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星割の明滅閃姫  作者: 零の深夜
前章:生還、性転換、英雄譚!編
12/136

11:終息と休息と穏やかな時間をキミと


 大型戦艦 フューリーの内部にある医務室で、一晩中眠っていたイリスが、窓から差し込む朝日に、頭頂部の耳とまぶたをぴくぴくと動かして、その目が静かに見開かれる。


 「ん、んん。⋯⋯クロ?」


 「イリス! 目が覚めたんだな?」


 彼女のベッドの側に椅子を置き、手を握って魔力を送り込み続けていたクロが心配そうに彼女の顔を覗き込む。

 顔色から、魔力欠乏による症状が治った事を察したクロが、ほっと胸を撫で下ろした。


 「クロ!聞いて!たいちょーが居たの!生きてたの!」


 ハッとしたイリスがクロの両肩を掴んで前後に激しく揺さぶる。


 「あばばばばば!? 落ち着けって!」


 「ううん、あの光。絶対たいちょーの転移!じっとしてなんか⋯⋯」


 「病み上がりなんだから無茶するな。見間違いかもしれないだろ?」


 「そんなわけない!あの光、見間違えるわけない!」


 「そ、そうか?」


 「うん。あの人の隊に居たら絶対に分かる」


 「な、なるほど。でも、転移の魔法を使ってただけなんだろ?なら他にも適性のある奴が居るんじゃないか?」


 「そうかもしれない。でも、わたしは信じてみたい」


 イリスの真剣な眼差しに、クロは何を言うでも無く彼女の頭を小さく撫でる。


 「あ、すまん。つい⋯⋯」


 「別に良い。好きにして」


 「え?」


 急な態度の軟化に首を傾げつつ、クロが手を彼女の頭に乗せようと伸ばした時、医務室の扉がバン!と音を立てて開かれた。


 「おや、イリス君、起きたようだね」


 ぶかぶかの白衣に着替えたネメアが軽快な足取りで医務室へ入る。


 「イリス君に使われた薬物は、“獣幻粉”という危険な代物でね、読んで字の如く、獣に幻を見せる物なんだけど⋯⋯なんと獣人にも効果があることがわかってね。今は禁止薬物に指定されているよ。いやぁ、後遺症が残らなかったのが幸いだったね、使われた粉の量も相当少なかったようだし」


 ネメアは椅子を持ってきて腰掛けると、さて、と話を続ける。


 「あの領主、コルグ・ランバースだけれど、彼の獣人への不当な行為、そして禁止薬物の所持、濫用。更に安寧の塔への故意による損害を加味して、彼の所持している既得権益の一切の没収が決まったよ」


 「あいつはどうなるんだ?」


 「さあ?それはボクには聞かされなかったからね。鉱山か何かで強制労働なんじゃないかな? それよりも、彼の後任が王都から来るまで、シフィ様が代理でこの街の指揮を執る事になってね。三日程度、ボクらはここで休息期間を設ける事になった訳だ」


 なるほど、とクロとイリスは頷いて、ネメアの話しを黙って聞く。


 「あの黒い機体、仮称だけれど、“メイメツ”と名付けられたアレの行方を追うようにとのお達しも国から来ているよ」


 「メイメツ⋯⋯」


 イリスが小さくオウム返しをすると、イリスがそれに応じて頷いた。


 「うん。勇者君の国の言葉で、光がついたり消えたりする現象を指すみたいだね。まったく、あんなスパッと現れてパッと消える相手を追えなんて、五王様達もなかなか無茶を言ってくれるよ⋯⋯」


 その後、イリスの体や魔力に異常が無い事を確認すると「こんな所かな」とネメアは一つ頷いて椅子から立ち上がる。


 「さて、ボクはもう行くよ。クロ君のディピスの調整があるからね。⋯⋯あ、そうだ。キミ達に一つお願いしたい事があるから、もう少ししたら機体の格納庫まで来てもらえるかい?」


