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追放

 私は、シシリー王国の王太子ライオネル、なのに、婚約者は見たこともない少数民族だ。名前はリリア・ササキという。


 リリアが12歳の頃、どこからか父上が連れてきたのだ。


 私の婚約者として、王城に住まわせた。


 黒髪・黒目の不吉な女だ。

 我国への留学生というが、貴族ではない。

 その民族には貴族はいないそうだ。

 野蛮で、原始的な部族だろう。


 異質な容姿で、我国の貴族学園では、浮いている。

 授業はほとんど出ない。


 何故なら、入学前に全ての科目の履修は終わっているだと。

 社交が目的でパーティなどに参加している。


「ああ、殿下、おかわいそう。碧眼、金髪の殿下と黒ずくめの女との間に生まれた子は、言うのもはばかれますわ」


「マーガレット、有難う」

 彼女は、伯爵家の三女、行儀見習い、王城の王妃付きの侍女

 業腹だが、お茶会の時に、給仕をする。

 平民リリアに、伯爵令嬢が給仕をするとは、


 お茶会の時、主に、マーガレットと話す。

 マーガレットの伯爵家は、母上の寄子、母上も公認の仲だ。

 リリアと違って、クリーム色の優しい髪に、薄いブルーの瞳、太陽のような笑顔だ。


「・・殿下」

「おい、低位の者が先に話しかけてはいけないと貴族教育で学ばなかったか?」

「失礼しました」

「ところで、マーガレット、今度観劇に行こう」

「はい、殿下でも、ドレスが・・」

「もちろん、贈るよ」


 母上が味方してくれるから、お茶会の事は、父上には分からない。

 しかし、孤児院の慰問や、パーティはそうはいかない。


「フフフ、皆様、お菓子を一緒に作りましょう。男の子は、殿下に剣術を教わってね」

「「「はーい」」」


 正直、ウザい。

 そうだ。母上の実家は、裕福だ。

 私は母上に相談した。

 すぐに、ある計画を実行した。


 マーガレットを、リリアが来る2時間前に慰問させる。計画は私が知っているから容易だ。


「ほら、子供たち、お菓子とお小遣いよ。お前たち取りに来なさい。いえ、時間の節約よ。こうやって、投げちゃえば、エイ!」


 パラパラとキャンディーや焼き菓子、銅貨を床に放る。


「ウワー、リリア様よりも豪華だ!」


 子供たちは夢中でパクパク食べる。

 食べながら、銅貨を拾う子もいるほどだ。

 平民の子は卑しい。


「あら、おかしいわね。リリア様、予算をいっぱいもらっているはずなのに子供たちがこんなに飢えて、怪しいわね」


 すると、リリアが来た時は、


「皆さん。今日は、クッキーの焼き方を教えます」


 シーーーーン


「いらないよ。いっぱい食べたから」

「ねえ。僕たちの「よさん」を使い込んでいるって本当?」


「・・・・そのようなことありません」


 それでも、リリアは通う。

 そんなリリアでも、なつく子供はいた。


「今日は、皆さんに、九九を教えます。これが分かるとお金の数え方が楽になります」

「「「えー」」」

「マーガレット様から沢山、お小遣いをもらったからいらないよ」


「教えてよ」

「私は、リリア様の方がいいわ」


 リリアになつく子には、マーガレットは、お小遣いやお菓子をあげなくなった。

 それでもかたくなに、3人のガキが、リリアを信じて疑わない。


「リリア様の勉強の方がいいわ。ソロバンをもらったの。私は商会で働きたいわ」

「おれ、リリア様から礼法の書を買ってもらった。でっかいお屋敷の使用人になるぜ!」

「私は木の剣、騎士様になる!」


「フフフ、応援しますわ」


 まあ、それぐらい誤差だ。

 吟遊詩人に金を渡し、伯爵令嬢が、孤児院の慰問に熱心で、王子の婚約者が慰問を怠けているのを補っていると唄わせた。

 王子の婚約者は、黒い不気味な風貌とだけ匂わす。


 次は、パーティだ。

 我国のパーティは問題ない。

 我国の貴族は、社交界のボス、母上には逆らえない。リリアそっちのけで、マーガレットを紹介してくれる。


 しかし、どうにも出来ないことがある。

 留学生や他国の王族たちだ。

