幕間②
鼓笛隊のドラムロールが勇ましく響き渡る。
次に勝ったらベスト4。
対戦カードが読み上げられる度、闘技場には悲鳴にも似た歓声が轟いた。
第一試合目は、流れの傭兵トマス シュナウザー対公爵家銀兎騎士団の副団長 ミュラー カリブンクルス。
騎士団には珍しい細身の剣から繰り出される強烈な突きを武器に善戦したミュラーだけれど、強靭な膂力で大槍を扱うトマスのリーチとパワーの前に惜敗することになった。
最後まで勇敢に戦った両者には、会場の全ての人間から惜しみ無い拍手が送られた。
私も拍手をしながら、ふと気が付く。
随分と体格に恵まれてらっしゃるようだけど、あの副団長、女性だわ。
ミュラーがバシネットを脱ぎ捨てた。
金色に輝くウェーブのロングヘアー姿に、会場がどよめく。
ミュラーとトマスは観客に軽く手を振ると笑顔で舞台を後にした。
小さくなる背中を目で追いながら、私は自分の太ももに頬杖を付く。
我が国では、女性騎士というのはとても珍しい。
北側諸国のケントリア帝国や東側諸島のルプス海国では女性も剣を握る事があると聞く。
特にルプス海国ではそれが顕著だそうだ。
母が言うには、ルプス海国には騎士団長に匹敵する身分に将軍という職があるらしい。
そして、三人いる皇女のうち、なんとお二人が将軍職に就いているという。
もう一人の皇女も、朝廷で重要な役職に就いていると聞く。
そればかりか、ルプス海国では平民の役人雇用も盛んで、試験に合格した大勢の女性達が役人として働いているそうだ。
女性が、男性と平等の強さを手に入れることが出来る。
ルプス海国の仕組みは、どこか現代にも似ている。
数は少なくても、日本の自衛隊にも女性の自衛官はいたし、女性の政治家もいたし。
「女性だって、戦えるのよねえ・・・。」
こんな王国じゃあ、想像することすら出来ないだけで。
キラキラ輝くブロンドヘアーを風に靡かせたミュラーの弾ける笑顔を思い出す。
・・・・ミュラー カリブンクルスかあ。
カリブンクルス。
・・・・・・ん?
・・・・・・・・・・・カリブンクルス侯爵家のカリブンクルス、ではないよね?
カリブンクルス侯爵家といえば、建国から国を支えた文官の家系だ。
確か、前宰相を務められたのも、カリブンクルス侯爵だったはず。
現在は後継者が幼すぎるという理由で全ての政治の舞台から引退されているけれと、カリブンクルス家の宮廷での影響力は決して衰えていない。
ん?え?あの、カリブンクルス!?
「いやあ、流石に、それは!聞き間違いよねえ・・・。」
幾ら異世界だって、そんな自由すぎる侯爵令嬢がいたらそれこそ漫画の世界だわ。
でも、妙に引っ掛かる。
「騎士団所属ってことだし、帰ったらウィルに聞いてみようかな。」
呟いた声が歓声に描き消された。