 それだけ言って、クロ達が頷いたのを確認すると、足早に彼女は医務室を出て行った。

 その後ろ姿を見届けて、彼女達は顔を見合わせた。


 「頼みたいこと?」


 「なんだろうな? ⋯⋯まあ、行けばわかるだろう」


 クロが息を吐いて席を立とうとした時、医務室にコンコンコン、と控えめなノックの音が響いた。


 「だれ?」


 イリスが首を傾げて問うと、奥からレミの声が聞こえてくる。


 「わ、私です。レミファーラです! 入っても良いでしょうか?」


 どうぞ、とイリスが促すと扉が静かに開かれ、奥から、白いドレス姿のレミが後ろにメルナを伴って現れた。


 「お、お二人とも、今回はお疲れ様でした。あの、お二人のおかげで魔王教のちょっかいも気にしなくて済んだので、その、気持ちだけでもと思って⋯⋯」


 後ろ手に持っていた、いくつかの焼き菓子が乗ったトレイをクロへ手渡す。

 その盆から漂うバターの芳醇な香りと赤く煌びやかな輝きを放つジャムが、クロとイリスの食欲をまさぐった。


 「こ、これ手作りなんです!メルナさんと一緒に、その」


 ちらり、とメルナへ視線をやるレミにつられ、彼女へと視線を送った二人に対し、メルナは「ふん!」と顔を背けた。


 「そ、それじゃあ私達は行く所があるので失礼しますね」


 「ま、アンタ達の頑張り、少しだけ認めてやるわ」


 それだけを言い残して、二人はさっさと医務室の扉を閉めて出て行ってしまった。


 「⋯⋯どうするの?」


 困惑顔のイリスは、クロの顔を上目遣いに見る。


 「どうするもなにも⋯⋯」


 器の中の焼き菓子達を見て二人が顔を見合わせると、同時にごくりと喉を鳴らした。


 「食べて、良いの?」


 「いいんだろ? 差し入れなんだし!」


 いただきます、合わせた手を解き、彼女達はその焼き菓子を一つ手に取って、一口齧る。


 外側のサクサクとしたパイ生地の食感の後に芳醇なバターの香りが鼻を突き抜け、二口、三口と食べ進めると、濃厚な苺のジャムの甘酸っぱさが口の中で絡み合い、絶妙なハーモニーを生み出す。


 クロとイリスは顔を綻ばせ、目を輝かせると、その尻尾を膨らませ、ピンと天高く突き上げる。


 「「うんまぁ〜!」」


 あれも、これも、と手を伸ばし口へ運ぶと、二人の目の前にあった菓子は、あっという間に胃袋の中へと消えてしまった。


 「「ふぅ⋯⋯」」


 ご馳走様でした、と再び手を合わせた彼女たちは、暫くその余韻に浸り、感想を言い合っていたが、ふとネメアの事を思い出した。


 「いけね! イリス、歩けるか?」


 「へーき」


 早く行こう、と促してイリスが先にベッドから立ち上がるが、その足取りはふらふらと覚束無い様子だった。


 「平気じゃないだろ。無理すんなよ。ほら、手ぇ貸してみろ」


 「あっ」


 何かを言おうと口を、もごもごと動かす彼女の手を問答無用で握り、クロは医務室を出た。


 一度来た場所な事もあって、すんなりと格納庫まで辿り着いた彼女たちを待ち受けていたのは、重い鉄扉の奥で頬をぱんぱんに膨らませたネメアだった。

 彼女は暫く咀嚼をしていたが、やがて、ごくんと口いっぱいの物を飲み込んで、クロ達を改めて迎えた。


 「さっきまでレミ様が来ていてね、ありがたくお菓子を頂戴していた所さ」


 「それ、わたしたちも貰った」


 イリスの言葉にクロがこくこくと頷いた。


 「おや、そうだったのかい? いやぁ、絶品だったね。うん。まあ、お礼は後にするとして、キミ達を呼び出した頼み事についてなのだけれど⋯⋯」


 神妙な顔をする二人に、ネメアは彼女達の空いている手を取ると、細長い棒状の物を手渡した。


 「これは?」


 手にある棒の先についた糸と鋭く太い針をまじまじと見つめ、疑問を呈したクロへ、ネメアが指を立てて答える。


 「それはね、見ての通り釣り竿さ」


 「いやいや。なんで釣り竿!?」


 「実はね、今回の儀式、相当荒れてしまっただろう? 何処かの誰かが大暴れしたからね。うん。さて、そこで『今回の浄化の儀は上手く行ったのか』という五王様達からの苦言(クレーム)が出てしまったね。そこで、ここから少し離れた場所にある湖の調査を兼ねて、食材を手に入れてきてもらいたいんだ」


 「それは分かるが、イリスはあんな事件に巻き込まれてまだ一晩しか⋯⋯」


 経ってないんだぞ、と言うクロの言葉を遮って、ネメアが彼女を指差した。


 「そこでクロ君、キミの出番さ。今回、キミのディピスも手酷くやられたからね。そのメンテナンスも兼ねて、キミが操縦して現場に行くんだ」


 「わたしは?」


 「イリス君はクロ君のディピスに一緒に乗って、行動してもらいたいんだ。と言うのも、魔王教徒を捕らえたのはクロ君だからね。あんな街中で見られてたわけだし、いつ狙われるとも限らないからね、万全を期して二人一組での行動をしてもらいたいんだ。丁度、仲も改善されたみたいだしね」


