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幕間

試合はぐんぐん進んだ。


というか、数人、圧倒的な強さで試合を強制終了させるような参加者がいた結果、まるで消化試合のようにばんばん試合が進んでいったのだ。



その中には勿論、我らが麗しの騎士様のウィルや、北の国の魔剣士、同じく北の国独特の雰囲気の長身の騎士様や、あとは王族直轄領を守護する輝鷹(ミコアキピテル)騎士団の制服を着た騎士様が二人に、傭兵なのか随分と体格のいい男の人、公爵家の騎士団の制服を着た人が一人、そして、ソル。



「・・・無傷で残っていらっしゃる!!!!!!!」



神様、仏様、創造神様!


本っ当ーーーーーに!!!ありがとうございます!!!!!



可愛い顔に、傷一つ付けることなく勝ち進んだ推しが誇らしい。



「ベスト8だよ!?凄くない!?凄いよこれは!凄いよねえ!?」



鼻息荒い私にがくがく肩を揺らされたせいで、マルコもライナスも白目を剥きかけている。


「凄いよね!!!!!!!」


「・・本当に凄いです・・・・!」


いやなんか、言わせちゃって申し訳ない。でも言いたい!し!言って欲しい!!!


ソルの凄さを!!!


全国の街々へ放送してまわりたい!!!!!



「うちの!ソルが!ベスト8ですよーー!!!!!!」



しかもぶっっっちぎりの最年少!


騎士見習いどころか、平民の子供で!並みいる騎士や腕自慢を押し退け切り伏せ、ベスト8!!!




「・・・・推してて良かった・・!」


感無量。


湧き水のようにこんこんと溢れてくる感涙に、私のお手製ライブタオルはぐっしょぐしょだ。


そんな私を放っといて、マルコとライナスは声を弾ませている。


「でも、ソル本当すげーなあ!俺も頑張んなきゃ!さっき勝ったのなんて、騎士団の人じゃん!めっちゃすげえよ!あー俺も頑張って、いつか騎士団に入りたいなあ!聖鷲騎士団なら、平民でも入団試験受けさせてくれるもんな!あ!ソルだって、今日優勝すれば、騎士団に入団できるんじゃねえ!?」


「うん。王様も観に来てるって言ってたし、このまま勝ち進んだら、ソルなら絶対偉い人の目に留まる。ソルならやるかもって思ってたけど、本当に勝つからあいつは凄いよ。俺も、明日からもっと鍛練増やす。」



マルコとライナスがそう言い合って、瞳をキラキラとさせているのが微笑ましい。





聖鷲騎士団に憧れるのは、実は平民の子供であることが多い。




他の多くの騎士団が貴族階級で構成されているのに対して、聖鷲騎士団は平民出身の入団試験を設けている。



広く門戸を開いているけれど、誰でも入団出来る訳ではない。


父親曰く、聖鷲騎士団の入団試験は、公私を合わせても他に無いほど、他所の騎士団の入団試験とは比べ物にならない程に厳しいという。



現代日本で言うところのプロ野球選手やJリーガーと同じ感覚だ。


手が届く可能性は0じゃない、けれどほんの一握りしか手が届かない世界。




それが、余計に平民階級の子供達を惹き付けるのだろう。



そして、ウィルやうちの父親のように、平民出身の人間が活躍しているというのも彼等が憧れる要因の一つだ。


ウィルは実際には違うけれど、それでも平民時代が長かった分、平民からの支持も篤い。



ソルがウィルに憧れているかと聞かれれば全くそんなことは無く見えるけれど、マルコやライナスはウィルを見つけるとキラキラした眼差しを送っているし。



二人が騎士に憧れているのを知って、私はなんだかほっこりしてしまった。



「マルコもライナスも、ソルの次くらいには強いもの!このまま頑張ったら、もしかしたら本当に騎士様になれちゃうかも!まあでもその前に、マルコは、跡継ぎとして貴方に期待してるデンデさんを倒さないとね!」



笑って言うと、マルコは面倒くさそうに頭を掻きながら溜め息をついた。


「入団試験よりも先に、難関突破しないとかよぉ・・。」


デーンと構えたデンデさんを想像して、私とライナスは思わず吹き出してしまう。



「でも、みんな、・・・本当に大人になってくのねえ。何かちょっとじんと来ちゃった・・!」





ゆっくりじっくり大人になる現代日本とは違って、この国では子供の期間は凄く短い。




私にとってはどう考えたって子供だとしか思えない年齢でも、農村部や炭鉱地に行けば立派な働き手として扱われている。


女の子ならば早々に結婚し家を出ていくし、男の子ならば稼ぎ手として同じく家を出ていく。



王都では農村部や炭鉱地よりも少しだけ長く子供でいられるが、それでも上の学院へ上がらなければ、十四歳で成人扱いになる。



マルコやライナスや孤児院のみんな、それにソルとも、あと一年と少しでお別れなのだ。



「・・・楽しかったわねえ。」



「え!?何言ってるんですかマリア様!まだまだ、こっからですよ、試合!」


「ソルならまだ勝つよ。次の試合も。」



試合が終わることを心配したと思ったのか、マルコとライナスが焦って内輪を振り回す。



このキラキラした子達は、人生二週目喪女がこの光景に心揺さぶられているなんて思いもしないんだろうけど・・・・。




過ぎていく時間は繊細で、尊くて、かけがえの無いものだと、そう思うのはきっと、私と君達との時間の早さが違うからなのだろうけど。




子供特有の無邪気さで、力強く私の前を駆け抜けていく皆と一緒にいられたこと。



そんな儚くて楽しい時間を、ソルと過ごせたこと。




きっと私は、一生忘れないと思う。



「そうね。まだ、もうちょっとだけ、続くわよね。」



あと少しだけ、一緒にいられるわよね。



長いようで短い、ソルが大人になるまでの時間を、どうか、一つでも多く目に焼き付けて、沢山一緒に過ごせますように。




神様。どうか、少しでもソルといさせてください。


ソルが大人になって、離ればなれの日が来る日まで。




きらきらと輝く蜂蜜色の太陽の眩しくて、私は少しだけ涙が出たのだった。

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