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第7話「アカネ、その場でサンダルを脱いで」

 観客たちの歓声と、あかねの腕に包まれて、あたしはルルに勝利したってことを実感していた。やった…!ルルに、勝った…!ぎりぎりだったな。あたしはドロドロの地面の上に座って、戦いの中で何度も治しながら耐え抜いた足の裏を見てみた。ドロドロになった土がこびりついて、元の足の色はわからなくなってしまった。手でなでてみると、ひりひりと痛む。もうこれを治すほどの魔力は残っておらず、またしばらく寝なきゃなって思った。これでまた、アカネと一緒に過ごせるんだって安心感に包まれる。アカネもすぐに駆け付けてくれて、あたしのことをぎゅっと抱きしめてくれた。しばらくの間、そうして二人でじっとしていた。観客たちも徐々に帰り始めていて、耳にずっと聞こえていたざわざわも小さくなっていく。体力が少し回復して、立ち上がろうとしたその瞬間。

「…だめだよ、このやろ!」

「…!アカネ、逃げて!」

「え!?」

あたしはとっさに、アカネを手で突き飛ばした。そしてあたし自身の体にとんでもない衝撃がかかるのを感じた。くらっちゃった…!

「リリ!」

「…あはっ、油断してるからだよ!さ、アカネ、こっちにきなさい」

「や、ちょ、ちょっと!」

あたしは魔法の攻撃を直接受けたものの、さいわい、意識を失うことはなかった。土の上に倒れたまま、アカネが魔法でルルのほうへ吸い寄せられていくのを見ていた。どうしよう、体が動かない。近くにあった杖を手に取ると、完全に2つに折れてしまっていた。これでは十分な魔力を込められない。そしてなんとか体を起こしてみると、攻撃のせいで服もさっき以上にボロボロになっていた。放っておくとばらばらと下に落ちてしまう。あたしはなんとか大事な部分だけは隠せるよう手早く残った布を結んだ。おへそも、足も、結構出てしまっているけれど、いまはそんなこと、気にしていられない。近くに落ちていた帽子をかぶって、アカネとルルの方へよたよたと歩く。べちゃ、べちゃ、とまだぬかるんだ土が足の裏にぐにゅぐにゅとまとわりつく。

「…アカネをかえして」

「いやだ!ルルが、アカネと一緒に過ごすの!」

アカネはあたしの方へ駆け寄りたがっているけれど、魔法で抑え込まれているのか、ルルのそばから動けないみたいだった。まるで見えないロープで縛られているような感じ。

「かえして…!」

「あっちいって!」

またしてもルルは魔法をあたしに向けて放った。体に衝撃を感じて、また、べちゃ、と体が土の上に倒れる。

「アカネ、その場でサンダルを脱いで」

「え?どうして…」

「いいから早く!またこうするよ!」

そう言って、ルルはあたしほうへ杖の先をむけた。アカネはおびえたように、素早い手つきでサンダルをするすると脱いでしまった。すでに土で足は汚れていたものの、足を直接土につけるのはテイコウがあるみたいで、そろ、そろ、べちゃ、べちゃと足をつけていた。すぐにアカネの足は、土で茶色く染まっていく。

「えいっ」

「きゃっ」

ルルは裸足になったアカネにむけて、こんどはあたしにも見えるような光る縄を放った。魔法の力か、それがぎゅっとアカネの体を縛る。

「さ、アカネ、一緒にいきましょ!」

「や、やだよ…!リリ!」

「あ、アカネ…!」

ルルは杖に乗ったまま、そしてアカネは裸足のまま、競技場を出ていこうとした。なにか反撃を、と思ったけれど、今のあたしには何もできることはなかった。二人の後ろ姿をただ歯を食いしばって見ていることしか。


つづく


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