モレノ
オリンピックってやるんですかね?……という話より、オリンピックってやれるんですかね?という気持ちです。(個人の意見)
「お前ってサッカー詳しいのか?」
多くの国々で行われているスポーツと言えば、サッカーが来るだろう。
ただ細かいルールやテクニックなど知らず、球をゴールに運ぶ程度の知識がない王來星は尋ねた。
「いいや、まったく。スポーツには興味ないですよ」
「ならスタジアムに来るな。ボディガードの身になれ」
尋ねられた男。伊賀吉峰は国を裏から操る重鎮。しかし、その国とは日本ではあらず。
今、このサッカースタジアムでは世界各国のクラブチームが集まって、サッカーの最強チームを決めようとしていた。世界のサッカーファン達が詰めかけた中で、サッカーに興味ない連中がいるのは不思議なものだ。
もう一人のボディガードの、陳九千は訊く。
「世界チームが集まるサッカー試合を観に来たわけを教えてくださいよ。観客に紛れて、暗殺者がいてもおかしくないですよ」
「はははは、陳くんと王くんが命を張って守ってくれると信じてますよ」
「サッカーの観戦をしに来て、弾避けになるつもりはねぇ。これ終わったら、世界のやべぇ奴等と会談するんだろ」
盛り上がる観客達を他所に、伊賀はこの試合だけでなく。この大会そのものの意義を教えた。
「これは私達と似た連中のお披露目会ですよ」
「お披露目会?」
「アジアチームの代表、FWの方。彼はクローン人間です。本物は1週間前に始末しました」
「は……」
「ヨーロッパチームの代表、GKの方。彼も偽物ですが、目と脳を改造して、選手達がボールを蹴る前に飛んでくるコースを予測し、動けるように改造してあります」
まぁ、他色々と……あるわけだが。よーするに。
「各国の改造人間のお披露目会ってわけか」
「サポーターにも気付かないくらい精巧にしてますよ。この後に会う方々にも良いお話ができそうです」
この大会に向けての努力、チームワーク。大いに結構。それと同じ以上に、人々をテストしている伊賀達。それは選手達だけではない。
「あ、倒された……って、なんか凄いブーイング……」
ボールの奪い合いには、激しい当たりが多い。しかし、そのぶつかり合いが危険となれば、ファール。イエローカード。レッドカードまで……。
前半開始から32分。事件が起こる。
ピピーーー
これまでと同じようなぶつかり方。一方で見れば、ファール程度かに思えたが。主審が告げたのは
「レッドカード!」
「!?お、おい!?なんで俺がレッドカードなんだよ!!ちょっとぶつかっただけだぜ!!」
「ちゃんと見ろよ!!さっきからこっちが不利な判定を出しやがって!!」
「………………」
スタジアムが揺れるのも無理はない。そして、ルールを知らない王と陳にもすぐに理解できる異常さ。すぐに伊賀の方に顔を向ける。
「ああ。彼、……ていうか、審判団は買収してます。我々が勝たせたいチームに有利な判定をしていただければ、たったの5億ドルのご提供で……」
「そんなことまでしてんのか」
「スポーツなんて審判買収すりゃあ、日ごろの努力なんて要らないんですよ」
「でも、伊賀。そんなことにまで金出していいの?ただのスポーツなのに」
「買収工作のノウハウもご提供材料ですから。それに5億ドルもちゃんと払うと思います?ちゃんと使わせると思います?3年後には、彼等を暗殺か刑務所に行かせるように工作もしてます」
サッカーに興味ない奴がとんでもねぇ事やってる……。とはいえ、こんな異常が起こればこのスタジアムにいる人間だけでなく、リアルタイムで見ている人間にとっては不自然と思われるだろう。
まぁ、そっちが大きく広まった方が改造人間だの、クローン人間だのに疑問を持たないだろう。それにそーいうのとは別。世界が注目するからこそ、これから未来を支配する者にとっては見てみたいものがある。
そして、支配するからこそ。自分達は影や闇に隠れてそれを作り出さなきゃいけない。
もし、試合が。見ている人達にとって、勝って欲しくないチームが勝ったとしたら。
「世界のマスメディアはある程度、抑えています。予行演習と想定できる事は、戦争よりスポーツがいいでしょ?」
「……不利な映像も、記録も見せないのか」
