異世界住宅
今回初めて投稿させて頂きます。
思いついたまま気楽に書かせて頂きますので、もし万が一お目に掛かるような事がありましたら、素人が趣味で書いてると思って温かい目で読み流して頂けると幸いです。
俺の名前は伊勢甲斐往男、33歳。
ワンルームアパートに住む、一人暮らしの童貞だ。
冴えない見た目と性格から、会社では窓際族だ。
休みの日は大好きなアニメを観て心を癒しているが、アニメの主人公のように異世界に行けたらどんなに良い事か。
常日頃から、そんな事を願って止まなかった。
休みの日にいつも引き篭もってばかりだと身体が鈍るから、たまには外にでも行くか。
郵便受けにチラシが。
また住宅販売のか?
俺は独りもんだから、家なんて必要ないのに。
ん、異世界住宅?
二世帯住宅と掛けてるのか?
いくら異世界ブームだからって、こんなふざけたチラシ作るとかないわ。
ちょっと待てよ。
俺の所にしか入ってないじゃないか!
苗字が伊勢甲斐だからって、俺に対する嫌がらせか!?
何々。
異世界住宅の見学会にご招待?
参加の合言葉はチガセカ?
違う世界の略か、単純だな。
本気で住みたいと願って心の中で唱える。
内心馬鹿らしいと思いながらも、本能的に往男が心で唱えた瞬間、周りの景色が一面草原へと変わった。
往男は唖然とした。
まさか、本当に異世界転移されたのか!?
1キロ程先に、洋式の2階建て住宅が建っているのが見えた。
あれが異世界住宅か?
取り敢えず行ってみるか。
早速歩いて向かうと、そこには誰も居なかった。
誰も居なくて良いのやら悪いのやら…。
家の前にある立て看板には、
〈この度は異世界住宅の見学にお越し頂き、誠にありがとうございます。お住まいをご希望でしたら、お家賃としてお客様の魂を頂きます。もう二度と人間として生きる事は出来なくなりますので、重々承知の上ご決断下さいませ。〉
何て物騒な!
でも、これで確信した。
どうやら此処は、本当に異世界のようだ。
やはり、異世界で生きる為にはリスクが付き物だよな。
でも、異世界に住むのは長年の夢だった訳だから、異世界に住めるなら俺は人間を辞めるぞ!
〈了解なら、インターホンのスイッチを押して下さい。〉
往男がスイッチを押すと、周りの景色が山に囲まれた森へと変わった。
また変わったわ!
森の中にポツンと一軒家が建ってるなんて、まるで別荘みたいだな。
でも、俺が想像してた異世界と違って、全然ファンタジー感がないな。
まあ、アニメは創造物だしな。
って、何だこの腕は!?
慌てて家に上がって姿見を見て唖然とした。
そこには、狼男が映っていた。
人間を辞めた代償がこれか…
まあ、公私共に一匹狼だった俺には丁度良い姿なのかもな。
何か異能とかないのかな?
色々試してみたが、何も起きなかった。
陽も沈んで来た事だし、家の中を調べてみるか。
ちゃんと見ない内に来ちゃったからな。
何か食べ物でもあるといいんだけど。
2階の一室に、古い壺がポツンと1個だけ置いてあった。
結局、家中探し回って置いてあったのは、この古い壺だけか。
食べ物が置いてある訳ないよな。
森で何か食べられそうな物でも…あれ?
壺がカタカタと小刻みに揺れ、中から吉備団子が沢山出て来た。
おお、壺の中から吉備団子が!
しかも、めちゃくちゃ美味いぞ!
この壺は魔法の壺なんじゃ!?
何か願うと出て来るのか?
今度はジュースが飲みたいな。
すると、壺の中からジュースが湧き出て来た。
やっぱりだ!
凄いぞ、この壺は!
壺を持ち上げてジュースを飲んだ。
アップルジュースか!
あれ、壺の下にメモ用紙が。
〈この壺は、この家の家事全般を務めるメイドです。〉
「メイド!?」
と発した途端、壺が幼女に変わった。
「つ、壺がロリっ娘美少女に!?」
「初めまして。私はご主人様の世話役を務めさせて頂きます、芽依侶と申します。どうぞ宜しくお願いします」
「よ、宜しくね」
「はい」
遂に来たー!
