第78話 イチャイチャ攻撃と思わぬ誤算
「……ごめんなさい、兄さん」
「謝る必要なんか無い。水美じゃなければもっと点数を取られる事になっていた」
戻ってきた水美を抱きしめる。すると、かなり強い力で抱きしめられた。
「……俺こそすまなかった、水美」
あの男には触れられていない。とは言え怖い思いをしたのも当然だ。
「ううん……大丈夫。ちょっと、ちょっとだけ兄さん成分があれば……もっとぎゅってして欲しい」
「ああ」
そうしてしばらく抱きしめ合った後……ぽん、と肩を叩かれた。
「もう大丈夫なのか?」
「うん! 大好きな兄さんに包まれたら嫌な事なんてすぐ忘れちゃうよ」
水美はニコリと微笑んだ。その頭を撫で……額にキスをする。
「よく頑張ったな、水美」
「――! うん! 頑張った! いっぱい頑張ったのが今報われたよ!」
労うようにそう言うと、水美はぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねる。そして、笑顔を見せながら俺に抱きついてきた。
「んふふ〜!」
「……水美が元気になって良かったよ」
苦笑しながら水美の肩を叩く。すると、水美は離れた。
「……だが、まさかあそこまでやってくるとは思わなかったな」
あの男は審判に厳重注意をされていたはずだ。だが……それ以上の注意はされなかった。
……最後、手を出そうとしたのもあちらからは見えなかったのだろう。ゴールのある方向から見て、更にかなり注視しなければ気づけなかったからだろう。
さて、どうするべきか。本格的に火凛達の棄権を勧めなければいけない。
と、考えていた時だ。
「何を考えてるんだよ! 兄さん!」
強く感情の篭った、そんな声が響いた。
見れば……白木弟が白木兄へ怒鳴りつけていた。弟、と言っても俺より歳上なのだが。
「あ? うるせえ」
「今年からはちゃんと真面目にするって母さん達とも話してたじゃないか! 停学も終わって、勉強も出来るんだし、あとは落ち着いていれば」
「おうおう。落ち着いてやってるじゃねえか。ちょっとばかしプレイが雑になっただけだろ」
「……あんなのわざとだろう! 人として恥ずかしくないのか!」
……随分とヒートアップしている。弟の方は真面目だという話も本当のようだ。
しかし、先生が来てその言い合いも終わる。白木弟が何か先生へと言っていたが、先生は微妙な顔をし……首を横に振った。
「……とりあえず火凛達の所へ行くか」
「そうだね。……僕、兄さんが兄さんで良かったよ」
そんな事を言う水美の頭を撫で、戻るのだった。
◆◆◆
「大丈夫だった? 水美。怖い事されなかった? 怪我はない?」
「大丈夫だよ、姉さん。……ちょっと怖かったけど、兄さんのお陰で全部消えちゃったから!」
火凛が水美を抱きしめると、嬉しそうに水美は火凛を抱き返した。
輝夜達も、水美が元気な姿を見せていた事でホッとした表情になった。
「……結構怖がってたと思ってたんだけど、元気そうで良かったよ、水美ちゃん」
「最初は動揺してたけどな。ちょっと色々やったら元気になった」
そう言えば、奏音は意味深に微笑んだ。
「色々……ねぇ」
何か言い返そうか迷っていたら、遠くから歩いてくる人影が見えた。
「……白木弟…………じゃなくて、えっと、和樹先輩」
「ははっ。白木弟でも良いよ。獅童君……達とは初めましてだね。そんなに怖がらないで欲しい。……愚兄の件でお詫びを言いたくて来たんだ」
