以前にもあったっけ?
――すると、そんなある日のことだった。
「……こんなの、あったっけ……?」
柔らかな風が心地の好い、街中の昼下がり。
ふと、ポツリ呟く。そんな私の前には、人ひとり分くらいの幅であろう狭い路地。まあ、それはいい。いいのだけど……うん、以前にもあったっけ? こんな路地。少なくとも、昨日は無かったかと――
「…………」
暫し、立ち尽くし見つめる。相当に謎だし、若干の恐怖もあるのだけど……気が付けば、足はそちらへと踏み出していて。……うん、大丈夫……だよね? 万が一ヤバくなったら、すぐさま引き返せばいいわけだし。
「……うん、ほんと狭い……」
それから、およそ20分。
一人ぼやきを洩らしつつ、両壁に対し身体を平行にしつつ暗い路地を歩いていく。……うん、一人分もなかったね。細身の私ですら結構ギリで……うん、やっぱ帰ろっかな?
とは言え、ここまで来て引き返すのも癪なのでそのまま歩みを進めていく。すると、それから数分――ようやく、奥の方から微かに光が。パッと心にも光が差しそのまま進んでいくと、徐々に視界が晴れてきて……やった、ようやく到ちゃ――
「…………へっ?」