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 だんだんと難しくなる授業、厳しくなるマナー指導、必死で食らいついてもう数年がたった。筋肉もある程度ついた、それでいてスリムな体形になった私は、今まで着ていたドレスのサイズを変えた。前世を思い出す前のアイリーンが好きだったデザインのドレスも、子どもらしさを残しながらも少し大人びて見えるドレスに変えてもらい、色もピンクが多い物から寒色系を増やしてもらった。


「お初にお目にかかります。アレクシス・セルフォンスにございます」


「アイリーン・レインヴェルクです」


 サイズもデザインも何もかも新調したドレスを身にまとい、今はサンルームで近い年齢のアレクシス・セルフォンスと会っている。彼はゲーム上でのアイリーンの婚約者筆頭候補だ。セルフォンス公爵に連れられてやってきた彼のことを、前世で買った公式ファンブックに記載されていることだけなら知っている。


「これからアレクシスは婚約者候補だ。二人とも、この国を導けるように精進なさい」


控えていた父が私たちにそう声をかけた。アレクシスの表情は無表情、というよりはちょっと機嫌が悪そうだ。もしや私の醜聞が……?と不安に思ったけれど、彼はゲームでも誤解されやすいと言われていて、いつも眉間にしわを寄せているともファンブックにあったので、多分、醜聞ではないだろうと思う。



 父とセルフォンス公爵は別の話があるのか、サンルームを出ていき、私とアレクシス、侍女と近衛のみの空間が出来上がった。正直、気まずい。


「アイリーン王女、近年とある領地の農作物の出来高が芳しくないのはご存じでしょうか」


気まずいし、何を話せばいいのかわからなくて、黙っているとアレクシスが話題を提供してくれた。その話題がまさかの政治に繋がる情勢の話題で、一瞬だけ思考が停止したのは言うまでもない。



 私、もしかして試されてる?なんて思う。これは本当に私の悪の所業が伝わっていて父や公爵、アレクシスはグルで私を試そうとしている?と。この国を背負う、代表する王族なのか、アレクシス自身の婚約者に相応しいのか、私を見定めているのではないかと思う。


もしも、そうであるならば、下手な回答はできない。アレクシスと私はそんなに年齢が離れておらず、二歳差だ。彼はセルフォンス公爵家の跡取りだから、きっと私よりもずっと厳しい教育を受けて育ったはず。そんな彼に私は王女としての姿を見せられるだろうか。いや、見せなければならない。


「ええ、存じております。南の地方では農作物の伝染病で育たないと聞いております。その代わりに別のものを栽培しているとも」


偶然にも昨日、勉強した部分を話の題材にしてくれたおかげで話についていけない、みたいな醜態をさらすことにはならなかった。本当に偶然で、この部分の勉強をしていなかったら答えられなかった。


「さすがです、王女様。博識でいらっしゃる」


「国を守る一人として、国を治める者の血族として必要な知識ですから」


 完璧な返答に我ながらドヤ顔をしそうになった。でも彼に、この程度答えられて当たり前だから、と思われても嫌だったので真剣な顔で取り繕った。


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