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吸血鬼狩人、宿敵と同居する  作者: せいいち
五月・足長おじさんと
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5/2(金) 錬金術師・プレリュード

「僕のスポンサーなんだ。会いたいってもう一か月も言ってる」

「言わせとけよそんなの」

「君に会わせないと学校にも行けなくなるし、この家にも住めなくなる。期限はゴールデンウィーク中。助けると思って、一回だけでいいからお願い」

 吸血鬼はぎりぎりと歯ぎしりした。こんなに不愉快なことは無い。デメリットなく不老不死を望む錬金術師から、夕食に誘われるとは。

 話を始めたのは狩人が風呂から上がった後のことである。大事なことであるがつい先刻まで忘れていた彼は、あ、と前置きしてから吸血鬼に、錬金術師とともに夕食をとらなければならないという話をした。

「僕がその辺で野垂れ死んでもいいっていうのか」

「お前はどうなろうと生きてるだろ。その時までにどれだけ弱ってるか知らないが、俺が殺すことには変わりない。多少仕事が楽になる。ありがたいことだ」

「なんてこと言うんだ」

 ここまでの言い争いは同居を始めたとき以来だったと、狩人は記憶している。ここまで抵抗されるとは。されても仕方がない人間ではあるけど。

「もう一人知り合いを巻き込むか。あの先生あたり」

「先生は……錬金術師と本当に仲が良くないから……」

「じゃあなんでお前さんは学校に通えてるわけ?」

「なんでだろ……何かメリットがあるからだろうけど」

 そういう話をしたいんじゃないよ、と元の軌道に話を戻す。

「先生が駄目そうなら克海呼ぶか」

「誰だよカツミって」

「喫茶店のアルバイト。最近連絡先交換したの」

「事情を知らないのに呼んじゃ駄目だって!」

「なら薪麿だ。薪麿を呼ぼう。あいつなら錬金術師のことも知ってるし巻き込んでもいい」

「……意見を聞こう」

 薪麿に[ゴールデンウィーク中に錬金術師の家で夜ご飯食べに行くんだけど、一緒に行く?]と書いて送る。

「ゴールデンウィーク中って言うけどさ、具体的にいつに行くの?」

「僕が行くって言ったらいつでも準備するって言ってたから、本当にいつでもいいんだと思うよ。後で嫌味は言われるだろうけど」

「マジで嫌われてんだな~、かわいそ」

「思ってもないのに」

 狩人は首にかけておいた湿ったタオルを干しておく。スウェットの首元が濡れて、色が変わっている。

 五分ほどして、薪麿から返事が返って来た。

[嫌です]

[私が断ったことは錬金術師には言わないでください]

[私の話もしないでください]

[奴が死にそうだったら殺してください]

 最後のメッセージは数秒経って消えた。送ってみたはいいが、知った相手とは言えこれはどうかと思ったのだろう。

「嫌だって」

「だろうね」

 申し出を断った薪麿には[わかった。いきなり誘って悪いね。君の望む展開になりそうだったら連絡するよ]と送る。

[くれぐれもお願いします]

 彼の懸念するようなことはしない。思春期のホムンクルスにただの軽口でお縄にされてもらっては困る。不利になるようなことはしないつもりだ。

「明日行こう。錬金術師には今連絡してやれ」

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