表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/54

08

 私は前世を思い出す前のアイリーンを別人と思ってはいる。事実、私という異分子によりこの世界の元々のアイリーンの人格は私に統合されてしまった。だけど、その話を知っているのは私だけだ。他者に実は私はアイリーンじゃないと言ったところで信用なんてされない。そもそも、転生という話自体は荒唐無稽。だから、私は別人だと認識はしているけれど、アイリーンとして覚醒した以上、自分のしでかしたことだとも思っている。矛盾しているとわかっていて。


「王女……」


「私は、この国を守る者の一人です。例え子どもだからと言って、上に立つ者が権力を振りかざして他者を蔑にするようなことはしてはならなかったのです」



 ギルベルトをまっすぐに見据え、今の私はもうあの愚かなアイリーンではないことを証明するべく話を続ける。国民を守る王族としての覚悟も、その責任の重さも今の私はちゃんと理解していることを知ってもらいたいから。


「アイリーン王女殿下、これまでの不敬を、どうぞお許しください。あなた様はこの国に必要な人間として変わられた」


「よいのです。私は己の父にすら従えぬ無能の塊だったのです。今は忠言をしてくれる者の大切さを、よくわかっています」


ギルベルトが深く頭を下げて不敬を詫びた。確かに今の会話は例え子どもだとしても王族相手にしていい会話ではない。それをわかっていて、私がどんな人かを試すためにこの人はギリギリの危ない橋を渡ったのだ。


「王女、本来のあなたは大変聡明でいらっしゃるのですね」


二人で話をしていて、初めて笑顔を見た気がした。



 不敬を詫びた後のギルベルトは、少年の表情を浮かべて、アレックスとはまた違った系統の話をしてくれた。話し方も二人だけなら砕けた言葉に変わり、アレックスのような良き話し相手となりそうだった。


「アイリーン王女殿下。実はちょっとお伝えしたいことがありまして……」


「なんでしょうか、ギルベルト様」


突然、真剣な表情になった彼は誰にも聞こえないようにそっと、私に耳打ちをした。


「聡明であるアイリーン王女殿下なら、もう把握されているかもしれませんが……。王宮内の派閥にご注意ください。侍女、侍従の派閥は要らぬものを引き込む可能性があります」


「派閥……。わかりました、忠告、感謝します」


私にとって、その派閥という内容は今まで考えていなかった、新しい視点の話だった。確かに貴族家系がいくつもあればその分だけ思想も増える。国王の言葉がすべて、なんていう貴族もいるにはいるけれど、そうじゃない貴族だっている。当たり前のことだ。


 その派閥という視点をくれた彼は、サーシェス侯爵が迎えに来たので去っていった。私は会った後から注意深く王宮勤めをする侍女や侍従たちを観察するようになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