第二話
わたくし、セラヴィタリアが伯爵家に引き取られたのはまだ7つの時だった。
わたくしの生みの親は最低な人間だったのだろうと、何の感情も湧かない思いで昔を思い返す。
そう、わたくしは本当の父親によって、伯爵家に売られたのだ。
父は、毎日酒に溺れて、母とわたくしに手を上げていた。
毎日繰り返される暴力に小さいながらも、母を庇おうとしたわたくしがいた。
だけど、母はある日わたくしを捨てて逃げたのだ。
毎日繰り返される暴力に耐えられなくなった母は、わたくしを一人残し、男と一緒に逃げたのだ。
残されたわたくしは、それからは今までの倍、父に殴られ、蹴られ、暴力の限りを尽くされた。
父は、暴力を振るいながらわたくしに酒を買って来いと喚き散らした。
母親の稼ぎで何とか食いつないでいた我が家には、そんなお金などなかった。
だからわたくしは父に言ったわ。
「うちに……、そんな物買う、金なんてない……」
わたくしがそう言うと、父親は猛烈に怒り更にわたくしを殴って気を晴らした。
ぼろ雑巾のようになったわたくしを見た父は、いいことを思いついたとばかりに急にわたくしの怪我の手当てをし出したわ。
そして、怪我がよくなった時、わたくしに言ったの。
「お前がようやく役立つ時が来たぞ!!喜べ!これでいつもの安酒じゃなくいい酒が毎日飲める!!」
そう言って、喜ぶ父に何の感情の湧かないわたくしは死んだ魚のような暗い目でただ父の顔を見ていた。
すると、父は言ったのだ。
「お貴族様が、お前を高値で買ってくれることになった」
そう言ったのだ。
わたくしは、自分で言うのもなんだけど、とても美しい容姿をしていた。
青く透き通った水を思させる淡いブルーの髪に珍しい紫色の瞳、全体的に小づくりな顔のパーツが並んでて、それなりに身なりを整えれば貴族の令嬢だといっても疑われないほどの容姿だった。
物好きな貴族もいたものだと思いつつも、わたくしは大人しく売られていった。
だって、今味わっている地獄よりも地獄なんてないと、この時は思っていたのだから……。