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02

「っ……、頭がいた、い……」


 おそらく夢の内容が幼いアイリーンだった自分にとってショックであったことと、前世を思い出したことによるキャパシティオーバーで現在私は高熱を出していた。


「アイリーン様、お粥は食べられますか?」


「……ごめんなさい、ごめん、なさい……」


自分の世話をしてくれている侍女は、高熱を出して苦しんでいる私に優しく寄り添ってくれる。あれだけ前世を思い出す前とはいえ、ひどいことをしたのに。


「アイリーン様……?」


「れいら、ごめんなさい……」


侍女、レイラに謝罪を繰り返す。いたずらのつもりでアイリーンはレイラの髪を引っ張ったりしたし、食事だけじゃなく身の回りの世話をしてくれる彼女に当たり散らしたりと散々だった。前世を思い出した今なら言える。最低の称号をプレイヤーから与えられるだけあって、仕事だとしても関わるのをやめたくなる嫌な幼女だと。しかも悪意しかないことをしでかす幼女、嫌がらずに世話をしてくれたレイラのありがたみを知らないアイリーンの酷さが余計に浮彫りで。 高熱で魘される私の額に冷たいタオルをぺたりと載せ、うっすらと目を開けると困ったような表情でこちらを見るレイラがいた。


「アイリーン様、お医者様です」


高熱に三日三晩苦しんだ私は、レイラが呼んでくれた医者に診察されて、無事に快復したと告げられた。熱から快復して数日は食事も胃に優しいものだったり、定期的に医者に診察を受けたりと、軽い病人扱いではあったが、それらを終えれば私の身体は軽くなりしんどさもなくなった。



 そして、私は決めた。


「レイラ、今までごめんなさい。わたし、たくさんひどいことをしました……」


「アイリーン様、レイラはアイリーン様を信じております」


「あ……、ありがとう……っ」


まず、レイラに謝ることだった。いつも彼女を困らせて、迷惑ばかりかけていたから。優しくアイリーン様と呼んでくれるレイラは信じていると言った。それはきっと私がこんないたずらや酷いことをする人間から変われると思っていたことを伝えてくれたのだと思う。幼女なのに悪いことばかりに頭が回る、最低な子どもだったけれど、それでも私を怒らない彼女に返せるものがあるのだとすれば。きっとそれは私が王女としてまともな、立派な王族になることだろう。


「アイリーン様、無理はなさらぬよう……」


「ありがとう、気を付けます」


 今日から王族に必須のマナーや勉強が再開されるとあって、レイラは心配そうに無理はしないでと伝えてくれる。病み上がりではあるものの、もう完全に元気になったので私はレイラに見送られながら教師のいる部屋まで向かった。



前の私は本当に悪意の塊だったらしく、授業は真面目に受けない、マナー講習なんて自分には必要ないとマナーの教師から逃げ回り、各科目を受け持つ教師たちを困らせることが多かった。私はそれを高熱にうなされている間にアイリーンの記憶を見て知っていた。王族たるもの、簡単に人に頭を下げてはならないとはよく言うが、雇われているとはいえ自分に一生懸命に何かを教えてくれる人に対して謝罪がないのはよくない。



 王族である前に一人の人間として、私はその日から会う勉強を担当してくれる家庭教師の先生方とマナーの先生、一人ひとりにきちんと謝罪をした。これからは真面目に取り組むことを伝え、これからも教えてほしいことを伝えた。








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