気づけば、俺は火凛達を背にして前に出ていた。完全に無意識のうちであったが、誤魔化すように咳払いをした。
「……お詫びですか?」
奏音は少し警戒しながらそう言った。
「……ああ。本当にすまなかった。特に獅童君の妹さんにはとても迷惑を掛けてしまった」
「……いいえ。兄さんに慰めてもらえたので大丈夫です」
水美は火凛の隣でそう言った。
「……ねえ、和樹先輩。和虎先輩の事なんですけど、一つだけ気になる事があったんです」
奏音が俺の隣まで歩いてきて、和樹先輩へとそう聞いてきた。
「良いよ。何でも答える」
「あ、じゃあ早速。……黒い噂はいっぱいあったので置いておいて、一年生の四月……本当に最初の方は良い子だった、あと時々良い子に戻っていたって話があったんですけど本当なんですか?」
その言葉に和樹先輩は驚き……遠くを見た。
「兄さんを擁護するつもりは無い。少し長くなるかもしれないけど……でも、そうだね。聞いてくれるかい?」
和樹先輩の言葉に俺達は頷く。
和樹先輩は俺達を見て……少し寂しそうに話し始めた。
「兄さんは、中学の頃までは普通の生徒だったんだよ。……少し根暗な、ね」
その言葉に俺だけでなく皆が驚いた。
「ただ、兄さんは運動は出来た。……野球部に入って、それなりに結果を出して……この高校にやってきたんだ。でも兄さんは……パシリ体質でね。高校生になってから変わろうと思って、髪を染めて、ピアスまで開けた。……この高校はその辺自由だったからね」
……ああ。そうだ。奏音も髪を染めているし、染めている生徒はちらほら見かける。金髪や茶などの色限定で、その他の赤色や青色などは奇抜として認められなかったが。
「……少しだけ性格は変わったけど、あの頃はまだ普通の兄さんだった。だけど、兄さんが一年生の頃に当たった先生が最悪だったんだ。髪色の差別や、男女差別……それに、容姿差別まであったからね。……兄さんはあんまり容姿に優れていないって自分で思っていたから……落ち込んだ。親が抗議しに行ったけど、『そもそも髪色を染める方が悪い』って言われたらしい。別に校則違反でも無いんだけどね。……それで、俺の母さん達が兄さんに『髪色を戻しなさい』って言っちゃったんだ。その頃から兄さんの反骨精神に変わっていったんだ」
「……なるほどな」
「それで街を歩いている時に悪い友達を作ってその後は……って感じだね。時々正気に戻って先生に謝って真面目に授業を受けたりしたけど……先生は一切変わらなかった。それで、何度も何度も反抗期を迎えて……って感じかな。今はもう真面目な頃の面影が無いけど。自分でも戻れないって思ってるんだろうね。もう一回言うけど、兄さんの事を擁護するつもりは無いよ。高校生なんだから、自分の事は自分で判断しないと。……でも、その先生が野球部の顧問、って知った時には同情したけどね」
……人間、それなりに過去はあると言う事なのか。許すつもりは無いが。
「それにね……薄々気づいてると思うけど、この学校。放任主義の先生が多い――いや、ほとんどなんだ。……面倒な事に首を突っ込みたくない、って言ってもいいか。自分達は差別的な考えを持ってる癖にね。面倒事が起きれば知らない、生徒間の問題だと言えば済むと思っている。あの意味の無いランキング制度とか……もう一年生の間でも広がってるらしいね」
「一年生の間でも……って、そっちでもあるんですか」
