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第17話 親友と友達のためなら

また予約投稿忘れてた……すみません

 少しだけ時間は遡る。




「あーもう、落ち着け私」

 トイレに逃げ込み、熱を持った頬を叩く。


 ピリピリとひりつく頬を摩り、熱が引くのを待つ。



 思わず目を瞑ると、色々と思い出してしまった。特に昨日の火凛の事を。


 あの時の火凛の顔を見て自分を呪った。親友を泣かせた自分なんて大嫌いだって思った。


 ……そう思っていたのに、気づけば彼が全て解決してくれていた。それどころか、火凛だけじゃなくて私の心まで救っている。その事に彼は気づいているのだろうか。


 いや、気づいてない。それか気づいてない振りをしている。


 今日だってそうだ。あのままだとただ半治と口論をするだけで、何の解決にもならなかった。


 ……もしあのまま口論を続けていたら、また火凛を泣かせる事になっていたのかもしれない。

 そう考えれば彼には感謝をしてもし切れない。



 ……これだけじゃない。今さっきの事だってそうだ。


『私だと半治を止める事が出来なかった。だから、獅童君に半治の事もお願いしたい』


 と、私が言うべきだった。恥も何もかも捨てて、私には半治を止めることが出来ないからって頼み込むべきだった。


『何かあれば俺が対処する』


 しかし、彼は何食わぬ顔をしながらそう言いのけた。手間でも何でもないとでも言いたげに。

 考えすぎなのかもしれないけど、私の感情まで全て理解しているんじゃないかと思ってしまう。


「ああ、これが火凛が言ってたやつか」


 獅童君は気配りが上手。そんな事を火凛が言ってた。しかし、想像以上だった。


 火凛が相手なら分かる。だって、二人は幼馴染だから。

 小さい頃からずっと一緒。ほぼほぼ家族みたいなものだ。相手の感情を理解していてもおかしくない。


 だけど、彼は私が言い渋っていた事まで分かっていたようだった。


 考えすぎだと言われればそれまでだ。だけど、朝の事もある。


 今まで出会った男子は私の噂を聞いて、関わらないようにするか下心丸出しで近づいてくるかの二択でしか無かった。


 それがまさか、色々なものをすっ飛ばして身を案じてくるとは思わなかった。


 ああ。そういう事なんだ。やっと理解出来た。

 彼は欲しい言葉を欲しい時にくれる人なのだと。


 頼みにくい事は察して自分からやるし、本当に言いにくい事なら言わなくていいと甘やかされる。


「火凛が臆病になったのも分かるなぁ……溺れたくなっちゃう」


 火凛が彼の事を好きになった理由が分かった。でも、少しだけ分かりすぎてしまった。


 こんなの知ったらそこらの男子など目じゃなくなってしまう。



「まずいなぁ……これ」


 思っていた以上に獅童君が喋りやすい事も影響していた。クラスの男子なんかよりよっぽど精神年齢も高い。


 こんなの、好きにならない方が――


 ダメだ。これ以上考えてはいけない。火凛の気持ちを裏切る事になるし、わざわざ学校で二人をイチャつかせた意味も無くなる。


 こんな気持ちは早々に捨てるべきだ。誰も幸せになれないのだから。




「ふぅー。大丈夫。私はそんなチョロインじゃないから」

 一度大きく息を吐いた。すると、少しだけ気分が落ち着いた。



 もう一度頬を叩き、熱を追いやる。


 大丈夫。大丈夫だから。



 ◆◆◆



 五分ほどしたらやっと落ち着いた。スマホを確認すると良い時間になっている。


 お母さんが心配しないように早く帰るべきだろう。そう思って火凛の部屋へと歩く。


 一度息を整えてから扉を開いた。


「ごめん、時間だからそろそろウチ帰る……どしたん、火凛。だいじょぶ?」


 火凛が顔を赤らめ、息を荒くして獅童君に寄りかかっていた。


「……ん、大丈夫」

「いや。それだいじょばない人が言うやつじゃん」

