陥落
☆交流パーティ
追放した後、マーガレットと婚約を結び。正々堂々と、パートナーとして交流パーティに出席をした。
リリアは平民だ。それでも皆、気をつかった。マーガレットは私の隣で、太陽にような笑顔で皆を魅了するのだ。
「皆、紹介するよ。新しい婚約者マーガレット・ダンだ。伯爵家の令嬢だ。よろしくお願いするよ」
「マーガレットです。あたし、演劇とか大好きで、皆様のお話楽しみにしています」
ガヤガヤガヤ~
「あれ、皆、どうした。グレース、私の婚約者だ。不慣れだが、よろしくお願いするよ」
「グレース様、最新の劇の台本、読みたいですわ」
「・・・ねえ。低位から、話しかけてはいけないって、貴族教育は受けていないの?リリア様は、わきまえていたわ。本来は、そんな身分ではございませんのに」
・・・え、何だって、確かにリリアは平民だけど、だから、自分から話しかけなかったって?
「私は王族、他は、最低でも侯爵令嬢ですわ」
「あ~~何て、奥深ゆかしいリリア様」
「せめて、小国とはいえ。公爵家の養子になってから来なさいよ」
「カール、君の婚約者が無礼だ。たしなめて・・・」
「リリア嬢の婚約者だから、君は価値があったのだよ。今、各国は情報収集中だ。
本来なら、リリア嬢は、我が皇家の養子にする予定だった。本当の事を教えてくれたら、友人として扱うと約束しよう」
「北の修道院だ」
「ほお、そうか。君とはこれまでだ。皆、それぞれ帰国するだろう」
・・・何だよ。一体、本当の事は言えない。
今頃、死体は魔族領に投げ込まれ、ゴブリンどものエサになっているよ。
☆数週間後
今日は私の即位式だ。他国から賓客は来ない。どこまでも馬鹿にして、彼らは、本当にそれぞれ帰国した。
国内の貴賓だけの寂しい即位式だ。
何とか、ドレスでマーガレットをなだめて、国内の王族、貴族だけで行う。
その後、王都をパレードだ。
しかし、準備中に、速報が来た。
くだらない内容で、思わず叱りつけた。
「リリアのことか?今、言うことか?」
「リリア・・・様の部屋にあったノートの解読をしました。リリア様は、異世界の者です。おそらく、リリア様は、勇者かと」
私は思い出した。騎士団長のマックスを呼ぶ。マックスを今朝見ていない。
そう言えば、マックスは、リリアを処刑した後、そのまま対魔族領の砦に赴任したはずだ。
即位式に来るように、招待状を出しておいたのに。
「あれから、帰ってきていない?まさか、リリアの処刑に失敗したわけじゃ」
あり得ない。念には念を入れて、手練れを数人つけたのだ。
「殿下!魔王軍が、国境を越境したと、早馬で連絡がありました!」
「何だって、距離から考えて、3日前か。いや、4日前だな。すぐに、援軍を送る準備だ。マックスが持ちこたえているだろう」
その時、空を切り裂く音が聞こえた。
ヒュ~~~~~ン、ヒュ~~~~~~ン
音が消えたと思ったら、すぐに、爆音が響く
ドカーーーーン!ドカーーーーン!
「ヒィ、爆裂魔道士がこんなに沢山!」
「連発はできないはずだ」
「騎士団や兵士の宿舎を狙っている!」
☆王都近郊、丘
丘の上では、一人の女が、双眼鏡で王都を覗いている。
女の服装は、自衛隊の戦闘服に、鉄帽、戦闘靴、サスペンダー、肩には64式7.62ミリ小銃を背負っている。
彼女の近くには、120ミリ迫撃砲、車輪が付いている迫撃砲だ。
普通科最大の火砲である。
人族の男女、3名で、操作している。
「修正!仰角2度上げ!」
「2度上げ了解!」
「半装填ヨシ」
次の瞬間、弾を砲の前から入れられ、すぐに、発射される。
バシュ!
迫撃砲が、小一時間、撃った後、4人は、74式戦車に乗る。
ブロロロロ~~~
そのまま、王都城門に、砲撃をくわえ。王都広間まで、前進しそこで、停車した。
「魔王軍の地竜だ!」
「対地竜隊形取れ!」
爆撃を避けた騎士団や、冒険者が集まる。
しかし、戦車は何も行動を起こさない。
戦車は方向転換をする。
左右のキャタピラを互いに、逆転するように動かすと、王都の石畳が跳ね上がる。
しかし、
「すごい馬力だが、動けないのか?」
「おい、早そうだが、左右には機敏に動けなそう」
「「「おら、おら、魔族め!」」」
「見かけ倒しか?」
「オラオラオラ!」
騎士、兵士、冒険者が、王都広場に集まり。メイスや、フレイヤで殴る。
「どけ、どけ、魔道師隊の到着だ!」
「ファイヤーボール!」
「ウィンドカッター!」
ボア
カン!カン!
