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「おはようございます、アイリーン様」


「おはよう、レイラ」


「本日のご予定をお知らせいたします」


「ええ、お願い」


 昨日は考え事をしながら横になっていたら、いつの間にか寝ていたらしく朝だった。レイラが来たタイミングでベッドから起き上がり、絨毯の上へ足を下す。ふわりとした肌触りが心地いいが、朝の支度があるのであまり悠長にベッドに腰を掛けている暇はない。


「ありがとう、レイラ」


「では、朝食をお持ちいたします」


今日の予定を、ある程度は把握しているが急に入る予定もあるので一応、毎朝こうして確認している。記憶を思い出して一年ほどのころからやっているのでもう数年のルーティンみたいなものだ。


 食事が用意され、誰も見ていないからと言ってマナーに手を抜くつもりはないので、丁寧に食し、食後の紅茶を飲む。前までは甘い飲み物ばかりだったが、前世を思い出したら甘いジュースばかり飲めなくなった。それも紅茶に砂糖とミルクをドバドバ入れていたようだけど、私はストレートが好きだ。


普段甘くしないから、たまに飲む甘さがちょうどいい。レイラにも当初は驚かれたものだ。



「失礼いたします、アイリーン様。明日から急ではありますが、一か月ほど休暇をいただくことになりました。その間は、別の侍女が専属としておそばに控えるようになります」


「ずっとお休みもなしにわたくしの側にいてくれたものね……。一か月間、ゆっくり休んで」


「もったいなきお言葉にございます。また一か月後に戻ることにはなっておりますが、何かありましたらすぐにご連絡くださいませ」


「ありがとう、心強いわ」


 ずっと面倒を見てくれていたレイラが明日から一か月もいない。本当は嫌だと叫びたいが、彼女は前世が戻る前も戻ってからも、休みなく私の世話をしてくれている。前世だったら労働基準に違反するレベルの勤務形態である。


誰も昔のアイリーンの世話はやりたがらなかった、レイラは優しいからどんな仕事も嫌がらずにやっている理由もあって押し付けられた可能性はある。そこへ前世の私が融合してまともになったら、今度は別の意味で休みがなくなった。


「私、ブラック企業の社長みたいになってるじゃないの……」


とにかく、私のせいで休みが取れていないから、ゆっくり休んできてほしい。なんならレイラがいない間にもう一人専属侍女を育成していもいい。そうすれば負担は減るはずだ。



「さて、その件はまず置いておいて……。これはなかなかに対応に悩むわね……、半分は私が原因みたいなものじゃない……」


 レイラがいない間に双子の侍女から届いた報告書に目を通す。思ったよりも詳しく書かれていたそれらには、専属護衛の近衛騎士二名からの報告も追加で書かれていて、事態はより深刻。


日常的に暴力があるわけではないけれど、勉強の進捗状況やテストでの結果、魔法関係の学習進度が自分の思った通りにならないと双子に当たり散らしているようだ。食事を抜いたり、夜遅くまで勉強をさせたり、王妃自らが監督してできなければ怒鳴るなど、結構な頻度であるみたい。


「皮肉ね……、守れる強さが欲しいと言っておきながら、自らが原因で誰かを苦しめているなんて」


 私が急に勉強ができるようになって、マナーも完璧になって、まともな王女になった。後妻としてやってきた王妃が産む子どもにも王妃にもプレッシャーはかかる。次の子は優秀かどうか、という意味で。私は自分のことに必死であとのことを考えていなかった。


でもこれは、言い訳に過ぎないと、そう私はわかっている。



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