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(4)

「なに……?」

 その場は、ちょうど手頃に開けた、城前広場だった。コール達を一行は、リオンの術士たちに完全に包囲されている。

「お姉さま……?」

 クアナは目を見開いて姉の顔を見上げる。

「やめて……っ!」

 クアナが悲鳴を挙げるのと同時だった。

「〝錆御納戸(さびおなんど)の方陣〟」

 無慈悲に告げられたスペル。

「これは……」

 コール達の足元に、呪いの言葉のようなくすんだ深い藍色の文字の羅列が広がっていく……。

「隊長、消費呪力増加の方陣です。俺も初めて見たが……」

 水術士のエリンワルドが言う。

「通常の倍の呪力を消費しなければ、術は発動しない」

卑怯(チート)だろう、こんな術。リオンには、こんな術が使える術士がいるって言うのか……」

 コールは舌打ちする。

「貴方がたの実力は聞き及んでいます。こちらも全力を尽くさなければ、無礼と言うもの」

 女王の言葉には、大切な妹を奪ったランサーへの、深い怨みが感じられた。

「ランサーに、戦争を仕掛ける気か……女王!国際法を知らない訳ではないだろう?国同士の争いに、術士を使ってはならない。もし禁を破れば、国際条約に連なる全ての国が、リオンを、総攻撃することになるぞ……!」

 コールは予想外の展開に、女王の頭を冷やそうと必死だった。

「これは戦争ではない、貴方がたから、妹を取り返すための正当防衛だ。それに、こちらには、南方諸国の力添えがある。卑劣外道なランサー帝国を見限り、我々は、コルネイフ側と手を組むことにした」

 女王が言うか言わないかのうちに、オーランドが動いた。

 優秀なアタッカーである彼は、方陣の術を使っている術士を見極め、普段から鍛えている身体能力を活かして、一気に間合いを詰めた。

「こういう妨害術は、どデカい呪力を使う術士向けでしょう。風術士である僕には、どうってことないね」

 オーランドは術士に刃を突きつけたが、一瞬早く、傍に居た焔術士が、オーランドに容赦ない一撃を放った。

「〝(いかづち)〟」

「……くっ……!」

 直撃を食らったオーランドは、堪らずその場に倒れる。

「オーランド……っ!」

 クアナが再び悲鳴をあげる。

「甘いな……。その瞬足を活かして、一瞬でこちらの首を撥ねれば良かったものを……」

 リオンの術士は、足元に転がったオーランドを嘲笑う。

「あんたらも、なかなか卑怯だね……。僕が……、クアナ姫の大切な仲間を、躊躇わずに殺せるわけがないじゃんか……」

 オーランドは痛みに耐えながら、リオンの術士たちに、息絶え絶えの皮肉を言った。

「コール……、これは……」

 ギランのうめくような言葉に、コールは頷いた。

「ああ。……『勝ち目のない戦い』だ」

 味方はたった六人。対して、相手はリオン国内に存在する術士を、無限に投入できる。

 コール達の呪力に上限がある限り、とても勝ち目はない。

「ランサー皇帝も救いようのない愚か者だな。こちらには一年もの準備期間があったのだぞ。クアナを取り返す機会を、手ぐすね引いて待っていたと言うのに。まさか、自ら飛び込んで来ようとは……」

 ……そうだ。皇帝陛下はいったい、なぜこのような愚かな行いを……?

 あの方がなさることに、意味のないことなどないはずだ。何か、答えがあるはずなんだ。

 考えろ……考えろ……。コールは、必死で思考を巡らせていた。


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