12.遊園地ー薄いー
12話です。洸視点です。
私は今までに恋、というのをしたことがない。
同年代にもこういう人は多いだろうけど、目立つのは誰かを好きになった!って人たちだから、少なく感じる。けど、私みたいに恋をどうでもいいと考えている人はどれくらいいるのだろう?
そこに興味がある。
あと、不思議なことがある。
私は可愛いというのは分かるのだが、イケメンというのが分からない。美人は、最近は何となくそういうものなんだ、とは思えるようになってきた。かっこいい、は分からない。
みんなそんな言葉を褒め言葉としてたくさん使っている。けれど、どういうふうに判別しているのだろう?
そんなことを聞いたら、イケメンは、人によって違う、かっこいいは…、かっこいい、そういうふうな返答が返ってくる。
結局、今だ分からないままであった。
今日は、そのイケメンと言われている牟田と、遊園地に出かけている。
カップルだと思われることもあって、少し回りが気になる。カップルなんて私がイケメンと呼ばれている人に釣り合うわけ無いのに。まあ一般にイケメンと言われている人が女子と二人で歩いていれば、そう思うのも無理はないかもしれない。
まず、ジェットコースターに乗った。
ここの遊園地は田舎の方にありながらも、ジェットコースターは怖いと評判らしい。
楽しかった。さすがに恥ずかしいし(本当は普段恥ずかしくてもこういうところでするべきなんだけど)、叫ぶことはなかった。
他にも2人でコーヒーカップを全力で回したり、ミラーハウスに行ったり、そこら辺で昼食をおごりで食べて、ウォーターアトラクションに乗ったり、ゴーカートで競争したり、いつの間にか5時になっていた。
私はだいたい6時に帰ればいいから、次がラストの乗り物だろう。
「じゃあさ、観覧車に乗ろう。」
確かに。最後の締めにはいいと思う。
「じゃ、行こっか。」
この観覧車には幾つかスケルトンがあるらしい。
それにあたればいいな、と思ってたけど、それには当たらなそうだった。
「ここの観覧車に男女で乗ると、幸せになれるんだって〜」
「へえー。そうなんだ。じゃあ、一緒に乗ろうか。」
そんなカップルの声が聞こえてきた。
ありがちだな、と思ったけど、牟田のことは特に何も思ってなかったし、聞き流しておいた。
牟田が驚いたかのように肩が動いたのが気になった。
「水無瀬さん、この観覧車、男女で乗ると幸せになれるらしいけど、オレと一緒に乗ってよかったの?」
へ? そんな話気にしてたの?
「そういやその話が聞こえてきたとき、牟田、驚いてなかった? どうしたの? そういう下心でもあったの?」
私は冗談めかして聞いた。
「いや、そういうわけではないから!」
そこムキになるところかなぁ?
しかしそういったあと、牟田は急にしおらしくなって、
「水無瀬さん、今から言うことは聞き流してくれていいけど、」
と、真面目な顔で言ってきた。
悪い予感がする。
「オレ、水無瀬さんに恋してるんだわ。」
私の嫌な予感を表すように牟田が唐突なことを言ってきた。
これには私も驚いた。
が、しかし、他の人だったらどういうふうな反応するんだろう? などと呑気に思っている。そこら辺に関する私の感情はよく分からない。たぶん、おかしいのだと思う。
まあ実際牟田からも、聞き流してくれと言われたのだからいいだろう。
「ふ~ん。」
「反応薄!?」
「いや、聞き流してくれって言われたからそれを律儀に守っているだけですが?」
「いや、それでももう少し驚いてくれても…オレ、完全に恋愛対象外かよ…」
最後の方は聞こえなかった。
「で? 聞き流してくれってことはまだ言いたいことがあるんでしょ?」
「あぁ。告白しといて勝手なんだけど、これからもいつも通りでいてほしいな、って。」
「ああそう。別にいいんじゃない?」
今まで私に告白してきた人にも、同じような対応をとってるけど、みんな話しかけてこなくなったんだよね。気まずいのかなぁ?
「ありがとう…」
お!? 牟田が珍しく自分からお礼を言った。
「ねえ、いくつか聞いていい?」
「いいよ。オレの願いは聞いてくれたからそれくらいは」
「なんで私だったの?」
「へ?」
「だから、他の子に可愛い子多いじゃん。なんで私だったのかなーって。」
私は今まで可愛いも美人も言われたことがない。けれど、この学校に可愛いと思う人は多くいる。
「そりゃ可愛い子は多いよ。けど、水無瀬さんはなんていうか、初めて見たとき、美綺麗だって思った。可愛いとは違うけど綺麗じゃダメなの?」
「綺麗ってどういうこと?」
綺麗、なんていう分類あったっけ?
「それがわかんないんだよね…」
はあ…? 分からない?
「変なの」
「うん。変でごめん。」
今日はやけに素直だな。どこか体調でも悪いのか?
「じゃ次の質問。なんで聞き流してほしかったの?」
「え? いや?それは… 水無瀬さんが、恋がよくわからないからって理由で告白断ったって聞いて、それじゃあオレがしても無理だって思った。」
ふうん。そんな噂が回ってるんだ。私が振った人が噂したのかな?だったら、私が振ったあとも今まで通りでいい、って考ええいることも噂してくれればいいのに。
「まわりからイケメンって言われてるのに、一人の女子に対して弱気だねぇ。」
「仕方がないだろ、実際に無理だったわけだし。」
「あぁそっか、ごめんごめん。」
確かに今のは私の質問が悪かった。
外を見ると、日没に近づき空が赤く染まり始めている。
もうすぐ楽しかった一日が終わるのかぁ。少し感慨深い。
最後のコレさえなければもっとよかったんだけど…まあ相手が振られる覚悟で言ったものにはとやかく言いたくない。
「綺麗だね」
「だな」
人間は所詮、本当に綺麗な景色を見ると、口数が少なくなる。
今の私たちもそうだった。
あ、そうだ。
「ねえ、牟田が私のことを好きってことをからかいのネタにしてもいい?」
もしやれたなら面白そう。
「いいけど、水無瀬さんがオレに未練があるように思われるよ?」
えー。振った側なのに。理不尽な。
「ちぇっ」
このときちょうど一周した。
「じゃあね、明後日また学校で!」
「おう、またな」
そんなふうにいつも通り私たちはまた別れたのだった。