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この勇者の我が儘は異世界を滅ぼすらしい(仮)  作者: ラハズ みゝ
第1章 旅立ち、それぞれの決意
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19話 冒険者の召集

 ヴァルトリア王国、王都シャンドラ。中央には国内最大規模の建築物であるヴァルトリア王城が聳えている。そしてそのやや東に位置するのは、ヴァルトリア王城と"始まりの間"に次ぐ大きな建物『冒険者ギルド』である――。


「緊急召集です!! ゴールドクラス以上の冒険者は、至急受付前に集合してください!!」


 ギルド内の酒場に受付嬢の声が響き渡る。突然のそれに、一体何事かとジョッキをテーブルに置いて受付嬢に注目する冒険者たち。


「今ここに居るゴールドクラス以上の冒険者は全員、受付前に集合してください!! 大至急です!!」


 慌ただしく呼びかける受付嬢。酒場の賑わいがざわつきに変わる。


「おいおい、何があったんだ?」

「そんなに急を要することなのか」

「私シルバーだから関係なーい」


 受付嬢は詳細までは伝えず、ひたすら冒険者たちに呼びかける。事情を知らない冒険者たちは疎らにゆっくりと受付の方へ流れていった。


 冒険者には"クラス"と呼ばれる階級が存在し、一人一人がその実力に対応したクラスに分類される。階級の低い方から【ルーキー】【ブロンズ】【シルバー】【ゴールド】【プラチナ】【マスター】の六つである。


 クラスが高いほど受注できるクエストの種類は幅広くなり、報酬も高価になる。また、今回のようにギルド側から召集をかけられることも増えてくるのである。


 ――受付前に集まった冒険者は十七人。そこに居る彼らこそ、ゴールドクラス以上の実力者たちだ。


 冒険者たちがざわつく中に、カツカツと何者かの足音がフェードインする。受付の奥の方に伸びる階段から、一人の男が降りてきた。


 黒いスーツに引き締まった身を包み、さっぱりとした白い短髪と口髭が特徴的だ。


「急に呼び出してすまない、冒険者諸君。私はここでギルドマスターを務める者だ。これから君たちに頼みたいことがあるのだが――」


 召集された冒険者たちの様子を、他の冒険者たちが酒場やクエスト掲示板付近で見物している。


「あれギルマスさんじゃね?」

「本当だ、一階に降りてくるとか超レアじゃん!」

「ギルドマスター‥‥‥俺初めて見た」

「あっ、みんな階段の方に向かってるぞ。極秘の任務か?」

「さすが、ゴールドクラスともなるとそういう重要な役割まで頼まれるようになるのか」


 ――ギルドマスターに催促され、冒険者たちは受付奥の階段を昇っていく。そして二階のとある部屋に案内された。


「ここは普段、ギルド上層部の者たちで会議等を行う部屋だが、今だけは特別に空けてもらっている。まぁ好きな席にかけたまえ」


 その部屋には長机と椅子が円形に配置されており、意図されてか否か、若干の薄暗さが緊張した空気を作り出していた。


 ゴールドクラス以上の冒険者召集、加えてギルドマスターの登場。冒険者らはいよいよもって非常事態なのだと心得て、それぞれ席に着いた。


「一刻を争う事態なので悠長にはできないが、この任務にはいくつか難点があるのでそれを話しておこうと思う」


「――ギルマスさんよ。こうも改まって、一体何が起こったっていうんだ? ドラゴンの群れでも襲ってきたか?」


 緊張した空気に耐え兼ねてか、冒険者の男が煽るように話を急かす。


「うむ。何はともあれ、まずは今どんな事態になっているかを説明せねばならないな。‥‥‥単刀直入に言おう」


 ギルドマスターは一息置いてからこう言った。


「本日召喚された第三十八人目の勇者が、現在逃走している」



 *  *  *  *  *



 ユキミチとリリアは商店街の表通りを練り歩く。ユキミチは黒い魔石を日の光に透かしながら、それを見つめて口元が緩んでいた。


「早々に凄いもの手に入っちゃったなぁ」


「魔石そのものを見るのは私も初めてかも。でも、魔石は近くの鉱山で沢山採れるし、珍しくはないと思うよ?」


「いーや、これはかなり希少価値高いね! だって魔石屋のおじさんが非売品として持ってた"謎の魔石"なんだぞ?」


「それはインテリアとして使えないからって理由でおじさんがそうしてただけじゃん。他の魔石と同じように魔法は打てるって言ってたし、ただの魔石だよ」


 リリアの言論に深いため息をつくユキミチ。


「浪漫の欠片もない思考だな‥‥‥。良いか? ここは異世界で、俺はこの世界に召喚されたんだ。そんな矢先で手に入ったのがこの"謎の魔石"。こんなの、何か凄い出来事(イベント)が起こる予兆に決まってる!!」


「全く理解できないんだけど! どういう因果でそんな結論に至ったの!?」


「これから始まるんだよ! 俺の大冒険が‥‥‥!!」


「もう!! 全っ然、会話になってない~~!!」

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