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吸血鬼狩人、宿敵と同居する  作者: せいいち
日付不明 二年目
89/104

日付不明 この家にはテレビがあるのでこういう話も出来る(吸血鬼ばかり触られていて不公平なので)

 昼過ぎ。テレビをつけっぱなしにしていたらやっていた競馬番組を眺めながら、今日の家事をひととおり終えた吸血鬼と狩人はだらだら過ごしていた。

「そういやお前たまに馬に変身して過ごしてるじゃん。ちょっとお出掛けするときとか。あの白い毛の馬みたいになるの?」

「どっちの白い馬?」

「あ?」

「シャンジュ。馬の白い毛にも二種類くらいあってね、今写ってるのは白毛で、さっき映ってたのは葦毛っていうんだ」

「ふぅン」

 なんか珍しく饒舌に喋り始めたなァ、ご機嫌そうだしこのまま喋らせておくか。吸血鬼は生返事で応える。

「白毛は生まれつき毛が白くて、肌の色も色素が無くてピンク。葦毛は最初は他の馬みたいな毛色だったけど、早いうちに毛の色素を作る細胞がなくなって白くなるの。人間で言えば若白髪みたいな感じかな。地肌は他の馬と同じで黒い」

「理人はどっちなの?」

「白毛だよ」

「へえ。変身してみて」

「メインレース終わってからね」

 日本の競馬は公営ギャンブルであるが、純粋に馬を見るためだけに競馬場に赴く人もいるようだ。もし行くことが出来たなら彼ら二人もそういう客のようになるだろう。

 昨今はネットで賭けをすることも出来るが、吸血鬼も狩人もそうはしない。安定した収入の無い二人はクレジットカードを持っていないからだ。

 白毛の馬は今日は振るわず、葦毛の馬は四着。全人馬無事にレースが終わった。一着の鹿毛がウイニングランを行う。

「あいつイケメンだなぁ」

「顔が整っていると空気抵抗を受けにくいから、走りにもいい影響があるんだって」

「へえ。お前もそうなの?」

「僕!?」

「……いい顔してると思ったんだけど。どう? あのイケメンより早く走れる?」

「ええとぉ……距離と乗ってる人によるかな。それに走る場所も。僕はサラブレッドにはならないし、あんなに細くないから、条件がそもそも全然違うよ。競争にならない」

 意外と真面目な答えが返ってきた。そういえばそういう真面目っぽい奴だったなこいつと思い直し、さっさと馬の姿に変身させる方に話を持って行こうとする。

「足? 太いの? 理人はどんなもんよ?」

「あー、うん。見てて」

 狩人は庭に降り、白馬に身を変える。

 毛の色は白馬の名に違わず尾の先まで全身真っ白、少し毛が薄くなっている箇所は地肌のピンク色が透けて見える。目線は、白馬が首を少し下ろせば、吸血鬼と合う程度の高さ。首は太く短く、テレビで見たサラブレッドと違い、全体的にがっしりとしている。背は頑張ってよじ登れば跨れるくらいである。

 ぐるっと一回りして身体を眺めた後、吸血鬼は顔に近付いて鼻先をぶにぶにと触った。ここは少しピンク色がかっていた。

「ホントだ、太いな。丈夫そうでいいや。かぁわいい」

「へえ。……かわいい、かぁ……」

「カッコいいって言われたかった? 理人くん。めっちゃかわいいよ。白くてふわふわ」

「なんで、馬に変身してるのに、意思疎通できてるの」

「俺とお前の仲だぞ。わからないほうがおかしい。乗っていい?」

「いいけど。変なとこ掴んだら、振り落すかもしれないよ」

 しゃがんではくれないらしい。吸血鬼は白馬によじ登った。

 白馬は背中の軽い生き物を振り落さないように、慎重に庭を一回りする。吸血鬼は首に掴まり、子どものようにキャッキャとはしゃいでいた。

「もっと速く走れないの?」

「振り落しちゃうよ。それでシャンジュが怪我するの、やだ」

「何か今日の理人は優しいなぁ。ちょっとかわいいかも」

 吸血鬼はぎゅっと首に抱き着く。狩人は他人の姿に戻った。

「えー。もうおしまいかよ」

「おしまい!」

 へそを曲げたようにぷいっと鼻先を家のほうに向け、吸血鬼の脚を持って背負い歩き出す。

「馬の股間とかもうちょっと眺めたかったんだけど。マジで馬並なわけ?」

「エッチ! ……それ僕以外の馬にやったらだめだからな」

「えー、嫉妬?」

「後ろから近付いたら蹴られて頭が凹になるよ。君にはそういう死に方をしてほしくない。知らない人に意図的に死角に入られるのって、基本的に不愉快じゃない?」

「あー、なるほどね」

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