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吸血鬼狩人、宿敵と同居する  作者: せいいち
六月・ジューンブライド
33/104

6/28(土) 七夕・プレリュード

「なんだ、あれ?」

 いつも通り一緒に食料を買いに行った帰り。吸血鬼が指した先、商店街のアーケードには五色の装飾がたなびいていた。

「七夕だ。七月七日、織姫と彦星が年に一度会う日だよ」

 こんな梅雨時に、奇特な二人もいたもんだ。水属性の妖怪大戦争か何かか。

「へえ。俺たちみたいだな」

「織姫と彦星は恋人だよ」

「じゃあ違うわ。俺たち宿敵だもんな」

 帰ったら何ぞ調べて季節ものの料理でもあったら作ってやるか、と気の利いたことを考える。

「そのカップルはなんで年一でしか会えないの? 遠距離恋愛?」

「確か、織姫と彦星が付き合いはじめたら、しょっちゅう仕事をサボってイチャついてたから、織姫のパパが怒って二人を別れさせて、そしたら逆に仕事に手が付かなくなったから、年一で会わせるようにした……って話だったと思う」

「へえ。入り婿なんだ」

「そこ気にするとこ?」

 まあ姫だしね、と吸血鬼の言い分に納得する。

「仕事サボってまでいちゃついてたって、そんなに一緒に居て楽しかったんだろうな。パパも娘離れすりゃよかったのに」

「織物が家業だったのかも。織姫は名前に織るって付けられるくらい上手い職人で、それがサボったから仕事が立ち行かなくなって、だから怒った」

「くっだらねーのな!」

「君、そんなに恋愛至上主義だった? ちゃんと仕事をしないことが駄目だったって意味で言ったんだけど」

「別に。好きならどこまでも貫き通せってだけ。好きな相手のためなら好きな相手以外どうでもいいだろ。ま、人の堕落を良しとするのも仕事の内だし?」

 忘れがちであるが、彼も悪魔の端くれだ。吸血鬼はにっこり笑って狩人の顔を覗き込む。

 息が当たるほど近い。

「死ぬまでいちゃつくのも悪くないと思うぜ。なっ?」

「僕たちカップルじゃないだろ」

「死ぬまで一緒に生きてようぜ~~! って話!」

 しかしそういう類いの誘惑はどうにも下手だ。

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