「どうやら、攻撃手段は、その長い鼻でぶん殴ることしか出来ないみたいだな」
「鼻さえ気をつければ大丈夫だ!」
すると、わざとらしく、砲塔が動いた。
「おっと、のろいぜ!」
「おら、ファイヤーボールの一斉射撃だ!」
・・・・
「魔王様、ウザいです。そろそろ、あれをしましょう」
「千人は集まったかしら」
魔王と呼ばれた女子は、74式戦車、のぞき窓から、集まった人数を確認していた。
異世界においては、対人戦闘が主になる。
地球の74式戦車と違って、対人用の仕掛けがされていた。
戦車の四方に、悪魔の兵器、対人地雷が取り付けられていた。
跳躍式で、ワナ線を引いても作動する。
研究用80式対人地雷、作動すると、地面から1,2~1.5メートル跳躍し、地上で爆発し、破片を振りまく悪魔の兵器だ。
「これは、地雷じゃないわ。埋めてない。人が操作する」
「まあ、そうですね」
彼女が、ヒモを引くと、
戦車四方が一瞬、爆発したかに見えた。
ドカーーーン
戦車の周りに固まっている兵士たちは、まるで、ドーナツの輪の真ん中のように、消えた。
破片を免れた外にいる者たちは、何が起こっているか分からない。
この対人地雷の恐ろしい所は、破片が一個でも当たると、戦闘不能になることだ。
破片一個が、心臓にあたり亡くなる者。
無数の破片があたるが、急所を外れ。生きている者
どちらも運が悪い。
「ヒィ、何だ。自爆したのか?」
☆戦車内
「次は、指向性散弾ね」
カチッと点火具を回すと、
更に大きな爆音が響く。
王都広場に、数千個のパチンコ玉ぐらいの鉄球と破片が飛び散る。
「さすが、戦車、爆発反応装甲があるから、いけると思った。
もし、異世界の戦車学校だったら、落第よね」
そう女はつぶやく。
「前進!」
「はい!ニュートラル良し!エンジンガス良し!ギア良し!」
戦車は前進し、時々、バリケードがあると、躊躇なく砲撃をくわえた。
人が宙に舞う。
この世界の兵士に抗う術はない。
戦車は止まらない。
城の軍師たちは、戦車に釘付けになる。
「殿下、陛下!本城決戦でいいですよね。指示を」
「母上!」
「ええい。護衛をつけろ。妾は援軍の要請に出る。それまで持ちこたえろ!」
混乱の極地になるが、戦車は陽動であった。
「陛下、王都が、魔王軍に囲まれています!」
「魔王は不在のはず!」
魔王種と呼ばれる角の生えている褐色の部族、オーガ、オーク、ゴブリンの部隊が、足音をそろえて、進軍する。
しかし、王都市民には危害を加えない。
武器を持っているものだけに攻撃を加える。
もう、戦える騎士は残っていない。
彼らは、王城を目指す。
「殿下!城に、鬼神が侵入しました!」
「何だって。何人」
「一人です!奇妙な格好をしています」
あの女子が、戦車を降り。城に入った。
自衛隊の戦闘服に、鉄帽、サスペンダー、弾帯、雑嚢、顔は、ゴーグルに、フェイスガードをつけている。
まるで、お面をつけているように見えた。
地球の自衛隊と違う所は、防弾チョッキを改造している。
腕をケプラー繊維で覆い。手甲を付け。手袋は、防刃手袋、レックガード、アンクルガード、
をつけている。
ラスベガス銃撃事件の教訓を逆用して作ったものだ。
銃社会アメリカにおいても、軍隊用の自動小銃は別格だ。
チンピラ二人が、自動小銃を持って、銀行強盗をした。
なれているはずの警官100人以上が大苦戦した事件があった。
狙撃のライフルの位置まで弾は余裕で届く。
ピストル、ショットガンで狙おうにも、近づくまでに撃たれる。
しかも、相手は、防弾チョッキを魔改造して、全身を防弾していた。
警察は有能だ。役割が違うだけだ。
城の兵士は、剣、槍の間合いに入る前に撃たれ、弓、ボウガンの射手は、射ったら、すぐに鉄の弾の返礼が届く。
「射て!」
彼女に、たまに、矢が当たるが、傷はない。
しかし、体力が消耗するから、2時間は限度だ。
彼女は、64式7.62ミリ小銃で、撃つ。
一発で仕留めるためだ。
バン!バン!・・・
・・・
「ヒィ、まるで、城の中を分かっているみたいだ!」
やがて、城の謁見室まで来た。
ライオネル、マーガレットがいる。
王妃は逃げた。
「降参する!」
バン!バン!
威嚇で撃つ。
「降伏するなら、土下座寝をしなさい」
声に聞き覚えがある。
・・・もしかして、リリア?
シシリー王国は、この日、陥落した。
最後までお読み頂き有難うございました。