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彼女が帝国最強の闇術士と結ばれた理由  作者: 滝川朗
第四章:新生コカトリス第三小隊のパーティーは、有り合わせも良いところだった
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「魔獣の数も多いな……。ギラン、ケン、延焼をふさぎながら魔獣を倒してくれ。オーランドと俺は、商人たちと警備兵を離脱させる。そして、エリンワルドは、結界の綻びを見つけ出して、『修復』……出来るか?」

 結界術を扱える聖術士がいない以上、結界の一時的な修復が可能かどうかは水術士の腕に掛かっている。水術士もピンキリで、エリンワルドがサポート系の術をどれだけ使えるかは、コールもまだ把握していない。

「お安いご用だ」

 エリンワルドは簡単なことだとでも言うように、請け合った。

 コールの指示で、戦いの火蓋は落とされた。

 焔術士の二人が、商人と警備兵たちを巻き込まないよう気を遣いながら、獣たちを一匹ずつ焼き殺していく。

「隊長、あなたはエリンワルドの護衛に行ってください。唯一の水術士がやられたら詰むでしょう。こっちは僕一人で充分です」

 オーランドはコールに言った。これだけ魔獣の数が多いと、水術士も身を守りながら探索や結界の修復を行うのは厳しいだろう。まあ、唯一の水術士(エリンワルド)が死んでくれるという筋書きでもオッケーなのかも知れないけど。

「お前一人で大丈夫か?」

「そうじゃなかったら言いませんよ」

 オーランドはそれだけ言って、隊商(キャラバン)の元へ向かった。

 近くにコールがいない方が、仕事がしやすい。

 ここでの僕の役割は、それと悟られずに戦場をさらに混乱させる……ってとこかな。

 我ながら最低な仕事だけど、背に腹は代えられない。

 オーランドは風術で手頃な刃を作り出し、手に持った。

 風術とは、風を操るかのように獲物を切り裂くためそう呼ばれているだけで、実際は風を扱う術ではない。呪力を凝縮し、鋼鉄を超える硬度を持たせることのできる唯一の術だ。刃は近距離から遠距離まで自在に打ち出すことも出来る。術士と言うよりは、帯剣した歩兵や、弓兵に近い性質を持つ。

 炎を扱う焔術と双璧を成す完全なるアタッカーだが、小回りの利く戦い方もできるため、こう言った現場では活躍する。

「風術士か、助かった……!倒しても倒しても、沸いてくるんだコイツら……」

「ええ、僕たちが来たからには、もう大丈夫ですよ」

 とは言え、僕はコカトリス第三小隊ここでは無能な振りをしておこう。

 オーランドは絶妙に加減をしながら獣たちを屠っていった。

 焔術士たちの呪力が尽きるまで時間稼ぎだ。

 オーランドがキャラバンたちを遠くまで逃がして、戦場が空いたら、大きな焔術で一掃する、というのがコールの筋書きだろう。

 呪力に上限がある以上、術士の戦いにおいて戦況が長引くことは敗北に直結している。個々人の呪力が尽きる前に敵を倒しきらなければならない。

 僕がもたもたしていれば、それだけ勝利が遠退くわけだ。

「こら、風術士、貴族の道楽じゃないんだぞ!さっさとそいつらを片付けて局面フェーズを進めろ……っ」

 見かねたケンが声を荒らげる。そりゃ、イライラもするでしょうね。ちまちま呪力を削られてるんだから。

 アホらしい話だ。戦況は悪いが、自分達の実力を考えれば、そこまで困難なクエストでもないのに、こんな茶番を打たないといけないとは。

 ちらりとコールたちの様子を見る。コールの方にも獣たちが群がり、こちらを省みる余裕はないようだ。


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