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彼女が帝国最強の闇術士と結ばれた理由  作者: 滝川朗
第六章:十七歳の箱入り娘は、残念ながら完全に罠に嵌まっていた
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「……と、言うわけなんだ。世にも恐ろしい話だろう?完全に遊ばれている……」

 信頼するお前にしか絶対に相談できないことなんだ、と前置きをしてから、コールはギランにことの詳細を説明した。

「それのどこが恐ろしい話なんだ。素直に受け入れればいいだけじゃないか。お前にとって何一つ悪い話ではないぞ」

 ギランからすれば、可愛い姫をあてがってもらえるのに、何をそんなに嫌がることがあるのだ、とでも言いたげだった。

「お前は、あの方の本当の恐ろしさを知らないんだよ……。あの人は、自分の目的を達成するためならどんな手段でも使う……。俺は恐ろしい。俺がもし本気であの可憐な少女にハマってしまったら、それこそそれを『盾』にして、どんな目に遭わされることか……」

 コールは青い顔をしていた。

 コールをこれだけ震え上がらせることのできる人間が、他にいるだろうか。

「だいたい、あのお方は、クアナを俺の嫁にするためだけに、国一つ動かして、わざわざリオンからランサーに連れて来させたんだぞ。職権の濫用(らんよう)(はなは)だしいだろう」

「さすがに、嫁にするためだけではないと思うが……」

「だが、リオンの術士を手中に入れたいだけなら、他にいくらでもやりようは有るはずだろう。人質の王女を、高い塔に閉じ込めておくとかなら分かるが、軍隊に配属させて戦わせるなんて、古今東西聞いたこともないぞ」

 それはたしかに、ギランも思っていた。

 真の賢人は、一つの手段で複数の利益を得ると言う。

 どこから嗅ぎ付けたのか知らないが、リオンの王女が優秀な聖術士であることを知って、ここぞとばかりに目を付けたのには違いない。

 皇帝は、コールが万一自分を裏切った時、寝首(ねくび)()かれないための確実な手段を、確保しておこうと思っているのだ。 

「……相手が悪いわな。なんせ、この国の最高権力者だ。陛下に気に入られてしまったことがお前の運の尽きだ。抵抗すればするほど、泥沼に()まるだけぞ、この場合。無駄な抵抗は諦めて、とことん付き合って差し上げるしかないだろう」

「この……っ、他人事だと思って……」

 コールは(うつむ)いて頭を抱えていた。

 自ら修羅の道を選んだのだから、仕方のないことだと思うが、なかなか難儀(なんぎ)な人生だな……。

「皇帝陛下の真意がどこにあるかは誰にも分からないことだが、一つだけ言えることがある。陛下は、ランサー帝国にとって不利益になることだけは絶対になさらない。あの方の遠大な展望の先には、必ずランサー帝国の繁栄がある、それだけは確かだから、安心しろ」


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