 二人のつながれ放しの手を見たネメアは、顔をほころばせてそう言った。


 「分かった。クロ、守る」


 ふんす、と息を吐いてすっかりやる気になったイリスに、ネメアが一つ頷く。


 「そうと決まれば早速⋯⋯と。同じものがディピスの背中のバックパックに入っているからね。あとは乗り込んでもらうだけで構わないよ」


 二人の手から竿を取り上げたネメアの言葉に頷いて、クロとイリスは開かれた操縦席の中へと飛び乗る。


 「せまっ!」


 元々、個人での操縦しか想定されていないため、小柄な二人でも、中は身動きも取れないほど空間が狭い。

 結局、イリスがクロの膝の上に乗り、彼女をを抱きかかえるような形で左右の魔石に触れ、何とかディピスを動かせる態勢になった。


 「ち、近い⋯⋯」


 ふんわりと香るイリスの甘い香りに、クロは目が眩みそうになるが、呼吸を止めて魔力の操作と、目の前に置かれた地図の確認に全神経を集中させることで、頭の中の煩悩を振り払った。




 フューリーを後にした彼女たちだったが、ふと頭上でちりんちりんと音を鳴らすクロに、イリスは上体を反らして彼女のチョーカーを見て、首をかしげた。


 「クロ、それ、つけてた?」


 「え?ああ、これか? えーと⋯⋯あ、ネメアに買ってもらったんだよ。露店で気に入ってな」


 「ずるい」


 「え?」


 「わたしも欲しい!」


 強く後ろにもたれかかったイリスの後頭部が、クロの鼻先を強打する。


 「「ぁ痛ったぁ!」」


 鼻を摩りつつ、クロはディピスの足を一旦止めて、イリスの頭を優しく撫でる。


 「おい大丈夫か!? 痛かっただろう?」


 「ごめん、クロこそへーき?」


 「ああ、俺⋯⋯じゃない、私は頑丈だからな」


 「クロ、自分のこと“俺”っていうの?」


 「へぁ!? あ、いや、その、騎士団の生活が長くてな⋯⋯」


 「クロ、ずっと騎士団にいたの?」


 頭の中で上手く話しを考えようと、しどろもどろとしながらも、ディピスを再び歩かせたクロは、身の上を語って行く。


 「ああ、今から十年以上も前の話なんだが、故郷の村が魔物の侵攻を防げず、やられてな。私は丁度狩に出ていて無事だったんだが⋯⋯今でも皆の悲鳴や血の匂い、魔物の唸り声が頭から離れないんだ⋯⋯」


 クロの震える手に、イリスの小さな手が優しく重なる。


 「クロ⋯⋯?」


 「ああ、悪い。少し熱くなってた⋯⋯そこからは騎士団に拾われて、ずっと男だらけの環境にいたせいもあって、こんな口調になっちまったとさ。まあ、こんな時勢だし、よくある話なんだけどな」


