やっぱり駄目?
「……ねえ、エルマ。僕の気のせいかもしれないんだけど……最近、なにかあった?」
「……へっ? あ、いやなんでもないよ! もう、なんにもなさ過ぎてびっくりするくらい!」
「……そ、そっか」
それから、二日後の宵の頃。
食卓にて、心配そうに尋ねるソレアにブンブンと首を横に振り答える私。……うん、我ながら誤魔化し方がひどすぎる。なによ、なんにもなさ過ぎてびっくりするって。
ともあれ、どうして彼が心配してくれているのかと言うと、二日前――具体的には、あの日の帰宅以降、私の様子がどこかおかしいからで。
『……あの、すみませんお姉さん。その……もう少しよく考えたいので、また後日お伺いしてもいいですか?』
二日前、例の薬屋にて。
少し逡巡しつつそう伝えると、たいそう呆れた様子で承諾の意を示すお姉さん。……いや、そんな表情しなくても。あまりにも急な展開でこっちも戸惑ってるんですよ。
――ともあれ、期限は三日後とのこと。なので、明日までには決めなきゃならない。……いや、ほぼ決まってはいるんだけどね。二人が出会うあのタイミング以外まずないし。なので、考える期間というかは、心の準備をするための期間で。
ただ……今更ながら、やっぱり駄目かな? 人の過去を――それも、その人にとって大切な出会いをなかったことにするなんて、流石に――
「――っ!! エルマ!! 手、手!!」
「…………へっ?」
――直後、穏やかな空間に似つかぬ断末魔が谺した。