高校である。
「まず一曲目。」
今は、男女で分かれて練習している。そりゃそうだ。男女で振り付けが違うんだから。同じ場所でやったらいろいろ混ざってしまうだろう。
先輩の踊りをしっかりと見る。
一応LINEでは見てきているとは言え、あくまでもそれは画像だ。当たり前だが生の方がよく分かる。そして、実際よく分からなかった部分もじっくり見ることが出来た。
「まずはじめの方をします。ここは…」
先輩の説明が続く。聞きながら軽く真似して見る。
「牟田、お前振り付け覚えているのか?」
「そうだが?」
当たり前だろ。やれることはやっておくべきだ。
「すげえなぁ。」
「感嘆する暇があったら今すぐ覚えろ。」
「では次に行きます。皆さん覚えがよくて助かります。」
あれ?いつの間にか…
男の先輩もいるが、今、仕切っているのは女の先輩だ。そして、それの指示に合わせて、男の先輩が踊っているのだ。
はじめの頃は男の先輩が仕切っていた。女の先輩はしびれを切らしでもしたのだろうか?
そして、すべてを覚えられている人はそんなにはいない。そこを間違えないでほしいな。
「ここまで、一度通してみましょう。」
そういやペアで踊るんだっけ?誰と踊ることになるんだろ?水無瀬さんがいいなぁ。
…!もしかして、出席番号順だったら水無瀬さんとペアになれるかもしれない。そんな希望が生まれた。
団の色はどうでもいいとは言え、運がなかった。だからその分の運をこれに回してください。そんなことをずっと何かに祈り、今日の練習は終了。次回は、来週の月曜らしい。
「復習しておいてください。」
その言葉で締めくくられた。
「お疲れ。」
休み時間、水無瀬さんに話しかけることが出来た。こういうとき、やっぱり席が近くて良かったと本当に思う。
「お疲れー。男子のダンスはどんな感じだった?」
「いや、知っているでしょ。」
「そりゃあダンス自体は知っているよ、けどダンスは知っていても、それを踊ったときの感想は知らないからね。」
うん、そりゃそうだな。
「なんかあんまり難しくなかった。」
「違うぞ、牟田。それはお前だけだ。他は難しいと思っている。」
小宮が話しかけてきた。
小宮は、ダンスの時に、俺に振り付けを覚えているかを聞いてきた男子だ。
「そうなの?どっち?」
「簡単」「ムズい」
「で、どっちなの?まあ見たところ女子と同じぐらいには簡単そうだったけれど。」
「知っているならわざわざ聞くなよ。」「え…」
小宮が驚いている。
「いいじゃん、難しかったとか言われたらバカだねーとか言って笑うつもりだっただけだし。」
「はぁ…」
そっか。
ところで小宮がさっきの水無瀬さんの発言によるダメージを受けているぞ。
一旦水無瀬さんと離れた。
すると、小宮に話しかけられた。
「水無瀬さんって頭いいの?」
「は?知らないのか?普通に成績いいぞ。俺も負けるかも知んないし。」
「マジか…僕、バカに思われているかな?」
「無いだろ。」
水無瀬さんが人のことをからかい以外でバカだと思うことはない気がする。…というか本当にバカ、だと考えたことはあるのだろうか?
「どうして?」
「水無瀬さん、普段あんましゃべんない人はそこまで切り込まねえよ。」
「けど…さっき。」
「あんなの俺が困っているのを見て楽しんでるだけに決まっているじゃん。」
俺以外の人にはあまり適用されないと思う。
「なぁ、牟田と水無瀬さんって付き合っているのか?」
「違うぞ?」
どんな勘違いをしたらそうなるんだ?
「じゃあなんで牟田だけ限定で切り込まれるの?お互いの関係が深いんじゃないの?」
さっきのは…自意識過剰だったかもしれない。
俺以外にも、きっと適用される人は多くいるな。彼女は嫌われにくい体質だもん。みんなにきっと慕われている。
「この学校限定、そして異性限定でいったら、一番深いかもな。」
これくらいの牽制はいいだろう。
「付き合っていないんだ。けれど、牟田は水無瀬さんを好きなんだよね?」
「そうだ。」
「そのままの関係でさ、辛くないの?」
「どうしたんだ?急に?」