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彼女が帝国最強の闇術士と結ばれた理由  作者: 滝川朗
第2部───第一章:魔女狩りクエスト
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(6)

「話は済んだか……?ずいぶんと長い話だったが、なかなか興味深いな。筋肉バカのサルの集まりかと思ったが、ランサーにもなかなか、悪知恵の働く人間もいるらしい」

 すでに、敵方の術士のもとには、総勢五人の術士たちが終結していた。

 そして、同時に、コールの元には、エンティナス公と、ノエルの姿もあった。

「二人とも、無事だったか……!」

「負傷した兵は多くいますが、死人は出ていません。彼女の、お陰ですよ……。たった一人で、自らの呪力を呈して、僕らを守ってくれましたから」

 ノエルは新参の風術士に、感謝の言葉を送った。

「父上、出来るだけ早く、騎士団を連れてここから逃げてください。術士の戦いはご存知でしょう?エンティナスの主力兵団をここで失えば、ランサーを守ることが出来ません」

 コールは手短に言った。

「そして、今の、副隊長の話はお聞きだったでしょうか?……我々がここで、敵方の術士を殲滅させることが出来た場合、どうか……、今回の一連の事件は、国内のテロだったとし、他言は無いように、お願いすることはできないでしょうか?」

 オーランドの目論見を達成するためには、エンティナス公と、騎士団の者達にも、厳重な箝口令をしく必要がある。父がそれに、納得してくれるか……コールは、祈るような気持ちで、父エンティナス公の顔を、真っ直ぐに見つめた。父がけして馬鹿ではないことを、コールは知っている。

「お前達は……大丈夫なのか?」

 父は、鋭い視線を敵の術士へ向け、息子に問うた。

 コールは父の言葉に、深い、安堵のため息を着いた後、

「……ご心配には及びません。私を何者だと?……『竜殺し』のエンティナス・コールですよ」

 コールはここぞとばかりに、自分に付けられた下らない通り名を告げた。

「……では、お前に全てを任せる。無事にしおおせなければ、後でどうなるか、分かっているであろうな?」

 わざと強い口調で告げるエンティナス公の言葉には、年若い息子に全てを任せて逃げなければならない騎士の無念さと、息子の無事を祈る気持ちが籠っていた。

 相変わらず、素直じゃないんだから、父上も、兄上も……。

 ノエルは、父と兄のやり取りを横目で見ながら思った。

「おっと……敵方の大将を、みすみす逃がすわけには行かないな」

 ようやく敵が動いた。

 先鋒の風術士、と言ったところか。

 すかさずフリンが対応する。

「〝空五倍子(うつぶし)色の壁〟」

 すべての物理攻撃を拒絶する鉄壁が立ちはだかり、風術士の遠距離攻撃を受け止める。

 五体六の術士同士の戦いの始まりだった。

「相手の力がまったく分からない以上、慎重に行く必要があるよ、みんな!」

 オーランドがパーティー全員に言う。

「それから、君、名前ぐらい名乗っておいたら?ついでに、最低限のスペックも教えてくれると助かるんだけど」

 オーランドが、傍らの新参者に尋ねた。

「キリエ・カイルです。養成学院出身の風術士です。〝那由多の風〟クラスの術は使えます」

 むす……とした口調で言う。まだ、エンティナス城に一人捨て置かれていたことを根に持っているらしい。

 オーランドは頷く。

「それで、騎士団を守ってくれていたんだね、ありがとう。でも、なぜ、『風術士』なの?呪力の色は紺碧なのに。君は、エリンワルド・カイルの、妹でしょう?」

 パーティーの全員が思っていたことを、オーランドが代表して聞いた。

 キリエは、年齢はずいぶん若そうだが、エルンワルドに瓜二つだった。

 そして、明らかに放つオーラの色は鮮やかな青――紺碧の呪力なのに、風術士と名乗っていることも謎だ。

 年齢は分からないが、風術士ならオーランドの後輩のはずだ。こんなヤツいたかな……。記憶に残っていない、ということは、目立たない学生だったのだろう。


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