「悲しい事にね。……いじめの原因にもなるって生徒会の意見BOXとか学校側に問い合わせたりしたんだけど……生徒会はだんまりだし、学校側でも『事実確認が出来ていない。近いうちに調査する』の一点張りだよ。それで、生徒側がバレないからって調子に乗って……の悪循環だ。元々素行の良かった生徒も気づけば悪事に加担している。……だから、良い人と悪い人で上下の差が激しいってのはあるかな」
……思わぬ事情を知れたな。それにしても、そうか。俺と火凛が通っていた中学からここへ通う生徒がほとんど居なかった理由がわかった気がする。
「……へぇ。まあ、そう言うのに染まるのは人を気遣えない人とかなんだろうから。私も擁護出来るとは思えませんけど」
奏音が視線を鋭くしながら言った。そのランキングの一番の被害者は奏音だろう。それを知っているのかどうかは分からないが……和樹先輩は頷いた。
「そうだね……ランキングなんかが顕著な例だ。自分から始めようとするのが学年に一人か二人……だいたい、先輩なんかから聞いて目立とうとして始める。それに賛同してやろうとするのが二、三人。……それで、匿名だからと面白半分で投票するのが学年の男子の半分近く、って所かな。『皆がやってるから』って理由でね。……先生に報告してどうにかなってるならもう解決してるよ」
赤信号みんなで渡れば怖くない、か。日本人の悪いところが顕著に現れているな。
「……そういえば、今年の一年生は特に酷いって事も聞いてるよ。兄さんの悪い友達と知り合いなのも居るみたいだし」
「それってまさか……いや、なんでもないです。そうなんですか」
一瞬名前を出そうとしたが、留まる。さすがに無いだろう。
「……あと、そうだ。もう一つ謝りたい事が。兄さんを試合に出さないよう先生に言ったけど、無理だった。『授業の一環だから、教師が出させないようにしたら問題になる』ってね。出した方が問題になるってのは分かってるはずなのにさ。出したところで兄さんがまた無期限停学……場合によっては退学になるだけって考えてるんだろう。ここの校長はどうしてか分からないけど退学処分の話はしてなかった。……退学にも色々必要だから面倒、とかの可能性もあるけどそれはどうでもいいか。成績は足りてるから、多分あと一年の辛抱だとか言ってるんじゃないかな」
その言葉に思わずため息を吐いた。
「……生徒も、ですが先生が一番の問題なんですね」
「ああ。そういう事だよ……どうにか変えたいとは思っているんだけど……恥ずかしいが、俺には無理そうだよ」
ため息を吐く和樹さんを見て……ふと、来栖を見た。
来栖が生徒会長になれば解決するのでは無いか?
……いや、一年生が生徒会長は無理か。さすがに。
だが、良くなるとは思う。問題はそれまでこの状況が続くのか、という事だが。
三度ため息を吐こうとすれば、不意に方を叩かれた。火凛達では無い。
「話は聞いてたぜ、水音」
「……響?」
そこに居たのは響だ。久佐さんを引き連れてやって来ている。
「すみませんね、立ち聞きしていて。和樹先輩」
「いや、近くに居た事は気づいていたから。大丈夫だよ」
……どうやら先程から近くに居たらしい。気づかなかった。
「……響は知ってたのか?」
「あー……まあ、その辺が楽しそうってんでこの高校に入った所はある。表上はそんなに荒れてない学校だったけどな」
「響、すっごい楽しそうにしてましたもんね」
単に俺の情報不足か……もう少しちゃんとやって高校を探しておけば良かったのか?
