(5)
「キリエさん、オーランドが貴方のこと、気に入ってしまった理由がなんとなく分かりました……」
シャーロットは溜め息を吐きながら言う。
「悔しいですけど、貴方はこの上なく『可愛いらしい』方ですね……。見た目はクールな雰囲気なのに、中身がそんな感じなんて……いわゆる『ギャップ萌え』以外の何物でもありませんわ。思わず目で追ってしまうような、『ほっとけなさ』がありますわね、貴方には……」
「『そんな感じ』……って、いったいどんな感じよ……失礼な!」
キリエは、顔を上げて反論する。
「殿方って、隙がなくて完璧な女性にはそれほど興味を持たないものなんです。どこか、頼りないところがあると言うか、自分が守ってあげなくちゃ、と思わせる女性は、勝ち組ですわね」
シャーロットの、冷静な分析は続く。
「それと、極めつけは、貴方が自分のそんな魅力に、全く気が付いていなさそうなところです。世間に溢れる『あざと系女子』とは、対極にいる存在ですわね。今時、貴重な種ですわ」
貴重な種……?まさか、他ならぬ『自分』が古代種の一員だったなんて……。
「だから、安心なさい。あのオーランドが、他人に目移りなんて絶対にしないと思うから。むしろ、気を付けた方がいいわ……!もしも、貴方が拒もうものなら、粘着質に執着されて、どんな恐ろしい罠を仕掛けられるか、分かったものじゃない」
う……っ。それは、たしかにその通りかもしれない……。コールとクアナの一件の時は、本当に恐ろしかった。サイコパスかと思った……。それが、自分に向けられるのだけは、絶対に避けないといけない。
「ねぇ、一つだけ確認しておきたいんだけど…… 貴方まさか、オーランドとグルじゃないでしょうね……?私を罠に嵌めるために、彼から指示を受けてきたとか、そんな話だったら、怖すぎるわ……」
キリエは、紺碧の呪力の主特有の『洞察力』を見せて、彼女に迫った。
「ち、違いますよ……!さすがに、オーランドもそこまでのことはしません。私を差し向けたとしたら、それは、アークライト・リッカの方ですね。……詳しいことは何も言いませんでしたけど、オーランドが一途に思っている相手が一人だけ居るって、私に耳打ちしたのは、彼女、リッカなんですよ」
なんと……。リッカの方だったか。恐るべし、戦慄の戦乙女……。たしかにそう言えば彼女は、オーランドのために『キューピッド』になるとかなんとか、のたまっていたな。
「ありがとう……貴方のお陰で、目が覚めたわ。これは、逃げ回ってるだけでどうにかなる話じゃ、なさそうね……」
そして、キリエは、相変わらずの自分の運の悪さ(良さ?)を、呪ったのだった。




