日付不明 狩人のポエム
『運命よ僕の大事な人に出会わせてくれてありがとう、運命よ頼むから僕たちを放っておいてくれ』
「うわあああああっ!! 何!?」
「何、はこっちの台詞だ。びっくりしたなもう」
何らかの文面を読み上げる棒読みの声と方向に反応して、どたどたと板間を走って吸血鬼を吹っ飛ばさんばかりにノートの端切れを取り返す。
「勝手に人の部屋の箪笥漁らないでくれる!?」
本命であるミニチュアの己の服は見当たらなかったことに、吸血鬼は落胆していた。現在ミニチュアの吸血鬼は分解され何やら石膏像のような白い塗料を吹きかけられて干されていて、とても服を着せられる状況ではない。
「今のポエムは……」
「見なかったことにして! 起きてたんなら言ってよぉ」
「お前部屋からこっちには居なかったじゃねえか」
「端っこのほう掃除してたの」
ノートの切れ端を胸に隠しつつ文机の引き出しに仕舞い、鍵を閉める。
「何?さっきのポエム……」
「やめて……」
「理人くんでも恥ずかしいことってあるんだぁ~?」
「ある。恥の多い人生を送ってきたんだ」
「ふぅ~ん?」
吸血鬼は狩人の顔を覗き込む。恥辱に塗れた赤い頬だ。すみれ色の潤んだ目を反らし、吐き捨てるように言う。
「君のこと好きになったせいで僕は大変なんだ。君も早くそうなればいい。僕のせいで恥ずかしいこといっぱい作ればいいんだ」
「とんでもねえこと言うのな」
「君には無いのか!? 僕に言えない恥ずかしいこと!」
「あったところで言うと思うか?」