11.待ち合わせー眩しいー
11話です。
家に帰ってしばらくしたら、水無瀬さんからメッセージが来た。
『今度の土日は両方空いてるよー。行く場所については正直どこでもいいけど、まあそうなることは無いと思うけど、ショッピングはやめてね。』
だそうだ。
ショッピングは俺も好きではないから誘うことは多分ない。けれど、水無瀬さんがショッピングを好きでないのは意外だった。やっぱ男女で分けて考えてしまっているなぁ。
そんな自分に気づいて、少し呆れる。
どうしようか?遊びに行くのは…土曜日のほうがいいだろう、次の日は休みだし。
あとは…場所か。こればかりは想像がつかない。
手始めに、遊園地、水族館、動物園、植物園、美術館、科学技術館、博物館、カラオケならどれがいいか、聞いてみた。
『wwどれも定番っぽいね。』
そんな返事が返ってきた。水無瀬さんがどういうのが好きで…とか言う情報をあまり持っていないのだ。だから定番を言うしかないだろう。
『遊園地かな。一人では行きにくいところだからあんまり行かないんだよね。』
良かった。お気に召すものがどうにかあったらしい。
それにしても、遊園地だけが一人で行きにくいとあげられたが他のところはもう何回か行っているのか?疑問に思ったので聞いてみた。
『そうだよー。楽しいじゃん、何回も行くと、働いている人とも仲良く慣れるし。』
そうらしい。意外だな。そう思って、なぜそう思ったのか疑問に思う。
確か、水無瀬さんは今でこそ結構喋ってくれるが、はじめのころはあんまり喋ってくれなかった。あ、こういうのを人見知りと言うんだっけ。ふに落ちた。
だから、水無瀬さんが知り合いになっていると聞いて、疑問に思ったんだ。
一つ、謎が解けてスッキリした。
それからの1週間は早く過ぎていった。
特筆すべきことは、文化祭での合唱コンクールの指揮に立候補して、なることができたくらいだ。
当日。
20分前に集合場所に行くと、歩いている水無瀬さんを見かけた。
「あのさ…普通男子が先にくるものだよね?」
「え?牟田じゃん。来るの早くない?」
どうやら気が付かれていなかったようだ。
「水無瀬さんこそ早いじゃん。」
「いや…私はただ、本屋で立ち読みをしようと早く来ただけだよ?」
「ここから本屋?いったい何分かかると思ってんの?」
「5分くらいじゃない?10分間もどんな本が置いてあるのか見れるんだから、十分じゃん。
たかが10分のために本屋に行くらしい。恐ろしい執念である。
しかし、そうなると、彼女は待ち合わせにかなりギリギリで来る予定だっただったのだろう。
普通男が先にいるもの、とは言ったものの、時間ギリギリに来られるのは軽んじられているようで嫌だ。
「…。」
「どうしたの?急に黙って」
自覚は無さそうだ。
いや、まぁただのクラスメイトとの約束に、早く来る必要はないんだよ、無いんだけど…なんかなぁ。やっぱり自分がなんとも思われていないと分かると、やはりショックだ。
「まあいいや。早く来たなら来たでさっさと行こうか。そのほうが空いてそうだし。」
「かもね。じゃ、行こうか。」
その時、時が止まったような気がした。
前を歩いていた水無瀬さんが、そう言って振り返ったときのことだ。
振り返った水無瀬さんに木漏れ日が降り注ぎ、彼女の長い髪を照らした。
彼女が眩しくて、思わずドキッとしてしまった。
「うわ~。まあまあ並んでるね。ところでチケットは?まさか忘れた?」
心を落ち着かせてから言う。
「あるよ、ちゃんと。さすがにそんなに抜けてない。」
「ほおー。言ったな。」
何ニヤニヤしてんだか。
「はいはい言いました。」
「チッ。つまんねえの」
舌打ちされた。何もつまらなくなんか無いのに。
「アトラクションって何があるんだっけ?」
「えーと…観覧車と、」
地図を探してそれを見ながら言っていると、
「それ貸して。」
と奪われた。
いいよとも言ってないのに。
「ふうん。ねぇ、牟田ってお化け屋敷怖がる人?」
「いや、違うな。楽しみはするけどあんま怖がったりはないと思う。」
「そっかー。じゃあ行けないね。絶叫系は?」
行けないって何で行けないんだろう?
しかし、次の質問によりその疑問は言えずじまいだった。
「いけるよ。」
「ホント! やったー!」
じゃあこれとこれとこれは絶対行こう、などと言っているうちに順番が回ってきていた。
受付の人が、
「彼氏さん、ちゃんとはぐれないようにしなさいね。」
などと言ってきたが、気にしないことにした。
水無瀬さんも気にしていないようだ。
つぎは、水無瀬洸視点です。楽しみにしていてください。