「ま、でもこうなったのってここ数年の事らしいからな。校長や教頭が交代してからだ。ここに通ってる先輩なんかが居なかったら知らなくても仕方ない」
「……そう言ってくれると助かるよ」
慰めてくれる響へそう言い、火凛の頭を撫でた。
「ん。私は水音と一緒の高校ならどこでも良かった」
「俺もそうだな」
……火凛が家から通える場所が良かったし、同じ中学の生徒が進学しない場所が良い、との条件だったからな。もちろん火凛が悪い訳では無い。
一度関係を一新したかったとの事だ。どちらの条件にも合うように……とこちらを選んだのだが。
「それで、急に出てきたが。響、まさか解決策でもあるのか?」
「おう。あるぞ」
「……本当か?」
思わぬ返答に怪訝な顔を見せてしまう。俺を見た響は笑った。
「ま、多少水音達にもやってもらいたい事があってな。別に断ってくれても良い。そん時はそん時でどうにでも出来る」
「……とりあえず、話だけ聞こう」
◆◆◆
「兄さん、頑張ってきてね! あと気をつけてね!」
「ああ。気をつけてな……それにしても、父さん達がアクティブに動いてる方が心配だ」
父さんはもう本当にブチギレていた。母さんも同様だし、火凛のお父さんまで怒っている。
響達と話し終えてから気づいた事だが、教頭先生が消えている。というか父さん達に連れて行かれたらしい。もう父さん達だけでどうにか出来るのでは無いだろうか。
……まあ、俺達がやるのも必要な事ではあるか。
火凛を見ると、ニコリと微笑まれた。微笑み返し……
俺は、和樹先輩を見た。
「……あと、本当に良いんですね。和樹先輩」
「うん。……兄さんは一度痛い目に遭った方が良い。後は俺達家族の問題だからね。……母さんも父さんも……俺だって、兄さんに甘すぎたんだ」
「そうですか……遠慮はしないですよ。水美……妹の件があるので」
そう言えば、和樹先輩は苦笑した。
「こっちこそごめんね。……本当なら俺がやるべき事だったのに」
「適材適所、って所ですよ。こういうのは俺がやった方が効果があるでしょうし……」
一度目を閉じ……辺りを見渡す。
「俺もこれぐらいやらないと溜飲が下がらないので」
◆◆◆
ピーッ、と試合の開始を告げるホイッスルが鳴る。
俺はグラウンドを見渡した。視線は俺達に集中している。
理由として……俺のすぐ傍に火凛が居るからだろう。一、二メートル先などではなく、肩が寄り添える程度の。
……一応、このチームは……というか、俺のクラスは割と俺と火凛の事を認めてくれた節がある。事前に響が言ってくれた事もあり、そこまで嫌な視線は無い。
だが、敵チーム……の中でも、一人。俺達を恐ろしい形相で睨みつけている男が居た。
白木兄、こと白木和虎。面倒なので白木兄と呼ぶが。
まあ、睨みつけているのは当たり前とも言える。こんなのこちら側のメンバーは一人欠けているようなものだ。舐めプといってもいい。
前衛に居た男子生徒が和虎にボールを取られる。……あれがタックルしてきたらボールぐらいは簡単に奪われそうだし、仕方が無い。
「来る、か。火凛、下がっててくれ」
「ん」
火凛を一歩下がらせ、俺は一歩前に出る。
俺より後ろには絶対にボールを行かせてはならない。
白木兄は全力でボールを蹴った。……ゴールの端へと打たれるが、俺はそれを受け止めた。
「ん、カッコよかったよ、水音」
ボールを投げる俺を見た後、火凛はそう言って微笑んできた。
そして、更に近づいてきて……頭を撫でてきた。
「ん。さすがに見られてたら恥ずかしいね」
「……ああ、そうだな」
めちゃくちゃに顔が熱い。それは火凛も同じようで、頬が朱色に染まっている。視界の端で水美が羨ましそうに見ていたのは放っておこう。
「イチャつきやがって、クソがよ」
白木兄は相当イラついているようだ。……いや、そりゃ誰だって目の前でイチャイチャされればイラつくだろう。
そして、男はブツクサ言いながら自陣へ戻ろうとした時だ。
ピーッ、と得点を入れた事を告げるホイッスルが鳴った。
「お、響が上手いことやったみたいだな」
「ん」
響が彼女である久佐へ向けてガッツポーズを決めていた。それにしても、ここまで早くカウンターを決めれたか。