 少し冷静になったクロが、少女の身体へと変貌した経緯を適当に誤魔化してそう言うと、イリスが改めてクロの目を見つめた。


 「辛い時は教えて。今度はわたしが助けるから」


 「イリス⋯⋯。ありがとな」


 再びディピスの足を止めて、くしくしと彼女の頭を撫でて顔を上げると、いつの間にか森の中の開けた場所にある、キラキラと輝く大きな湖へと辿り着いていた。


 「ここが、そうなの?」


 「ああ。地図の通りなら間違いないはずだ」


 「じゃあ、降りる?」


 ああ。と頷いたクロが、操縦席の扉を開け、イリスが先にトンと軽やかに着地を決め、それに続いてクロも機体から飛び降りた。


 「なんか⋯⋯良い場所だな。瘴気も今のところ確認出来てないし」


 クロの人間だった頃よりも遥かに鋭敏になった嗅覚と聴覚が、湿った木の香りや時折吹く風に揺れる木の葉の音を拾い上げた。


 すんすんと鼻を鳴らしたイリスも、同意して頷いた。


「うん。⋯⋯あっ」


 ハッとした彼女は、ディピスの元へぱたぱたと走って戻ると、その手の上から道具一式を持ち、クロに手渡した。


 「道具、置いてあった」


 「ん、ああ。悪いな。ありがとう」


 クロは渡された器の中にある餌の塊に湖の水を少し加えて、手で掻き回して良く練り混ぜていく。

 数分ほど掻き回した後に、湖に手を入れて洗うと、落ちたエサを小魚達が寄ってきてパクパクと口を広げて食べる。


 それを見た彼女は腰に手を当てて頷いた。


 「よし、もう良さそうかな」


 「できたの?」


 「ああ。先にやっていいぞ」


 イリスはそれを受け取って、竿の先端から伸びる糸に括り付けられた針に小さなワームの刺されたそれを、なるべく遠くへと投げるべく、大きく振りかぶって竿を振る。


 次に丸めた団子を、針のある部分目がけて「えい」と小さく声を出して投げ込む。


 「あ、くずれた⋯⋯」


 水面がばしゃばしゃと音を立てていくつかの波紋が生まれて消える様子に、イリスはしゅんと肩を落とした。

 その肩をクロが優しく叩く。


 「はは、大丈夫だ。失敗じゃないぞ。ほら、少し見えにくいけど、水中に煙みたいにエサが崩れてるだろ?あれで魚を集めるんだ」


 クロが湖の中を指差すと、イリスにも水中か、煙のように立ち上る茶色いモヤのようなものが確認できた。


 「そうなんだ。どうすれば良い?」


 「後は待つだけだ。時々この玉を針の投げ込んである場所に投げてな」


 そう言って、クロもイリスの横に並び立ち、先程と同様に湖へ仕掛けを投げ込み、糸を垂らして待った。


 時折二人と水面を撫でる心地よい風と、木の葉の擦れ合う落とした、そして温かな陽の光に包まれ、二人の中に穏やかな時間が流れる。


 くぁ、と小さく口を開けて欠伸をするイリスに向かい、クロは意を決したように口を開いた。


 「その、さ。街に着いた時、私の事、あんなに嫌ってたんだ?」


 「なんていうか、あなた、たいちょーと似過ぎてるから⋯⋯」


 「そうか?」


 困ったような笑みを浮かべて、クロが自身の右後頭部を撫でるように掻くと、イリスが彼女を指さした。


 「それとか」


 「いやいや、こんな癖、誰でもやるだろ?」


 「そうだけど、なんか、似てる」


 「そう言われてもなぁ。それで、私が似てると何かあるのか?」


 少し言いづらそうに、顔を下へ向けると、イリスは頬をほんのりと朱に染めた。


 「あなたのこと、認めたら、たいちょーが居なくなっちゃう気がして⋯⋯」


 「そうか。だからか」


 ふとした拍子に、イリスの機嫌が悪くなっていたのはそれが理由か、と事情を察したクロは頷いた。


 「けど、たいちょーは生きてるよね、メイメツに乗って、人を助けてるんだよね⋯⋯?」


 未だ確信が持てずにいるのか、不安そうに目を右往左往とさせ、同意を欲するようにクロを見つめる。


 「イリス⋯⋯俺は⋯⋯」


 その震える目を見ていられなかったクロは、自身の経緯を彼女へと伝えようと口を開きかけたその時、クロの手に握られている竿の先が大きなしなりを見せた。


 「うおぁっ!?」


 魔力を纏ったクロの腕力ですら魚の引く力に負け、ずるずると湖面へと引っ張られる様子を見て、イリスが目を見開く。


 「みゃっ!? クロ、助ける!」


 イリスは手に持った竿を放り投げ、その身に魔力を纏い、踏ん張るクロの腰を掴んで後ろへと引っ張る事によって力が拮抗(きっこう)し、クロの移動が止まる。


 「くぉぉぉんのぉぉぉおお!!」


 しばしの間、魚との根比べをしていたクロが声を張り上げ、竿を力一杯肩の後ろへと引っ張り上げると、湖面が大きく盛り上がる。


 勢い良く外へと放り出された全長三メートルはあろうかと思われる巨大なナマズが、二人に水飛沫(しぶき)を飛ばしながら地上へと飛び出した。


 「「みゃああああっ!?」」


 二人は揃って首をぶるぶると左右に振って、その水気を飛ばし、お互いを見つめ合う。

 

 それは緊張感から解放された喜びか達成感か。同じ感情を分かち合い、どちらからともなく吹き出した。


 「「ぷっ、ふふ、あっはははははは!!」」




 一頻(ひとしき)り笑い合った彼女達は、改めて釣り上げた、未だに、びちんびちんとその生命力を主張するかのように跳ねる巨大なナマズの姿を見つめる。


 「イリス。枝を集めてきてくれないか?ほら、服もびしゃびしゃだし、とにかく乾かそうぜ?」


 「クロは?」


 「このまま持ち帰るわけにも行かないし、ここで捌いてくわ」


 「一人でへーき?」


 「大丈夫だって。それにほら、イリスは血が苦手だろ?」


 「え?なんでしってるの?」


 「なんで? ⋯⋯⋯⋯あ、あぁ、いや、ネメアに聞いたんだよ! イリスはなんで狙撃手(スナイパー)やってるのかって。そしたらイリスが血が苦手だって聞いてさ」


 「そう、なんだ」


 「そんなわけで、ここは任せてくれよ。丁度腹も減ったし、火を起こして、炙って少し食べてみようぜ」


 「ん。分かった、すぐひろってくる」


 イリスはこくんと頷いて、森の中へと消えて行った。


 「はぁ。いつかちゃんと⋯⋯言えるのかな」


 彼女の尻尾が見えなくなるまで見届けた先で、クロは自分の手のひらをじっと見つめ、そう呟くのだった。

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