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「ようこそおいでくださりました、レオンハルト皇太子殿下」


「こちらこそ、視察という機会をいただけて嬉しいです。アイリーン王女殿下」


 胃がキリキリと雑巾絞りでされているかのような嫌な痛みを抱えて晩餐会に参加、無事に何事もなく終了し、翌日の視察に同行する公務を迎えた。


「こちらでは王城図書館にある蔵書を管理する文官たちが働いています。蔵書数は王都にある王立図書館よりも少ないですが、その分だけ貴重な古書が多いです」


視察の同行に加えて、私は各施設のちょっとした紹介を仰せつかっている。王城図書館と王立図書館、王立魔法学院の大まかな説明をした後はその施設に勤務する代表者に話を繋げるのが仕事だ。


「なるほど、規模はこちらのほうが小さいのか……」


この公務が決まった時から、私は父と各施設の代表者に許可を取って、施設概要を確認したりしていた。王立図書館、王立魔法学院に至っては王宮にはない施設でもあることから、私自身、初めて知ることが多かった。


「このあたりにある本は、いわゆる古書に分類されているもので、魔法分野から歴史分野まで、ありとあらゆるものがあります」


 私が昨日見ていた棚の本も紹介する。あらかじめ紹介してほしくない場所はないか確認をしているので、問題ない範囲での紹介だ。



「お昼休憩をはさんで、次は王立図書館に向かいます。そちらはまた違った趣があって、素晴らしい施設です」


「楽しみだな、そんなに素敵な施設とは。この目で早く見たいな」


「王城からは離れていますが、街並みも見られますので。そちらもぜひ……」


「ああ、もちろんだ」


レオンハルト皇太子殿下が疑問に思ったことは直接、その仕事をしている人に聞いてもらい、私はそばにいるだけ。正直、私がいる意味とは……?と思うこともあったけれど、他国の皇族を一人でまわらせるわけにはいかない。せめて同じ王族に連なるものがいなければならない。


 彼と別れて一度自室に戻り、レイラに出迎えられる。思わず疲れたとこぼしそうにはなかったが何も言うまい、と口を閉ざす。どこで誰が聞いているかもわからないし。


「レイラ、あと一時間ほどしたらまた出発します」


「かしこまりました、お気をつけて行ってらっしゃいませ」


「ええ、ありがとう」


自室に運ばれた昼食をしっかりと食べ、王立図書館のほうに一緒に向かう。道中も様々な話題を提供してくれたレオンハルト皇太子殿下のおかげで暇になるだとか、気まずい雰囲気だとかはなかった。


「こちらが王立図書館です。王城図書館よりも蔵書数が多いので、その分だけ広いです。この図書館は身分の貴賤に関係なく誰でも利用することができることが特徴です」


 王立図書館は広く開放されているので、貴族平民関係なく利用ができる。身分というのはこの図書館では問われない。王城図書館は残念ながら貴重な蔵書が多く収められていることもあって王城勤めをしている人間、王族しか利用ができない。


「うん、またこちらも素敵な建物だ。蔵書数も先ほどより多いのがわかる」


またわからない点など、どんどん質問している皇太子殿下に、施設の代表者も真剣に応えている。私の時と同じだ。私もここに来た時にわからないことが多くて、あれこれと質問を重ねていた。それを嫌がらずに答えてくれたのが、今話している代表者だ。



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