「やっぱり凄いな、響は」
「ん。でも水音も凄いよ?」
火凛が俺の手をぎゅっと握ってきた。
「ありがとな」
「ん♪」
それを握り返せば、微笑まれる。可愛い。
……っと、違う。これだと普通に火凛と話していただけだ。
どうするべきかと考えていると、白木兄はイライラを募らせたように舌打ちを連発しながら戻って行った。
……少しだけ滑稽だ。
笑いそうになった口元を手で隠す。だが、火凛にはバレていたらしい。
「……珍しい。水音が悪い笑い方してる」
「俺も少なからず不満が溜まっていたんだろうな」
そして、また試合が再開する。相手ボールからだ。
「オラ、どけぇ!」
「……本当に躊躇が無いな」
「ほんと。ぶつかったら怪我するって分かってるはずなのに」
審判がもはや諦めたような顔をしている。……いやいや、お前が何とかするべき事だろう。
ため息を吐き、火凛より前に出る。
「ほら、さっさと打ってこい」
「てめ、後悔すんじゃねえぞ!」
こんな軽い挑発に乗っかって大丈夫なのかとも思うが、こちらからしても都合がいいので黙っておく。
そして、ボールが打たれる。速さとコントロールこそ目を見張るものがあるが、狙いが単調だ。
火凛の目の前に来たボールに飛び込むようにジャンプし、体の中心で受け止める。
「ほら、響! 行ってこい!」
「おうよ!」
響が集団になっているマークから抜け出す。……のだが、ボールは響とは違う方向へ。
そこに居たのは来栖だ。
「輝夜! 行くよ!」
「はい!」
輝夜は来栖からそう遠くない位置にいる。
輝夜はゴール前へと上がっており……今日二度目を決めたのだった。
「ナイスだ、輝夜!」
ちなみに奏音は輝夜へマークを着こうとする男子を止めていた。縁の下の力持ちだ。
輝夜はぴょんぴょん飛び跳ね、来栖に抱きついた。随分と微笑ましい光景だ。
そして……おお。かなり怒ってるな。顔が真っ赤だ。
……そろそろ、か。
火凛の手を三度、指でつつく。そして火凛を見ると、こくりと頷かれた。辺りを見回すフリをし、一瞬だけ響と目を合わせた。
試合が再開される。俺は少し強ばっている火凛の肩を抱いた。
「大丈夫だからな」
「……ん」
火凛は数秒だけ体重を預け……離した。
「さあ、来るぞ」
憤怒の表情……とでも言えばいいのだろうか。怒ってる事を辺りに知らせながらボールを持って上がってくる。
「……本当に、どうして退学にならなかったのか不思議だ」
「聞いてた感じだと、お母さん達がいっぱい頭下げてたんじゃない? あと、信じられないけど真面目な時もあったみたいだし……情緒不安定とかだったんじゃないかな」
俺達の会話が聞こえていたのだろう。更に顔を真っ赤にして、突っ込んでくる。
そう、突っ込んで来ているのだ。シュートでは無い。
水美の時と同じだ。
怒りを顔に貼り付けていたはずが、今ではニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。
その眼は……俺では無く火凛を見ている。
「オラ! 邪魔だ、どけ!」
「本当に救いようがない……な」
どれだけ感情が表に出ているんだ。殴りかけてきた腕を掴む。
喧嘩慣れしているし、相手は歳上だ。
……だが、力ならこっちも負けない。腕を使わずに両手だけで火凛を持つ事だって出来るんだ。
だいぶアクロバティックなプレイもやってきたからな。
「ぐ……なんだ、こいつ」
「というか本気で殴るつもりだったのかよ……親が泣くぞ。親が頑張って停学も解いてくれたんだろ?」
「うるせえ! 黙ってろ!」
先程の疑問を解消するためのカマかけだったのだが……本当にそうだったのか。
あの言い方だと……和樹先輩も頑張ったんだろうな。同情だけはする。
遠くで審判がどうにかしようとあたふたしているのが見えた……先程もそうだったが、すぐに止めに来ないのが現状を物語っている。親御さんだって見てるんだぞ。
……まあ、だからこそこの状況を作り出したんだが。後は響が――
「待たせたな! 響、水音、かわい子ちゃん達! ヒーローは遅れてやってくるもんだぜ!」
……え?