「いやまあ……もう遅いし、俺に任せて白雪は帰って大丈夫だぞ。風邪薬とかもあるし、保険証なんかの場所も分かるから」


 獅童君が凄く頼もしく見えた。私がここに居たところで何も出来ないだろう。


「……分かった。私が居ても気が休まらないかもしれないし」

「……ううん。それは無いよ」

 火凛の言葉を嬉しく思いつつも、やはり親友と家族だと安心感が違うだろうと思い返す。


「ありがとね、火凛。じゃあ私は先に帰ろうかな」


 カバンを拾う。不思議と心がドキドキしていた。



 言わなければ。さっきのお礼を。でも、お礼を言うだけだと足りない。私に何が出来るんだろう。


 そんな事を考えていたら、獅童君が口を開いた。


「ああ、そうだ。白雪。今日の……カフェの件でお礼がしたい。今度三人でどこかご飯でも食べに行こう。奢るぞ」


 その言葉に思わず笑ってしまった。


 やっぱり勘違いなどでは無かったのだ。人の感情を読むのが得意で優しいとか敵無しじゃん。


 また心臓が高鳴ってしまった。だけど、このままやられたままなのは私らしくない。


「そうだね、どっか食べに行こ。私もイロイロお礼したいからさ。言ってくれたら何でもするよ」


 ぽかんとしている獅童君……今更苗字呼びも無理やり距離を取ってるみたいでなんかな。水音……って呼ぼう。


 ぽかんとしている水音を見る事が出来て少しだけ嬉しく思った。


「それじゃ、また明日ね。火凛、水音」

「うん……えっ!」「ああ。またあし……た?」



 もちろん気づいていた。二人の首筋にさっきまでは無かった痕が残っていることは。


 あくまでも二人の友達として、二人の幸せを作る手伝いをしよう。



 二人に微笑みながら私はその場を去った。


 ◆◆◆



「……バレてたな、アレ」

 眠っている火凛をベッドに運び、後片付けをする。流石に疲れが出たのだろう。まだ九時にもなっていない。


「さて、明日の準備は俺がするか」

 昨日今日と火凛が作ってくれていたのだが、今日は俺が作ろうと思う。

 訳あって、明日の昼は別々で取ろうとも考えていたからだ。


 まずはサンドイッチの準備。特製のドレッシングを挟んだサラダをパンに挟み、切る。パンから染み出ない程度に、しかし満遍なくドレッシングが掛かるようにするのがコツだ。


 そして、もう一個は肉。火凛は甘めの方がすきなので、タレを染み込ませた玉ねぎを全体に散りばめてくどくならないようにする。


 それらを二個ずつ。しかし、弁当に入るよう小さめにしたからか、まだスペースが残っていた。


「ハムチーズも一個入れとくか。あと、アレがまだ残ってたよな」


 手早くハムチーズを包んで入れる。そして、冷蔵庫からウインナーを取り出した。


 包丁を操り、ウインナーを切る。そうして焼けば、あっという間にたこさんウィンナーの完成だ。


 火凛の分はこれで大丈夫だろう。


 そのついでにさくっと自分用の肉を挟んだサンドイッチを包み、冷蔵庫から取り出したマッシュポテトにぱっぱと塩コショウを振りかけて味を整える。


 自分の分も完成だ。


「くぁぁ……」

 俺の方も疲れが溜まっていたのか、あくびが漏れ出た。


 弁当箱を包み、毎夜送られてくる妹の連絡先におやすみと返す。



 火凛の部屋に戻ると、火凛はすやすやと眠っていた。その横に寝転がると、ベッドが少しだけ軋んだ。火凛は少しだけ身をよじったが、起きる様子は無さそうだった。


 そんな火凛の手を握って、目を瞑る。今日は色々な事があった。


「明日からもっと頑張らないとな。二人に……特に白雪には負担を掛けすぎてしまったからな」


 あの男は何をするのか分からない。さすがに手を出すとは思いたくないが、可能性はゼロではない。そんな男の相手を任せていたなど昨日の俺は狂っていたのか。


 白雪が平穏な日々を送れるよう動こうと、そう心に刻んでからその日は眠りに落ちた。

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