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吸血鬼狩人、宿敵と同居する  作者: せいいち
日付不明 二年目
94/104

日付不明 じゃあ昼間からやるか?

「一つ、不満がある」

 少し遅い昼食の後、空になった皿を片付けようと立ち上がった狩人に、吸血鬼は神妙な顔をして語り始めた。

「……何に?」

「お前がやってる途中で『もう眠いからおしまいね』ってなって強制終了するとき、けっこうな頻度であるだろ。あれがすっごく嫌だ」

「ごめん、何の話?」

「セックスだよ!」

 気まずさによる少しの沈黙の後、狩人は皿を持たずに座り直す。

「それは君が、夜にばっかりしたいって言いだすからだろう」

「じゃあ昼間からやるか?」

 じっと見つめる吸血鬼の蜂蜜色の目に、狩人は一瞬言葉に詰まった。

「……何も予定がない日なら、そのほうがいい。断ることもあるかもしれないけど」

 昼から初めて夜中まで、時間と睡魔の許す限り続けることになりそうではあるが。

「じゃあ今日は?」

 今日は何の予定もない。全ての用事は午前中に済ませたし、あとは家の中の用事くらいで、なんとでもなる。

「……うん。いいよ?」

「よし」

 吸血鬼は狩人に、飢えたハイエナのように飛びついて押し倒す。羽のように軽い体だったが、肩を抑える手は奇妙に重い。舌を入れて深く口付けし、跨った尻をへこへこと腰に押し付ける。

「今やろう。すぐやろう。この家のありとあらゆるところで。俺さ、布団の上以外でやってみたいと思ってたんだよ」

「どいてったら。皿片付けてからね」

「そんなん後でもいいだろォ~?」

「よくない。君は君で準備が要るだろ。酷い目に遭うぞ」

 つんと唇を尖らせて、吸血鬼は狩人の身体の上から退く。

 名残惜し気に、猫のように手を握り、慎重に身体に手の痕跡を付けながら後ろに引き下がり、立ち上がっては恨めしげにじっとり見降ろす。

 見下ろされても可愛らしい目だ、と狩人は思う。普段なら腹が立つはずなのに、求められているとわかっているから嬉しいのか。きっとそうだ。何とも言い難い。

「……わかったよ。風呂にいるから、皿片付けたら来て」

 素足で口惜し気に股間を柔らかく踏んでから、吸血鬼はぺったんぺったん足音を立てて板張りの廊下を行く。

 宿敵とはどうしてああも可愛らしいのか。重ねた皿を運びながら狩人は思う。一生を共にしたい。この仕事が終わったら、二人でどうやって生活しようか。

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