 これだけは、エスコートをして出席をしなければいけない。

 皆、婚約者と共に出席をするからだ。

 違うパートナーの時は、先触れをして休むか、代わりに兄弟姉妹と出席をする。



 ☆交流パーティ


「リリア様、こちら、最新の演劇の台本ですの。一緒に読みませんか?皆様も」

 ペコ「・・・・・・はい」

「「「はい、是非」」」


 若い王族の社交みたいなものを我国で時々行う。


 口数少ないリリアに、皆が気を遣って、声を掛ける。

 くだらないおしゃべりをする会だ。


 リリアは、いつも、蛮族の礼法をする。頭をチョコンと下げる野蛮な礼法だ。首を斬って良いという意味らしい。


「ライオネル、いいな。貴国は、ササキ殿がおられて、しっかりされた王妃の誕生だ」

「カール、そうでもない。陰気な女だ。平民だ」

「なら、可愛い婚約者殿だ。爵位と領地を授ければ良いのではないのか?謙遜されて爵位は辞退されていると聞くぞ」

「功績もないのに」


「あるさ。魔族を抑えている」

「はっ」


 我国は魔族領と接している。精強な騎士団が睨みをきかせている。そもそも、魔王は数十年誕生していない。


「カール、どういうことだ」


「カール殿下、台本の殿方の台詞、音読お願いしますわ」

「お、分かった。グレース今行くよ」

「「「キャアアアアアーー、カール様とグレース様の共演よ」」」


 何だ。まあ、いい。


 母上が、婚約者の交代を陛下に進言をしているが、首を振らないらしい。

 理由くらい言って欲しい。

 いつか聞いたが、


『ライオネル、リリア嬢は、鬼神だ。人であり続けるには、絆が必要だ。お前が絆になれ』


 父上は、あやふやなことで口を濁していた。何だ。本当は、ヒステリー女なのか?


 しかし、急展開を迎える。

 父上が、視察中、馬車の事故で、お亡くなりになられたのだ。

 リリアは悲しそうに、葬儀に参列していたが、次の日に、母上が大なたをふるう。


「ライオネルが即位するまで、妾が代理じゃ。リリア、部屋を移せ。そこに、マーガレットを住まわす」


「・・・はい」


 リリアは一番、日当たりの悪い部屋に移した。


 更に、劇団に命じてある内容の演劇を行わせた。

 慰問を怠ける。

 王妃教育を嫌がる。ある国の王太子の婚約者の話。

 口うるさく指導する陛下を、亡き者にしようと・・・不気味な魔女が暗躍する。


 それを、真実の愛に目覚めた王太子と、真の高貴な貴族令嬢が協力して、魔女の罪を暴く。

 魔女は、黒髪、黒目だ。

 架空の国だが、街雀たちは口走る。


 これは、あの黒髪の女ではないか?


 やがて、リリアは、移動する馬車を取り上げられ、平民の服を着て、孤児院を慰問するようになった。

 子供たちから、「帰れ」と石を投げられたとカゲから、報告があった。


 もう、国中の嫌われ者だ。


 黒髪をローブで隠し。フードで目を隠して歩くようになった。

 それでも見つかると、石を投げられ、足早に逃げる。


 さあ、そろそろ婚約破棄の頃合いか?


 と思ったが、母上が、イライラしている。


「大使館に逃げ込んだ」


 更に調査をすると、

 孤児院の子供3人をつれ、共同大使館に保護を頼んだのは分かった。

 そのまま逃げ込まれたら、打つ手がない。


 しかし、リリアは、城に帰ってきた。

 これで、終わりだ。


「リリア・ササキ、国王陛下に対する呪いを行った罪で逮捕!」

「お前の部屋にあったノートが証拠だ。魔女文字に違いない」


 騎士団に逮捕させた。


「婚約破棄、北の修道院で修行してもらう!」


 リリアは、最後まで、黙っていた。


 一応、あの女は、他国では人気がある。拷問や処刑は、我国では出来ない。

 横やりが入らないように、修道院に移送中に、魔族領付近の国境で、騎士に処分をしてもらい。死体を魔族領に投げ込む。

 魔族の仕業と発表しよう。


 謀略は、貴族のならいだ。


 これで、全てが終わったと思った。






最後までお読み頂き有難うございました。

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