ロリっ娘美少女!
これだよ、これ!
俺が何より最初に求めてたものは!
と心の中で叫んだ。
「所で、こんな姿だけど怖くない?」
「はい、逞しくてカッコいいです♡」
「おお! リアルで言われた事ない言葉! 何て素敵な子なんだ♡」
「私の見た目は、ご主人様の妄想を具現化したものですからね♪」
「通りで!」
「明日は朝早く出発しますので、今夜はもう休みましょう」
「朝早く出発って、一体何処に行くの?」
「魔王城です」
「えっ? 魔王城って!? この世界には魔王が居るの!?」
「はい」
「魔王って、俺には何の特殊能力もないから無理だよ!」
「この聖剣があれば造作もない事です」
「それは凄い! 芽依侶ちゃんも一緒に戦ってくれるの?」
「いえ、私はこの家の守り神なので、此処から出る事は出来ません。よって、魔王とはご主人様お一人で戦ってもらう事になります」
「芽依侶ちゃんは神なのか! 通りで凄い力がある訳だ! でも、出発ってどうやって行くの?」
「この家で向かいます」
「この家はメイロの動く家と言う訳か!」
そして、翌朝。
異世界住宅は魔王城目指して、飛行して向かった。
「空を飛べるなんて凄いわ! でも、やっぱり魔王と戦うなんて怖いな…」
「それが、この世界で生きるご主人様の使命ですからね」
「使命?」
「はい。世界各地で魔王が突然現れた事によって人類は滅亡し、もはやこの世に魔王の悪行を止められる者は居ないので、こうして異世界から召喚している訳です」
「世界各地に居るんじゃ、魔王同士で潰し合ってくれるんじゃ?」
「それが、そうもいかないのです。それぞれの魔王の力に大差はないので、均衡を保っているからです」
「それは厄介だな。魔王って何人居るの?」
「10人です」
「10人も居るの!?」
「例え魔王が何人居ようと、この聖剣一太刀で討伐出来ますので、何も恐れる必要はありません」
「そんな凄い剣があるなら、誰かに託せば良かったのに」
「この剣は皮肉な事に、魔王によってこの世界の人間には使えない呪いが掛けられてしまったのです。始めは壊そうとしましたけど、それがどうしても出来なかったので、呪いを掛けて使えなくさせたと言う訳です」
「だから、異世界の人間に託したのか」
「はい。この家は、異世界転移して来た人を魔王の元へとお送りする為の乗り物ですからね。家の守り神である私の使命です」
話している内に、魔王の棲む城がある山岳地帯に到着した。
「着きました」
「あれが魔王城か。中には部下が沢山居るの?」
「いえ、魔王しか居ません」
「魔王しか居ない世界なんて初めて聞いたわ! 現実世界では中小企業の窓際族でしかなかった冴えない俺が、この世界では勇者になれるなら、やってやろうじゃないか!」
異世界住宅は魔王城の前に降り立った。
大きな扉から、牛魔王を彷彿とさせる見た目の魔王が出て来た。
「獣魔王様。異世界から人間をお連れしました」
「よくやった、芽依侶」
「こ、これは一体どう言う事だ!?」
「私は獣魔王様のメイドですからね♡」
「俺を騙したのか!」
「あなたは、いいカモでした♪」
「異世界の人間は、とびきり美味いからな! 戴きます!」
「うわあああああっ! はっ! 此処は俺の家? 何だ、ベタな夢オチかよ! だけど、夢で良かったわ。いくら異世界転移したいと言っても、可愛いメイドに騙されて魔王に食われるなんて御免だからな。また現実世界で頑張るか!」
こうして往男は、普通の日常生活に戻ったのであった。
最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。
拙い文章で読みにくかったと思いますが、途中でやめずに最後まで付き合ってくれた事を本当に感謝しています。
また投稿すると思いますので、もし気になったらまた付き合ってもらえると大変嬉しく思います。