「発信手段。知る術も断たせる。戦争って情報戦ですから。できること、できないこと。……子分に調べてもらった方がいいでしょ。切り離すのも簡単」
「親玉は金だけって……酷い話~」
「はははは。良いところを奪うのが、親です。悪いところを継いでもらうのが、子供ですよ」
試合は……。予想通り、前半に1人を失った状態で戦ったチームが敗れてしまった。そーいう展開になるだろうと、分かっていた者がいれば。なんだこの試合は!?と、憤慨する人達もいるだろう。
世界中でこの試合を観ていた者達は多い。
だが。それよりも観ていない者や興味のない者は大勢だ。
画面は綺麗な試合の場面を映し、音声は叫び、テロップは輝く。それだけでコロっと信じるし、褒めてしまうものだ。
【歴史的勝利だ!!勇敢な選手達が2-0で王者を倒した!!】
結果だけを語り、結果だけで判断するのがこれからの正しい民の在り方だ。
そして、試合とは過ぎ去れば栄光だけが残るだろう。勝者だけが刻まれるものだろう。
過程を覚えていられる者なんて、当事者でなければ難しいものではあるが……。
「ふむ、最近の人達は賢くなりましたねぇ。少し嬉しいですよ。支配するなら、優秀な人がいい」
語り継がれる事もある。伊賀が思っていた期間よりも語られた。
予想以上の反響が起こり、これからの戦争……主に情報戦に役立つものをこれで得られた。使えないところは切り捨てちゃおう。育てるところは育てよう。しっかりとした報道機関を作らなければ。
あのサッカー大会から4か月後、勝者よりも酷い批難を浴びる者がおり、その始末を王に依頼していた伊賀。
その報告が来た。
「伊賀。例の審判団は全員始末しといた。反感を持ってる奴等の犯行にしたり、自殺に見せかけておいたぞ。買収した金の7割は回収した」
「ご苦労様です。……じゃあ、そのお金で……」
「国の警察と裁判所も買収しといた。あの出来事の八百長を知る人間も、知ろうとする人間ももう現れない」
「さっすが。お仕事がはや~い」
森さんを庇うつもりはないんですけど。
なんか最近、発言でめっちゃ叩かれてるんで。こーいう短編書いたんです。タイトルは、元ネタからです。
別に森さんの事は好きじゃないんですけど。悪い人っぽい印象でしたし。騒動になった一言がテレビで流れたのを見たんですけど、自分も他の短編で上司の話がなげぇとか愚痴ってた身だから、それ叩かれるほどの発言?っていう感じなんですよね……人によるし、森さんだって話長そうとか思った。
その後に流れた、記者とのやり取りもまた印象的で。森さんの逆質問も良くはないけど(でも、そこは逆質問だよな)、それ以上に記者の意見が世間の意見って感じで流すのは良くないなー、との印象……。それから始めて、また色々と揚げ足取ってるなー……。
そーいうのが記者のお仕事なんだと思いますけど。もーちょっと、エプスタインくらいのネタが出て来るだの、持ってくればいいのになーっという。発言一つで世界がワーワー言うなら、エプスタインやらハンターさんとかどーなんだ?ある意味、盛り上がってたけどさ。
まー、その。差別発言とかは、ここで流すとして。
オリンピックは厳しいよなーと。日本はやりたいにしても、世界がやれる状況じゃないっていう。理由もしゃあないし、ほとんど納得できると思うんですけど。なんか、森さんの騒動を見てると。森さんがそーいう人だからオリンピックはできないんだーって感じに思えるんですけどね。
いや、森さんのどーのこーのよりも。世界の情勢が不安定過ぎるからだし。開催するにしても、無観客とか選手の調整不足やら、外国人の往来やら……課題山積みであと半年で開催できるとは思えないんですよね。
開催出来たら、八百長を疑うレベルかな。そーいや、基準値が変わったんだっけ?奇跡の開催ってのも、良いかと思うんですけど。やらせの開催とか、思われないようになって欲しいものです。
いちお、開催して欲しくないって思ってるわけじゃないですよ。開催するなら、やっぱり安全や楽しめる環境を確保してからって意味です。今年やるのは厳しいから、時期をずらして見るとか、しょうがないけど無観客でやるとか。……まぁ、無観客でやって、こんな短編みたいな事が試合中に行われたら、誰も気付けないよなー……。観客って買収できない監視の目にもなるので。