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幼馴染みは鈍感姫②

僕にとって、幼馴染みは「お姫様」だった。



父親が戦死したのは僕がまだ幼いころ。


勇敢で立派だった父を喪って、我がマリス家はただ崩壊した。


善人だと信じて疑わなかった親戚達は一斉に態度を変えて家を乗っ取ろうと乗り込み、病弱だった優しい母はそれになす術もなく日に日に衰弱していった。


あの頃目にしたおぞましいもの達を、僕は生涯忘れないだろう。


まるで獣のように罵り合い奪い合い争う様。


母が亡くなったのは、父がなくなって僅か三ヶ月後の事だった。





僕はあっという間に廃嫡された。



路頭に迷っていた僕を探し出し保護してくれたのは、父の親友のジャン ブランジェ中隊長だった。




あの日。


孤児院での劣悪な生活や慣れない薪割りで掌の皮はずるずるに剥けて、とても痛くて、ジャン中隊長に連れられて久しぶりに載った馬車の中で、僕は気付かれないように泣いた。




僕のうちにだって馬車くらいあった。


僕にだって綺麗な服も暖かな家もあった。


僕にだって、自慢のお父様も優しいお母様もいらっしゃったのに。





どうして僕だけ、全部全部亡くしてしまったんだ・・・・・!



助け出された安堵より、悔しさと怒りで身体中が一杯だった。


そんな中で連れられたブランジェ家で、僕は小さな「お姫様」に出会った。







「さあ、マリア。今日から一緒に暮らす、貴女のもう一人の兄上よ。ウィルにご挨拶して?」


優雅な足取りで出迎えてくれた婦人と美しい兄妹達。


だけど僕の瞳はその後ろから顔を出した少女に釘付けだった。


絹のような白銀の髪。


ふっくらとした頬は朝日に輝く新雪のように真っ白で、輝く双つの瞳はまるでベニトアイトのように煌めいた。


蕾のような唇は薔薇色よりも淡く、乙女椿のような優しいピンク色に潤んでいる。


可憐なその姿はまるで、物語りで読んだ妖精姫のようだった。


「あ、あのっ。」


妖精はおずおずと婦人の前に出ると、その細い首を小さく傾げた。


「ウィリディス様とお呼びしても?」


何の汚れもないその瞳に、胸を突かれる思いがした。


だって僕は。




「・・・・僕はもう貴族ではないので。敬称は必要ありません、マリアお嬢様。」


その瞬間、その場の誰もが息を飲むのが解った。




ただ一人、目の前の少女を除いて。


なんかめっちゃ久し振りの投稿です。



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