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遂に立ち上がる、恋愛フラグ③

「うーん?人を殴らない方法?」


戦闘魂の塊みたいな君が?と不思議に思って洗濯物を干す手を止めると、ソルは暗い食堂の入り口でそっぽを向いていた。


「なに?今日の事を気にしているの?」


「別に。そうじゃないけど。」


豪快にマルクをぶん殴った日から、ソルによる被害者は後を絶たない。


それは主にマルクだったりドミニクだったりビリーだったりしたけれど、今日ソルが手を出したのは、他所から流れてきた傭兵だった。



この国の貴族はそれぞれ私兵や騎士団を持っているので、お祭りの日でもない限り流れの傭兵が王都に集まることは殆どない。


けれども海を挟んだ隣国から逆隣の大国へと渡ろうと思うと、どうしてもうちの国を経由しないといけない現状、流れの傭兵が王都に居ることもあるにはあるのだ。


特に隣国との情勢が不安定な今、王都には傭兵が増えつつあった。

けれどそういった人達はとても乱暴で、自分勝手な行動で街中で騒ぎを起こすことも多かった。


ソルが因縁をつけられたのも、そういう手合いだった。



孤児院からのお使いで、街の食堂にパンを卸しに行ってくれた帰りだった。


ソルや孤児院の子供達は、懇意にしている食堂の店主から代金を預かると、いつものように走って孤児院まで帰ろうしていた。


その時、食堂の娘さんの大きな声が聞こえた。


振り返ったソル達が見たのは、「ここは酒場じゃありません!」と半泣きで訴える娘さんの姿だった。


昼前の大通りに似つかわしくない男達は、既に酒臭く、どう見ても朝まで飲んでいて酷く酔っ払っているのが明白だったらしい。


店主が出てきて店はまだ開いていないこと、お酒は出せないことを説明しても、男達はしつこく絡み続けた。


それどころか酷くなっていく態度に、遠巻きに見つめていた孤児院の子供達はすっかり足がすくんでしまった。


警備巡回している騎士か衛兵を呼んでくるべきかと迷っている周りの大人達の間で、ソル達は完全に立ち止まってしまっていた。


そこを、男達の一人に目をつけられたのだ。


男達は子供達に気付くと、すぐさま近寄ってきた。


店主が止めようとすると、男達は余計に激昂した。

酒臭い男達が大声を上げながら近付いて来たのだ。

怯えた子供達は泣き出してしまった。


それに気を良くしたのか、男達の一人が子供達の一人の腕を掴んで捻り上げた。



男の威勢が良かったのはそこまでだ。


次の瞬間には、男の顔面にはソルの飛び蹴りが炸裂していた。


突然の事に鼻と口を押さえて呻く血塗れの仲間を見て、勿論連れの傭兵は激昂した。


ソルは男に蹴られて吹き飛び、通りの屋台に背中から突っ込んだらしい。


が、男が薄汚い言葉を使って他の子供達を襲おうとした瞬間、男の腕から血が吹き出した。


直ぐ様体勢を立て直したソルが、派手に壊れた屋台の中から掴んだ包丁で男の腕を切り付けたのだ。


腕を抑えた男は滅茶苦茶に怒鳴り散らしながらソルへ突進した。

ソルはさっと反転して身を(かわ)すと、男の懐に飛び込んで思い切り太股に包丁を刺した。


転がって叫び声を上げる男を見下ろすソルは、鬼神のようなソルを見てへたり込んでいたもう一人の傭兵仲間を見付けると、髪を鷲掴みにしてぼこぼこに殴ったらしい。


主に目を殴り付けられたその傭兵は、騒ぎを聞いて駆け付けた私と騎士達の前で、腫れ上がって潰れた目から涙を流して助けを求めていた。


・・・・・というわけだ。



食堂の親子や傭兵達の様子を見ていた街の人達の証言もあって、ソルはどうにか実刑は免れた。


けれど、返り血を浴びたソルは、走り寄った私を振り返ってからは一度も私と目を合わせなかった。


何かを考えるように、ただ黙ってずっと虚空を見詰めていた。


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