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星割の明滅閃姫  作者: 零の深夜
後章:崩壊境界のスターブレイク編
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81:強襲の剛槍


 「我々ドワーフも長命種でな。五十年前の人魔大戦の折には勇者様先導のもと、他種族へ夢幻機兵の製作や操縦方法の指導をしたものだ。あれは⋯⋯何物にも変え難い経験だったと今なら思える」


 床に跪いた姿勢のまま、焦茶色の髪を地面に垂らしたリルラはドワーフの現状を話し合えると、そう締め括った。


 「⋯⋯大体の事情は分かったよ。つまり現状、キミ達ドワーフには、人魔大戦を経験し、多種族と手を取り合う事を推奨する“急進派”と、多種族との和平を望まない者達“保守派”の二つに派閥が分かれており、前者がリルラ君のように多種族への忌避感を持たない者達、後者が街中で聞いたような、多種族とは相入れない者達という事だね」


 リルラはこくりと頷くと、更に深々と頭を下げる。


 「概ねその通りだ。しかし、我々には多種族と断交したとして、あの強大な魔王に抗う術など無い。保守派の奴らはそれが分からんのだ!」


 唐突に声を荒らげたリルラに、シフィが一歩前に出て彼女の心を鎮めるように頭を撫ぜる。


 「ええ。聞いたお話だけで恐縮ですけれど、我々は、かの魔王復活の兆しに遭遇いたしましたわ。自称なので真偽の程は不明ですが、これまでの戦場を駆け抜けてきたメイメツの腕を易々と破壊してしまった⋯⋯それもまだ本調子で居なかったというではありませんか。歴史書や父上達から当時のお話を聞く限り、そんな程度ではなかった様ですが⋯⋯」


 「そうか、既にそこまで⋯⋯であればこそ! 我々は同族同士でいがみ合っている場合では無いのだ! 一振りで地形を変化させてしまう一撃を振るい、命の果てには世界中を分断したあの力には、再び各種族が手を取り合わなくては勝てぬ!」


 「ええ。ですから、私達は絶大なる力を持つ魔王に対抗するため、各種族と同盟を組んでいるのです。既にアストラーダ、ガルドニア、アルファリアの三国から、加盟の意思を聞き及んでおります」


 「他種族共存国家主導か⋯⋯大半の人間からは支持されていると見て良いんだな? そして獣人、エルフもか! それは凄い! であれば、我が君へ進言を「危ないッ!」⋯⋯敵襲ッ!?」


 そう言って、リルラが室内に取り付けられた魔伝石を手に取った瞬間、無数の槍が会議室に降り注ぐ。


 いち早く殺気に気がついたクロは彼女の肩に手を回すと、淡い光に包まれて消える。


 「みんな! 近くのヒトの手を握って!」


 クロはリルラを抱く力を強めると、イリス、ネメアから伸ばされた手を握り締めて練っていた魔力を解き放つ。


 「転移!」


 ルナフォートの空に幾度となく青と白の光が閃き、槍の雨が通り過ぎて行く。


 「さて、ご丁寧なおもてなしの相手は⋯⋯」


 自然落下に身を任せて下からの風を見に受ける中、薄く目を開いたクロは、足元の光景に思わず口を開く。


 「ル⋯⋯夢幻機兵(ルナティック・ギア)ッ!?」


 眼下には、重装甲の夢幻機兵が隊列を組む姿が広がっていた。


 彼らは肩を半身引いて槍を振りかぶり、第二射を容赦なく投げ放つ。


 「あれはドワーフの好んで使ったとされる量産型夢幻機兵“マイス”だね。元々は採掘と鍛治を目的として作られた物を戦闘用に改造したと⋯⋯」


 「言ってる場合じゃないって! これは! ちょっと! 厳しいかも!」


 「ははは。喋る余裕があるうちはまだ大丈夫だよ。足りなければホラ。ボクも少し力を貸すからさ」


 ネメアが魔力を練って解き放つと、相当の勢いを持った剛槍は空に至るまでにその威力を無くし、逆らっていた重力に従って落ちる。


 「直撃はマズい!」


 「ふむ。状況も分からぬままでは面倒じゃな。イリスや、ワシの指定した魔力の地点に氷の礫を頼む」


 「ん。頼まれた」


 レンの提案を快諾したイリスは、彼女の指定する魔力を頼りに氷柱をぶつけて軌道を逸らす。


 『な、なんだ! 何が起きた!? これは⋯⋯?』


 野太い声が響き、合図を出していた野太い声を発する、一際大きな夢幻機兵の胸部が開き、顔を青くした男がフラリと外へ出る。


 『ぜ⋯⋯全滅⋯⋯?』


 いや、と更に白んだ顔を左右に振った彼は更に続ける。


 「致命傷を避けている⋯⋯この状況で!? 馬鹿な!」


 「馬鹿はお前だッ!」


 クロは全員をネメアに任せ彼の目の前に現れると、拳を振りかぶって殴りつける。


 地面に縫い付けられた夢幻機兵を尻目に、クロは彼の身柄を拘束しつつ口を開いた。


 「それじゃ、ゆっくりとお話を聞こうかな」


 「き、貴様らに話す事など何も⋯⋯」


 「無いのはいいけど、この状況で黙秘権なんてあると思わないでよね」


 突きつけられた銃口は、深く暗い彼の絶望を思わせていた。

 

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