13/14
奇跡
『……正気かい、嬢ちゃん』
例の怪しい薬屋にて、目を見開きそう口にするお姉さん。……まあ、そうなるよね。もちろん、彼女は詳しい事情なんて知らないけど……それでも、想い人との出逢いをなかったことにしたい、なんて言ったら。
ともあれ、そういうわけで薬を購入。10年前のあの日に戻るよう、緻密に調合された薬を。お姉さんの言ったように、その時の記憶――私があの地点に戻った時の記憶は、どうやら残ってないようで。
……まあ、上手くいったのはこの結果から明らかだけど。そもそも、彼に会えたのは本当に奇跡的な偶然――なので、あの瞬間さえ会わないようにすれば同じ奇跡はまず起き得ないだろうし。