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闇の悪役令嬢は愛されすぎる  作者: 葵川 真衣
光の王太子殿下は不憫すぎる

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14.心臓に悪い


「少し庭園を歩こうか」

 

 ダンス後、アドレーにそう言われ、クリスティンは彼と大広間を出ることになった。

 春になれば、学園に入学する。

 ゲーム開始のときは迫っている。


(破滅を回避するため、入学後は今以上に気を付けないといけないわ)

 

 クリスティンがそう思っていると、アドレーが闇に目を凝らして、口を開いた。


「人影がみえる。誰だろう」


(?)


 一階の階段の影になっている場所に視線を移動させれば、確かに誰かいた。

 人目を憚るように、立っている。

 よくみれば、メルだった。


「メルですわ」


 貴族令嬢と思われる少女が彼の前にいて、二人は向き合っている。

 注目しつつ、アドレーとその近くを通り過ぎる。

 すると声が聞こえてきた。


「あなたに一目惚れをしてしまいましたの」


 令嬢はメルにそう告げていた。

 アドレーがクリスティンに小声で話した。


「告白のようだね」


(……そうみたい)

 

 メルはゲームで非攻略対象だったものの、プレイヤーに人気だった。

 そんなメルだけあって、モテるのだ。

 告白されているのを、クリスティンはこれまでも見かけたことがあったが、自分が知る限り、全部断っていた。

 今もメルは令嬢の告白を断った。

 

 アドレーは呟く。


「恋愛に興味がないのだろうか? 綺麗な少女だけども」


 のぞき見をしているみたいで、少々居心地が悪い。


「行きましょう、アドレー様」

「ああ」

 

 クリスティンはアドレーとその場から離れ、四阿まで歩いた。

 どこかぼんやりとしてしまいながら、アドレーと椅子に腰を下ろした。

 風がひんやりとしている。

 アドレーは脚を組んで、クリスティンに麗しい眼差しを向ける。


「この間は君を驚かせてしまったよね?」


(この間……)


 クリスティンは先日アドレーと湖に出掛け、追剥ぎに遭遇した。

 そのあと王宮で彼に抱きしめられて気を失い、目を覚ませば自室だったのだ。

 実際驚いた。


(途中から全然覚えてないし)


 クリスティンは追剥ぎより、アドレーのほうが恐ろしい。


「もう君を驚かせるようなことはしないよ」

 

 そうしてもらえると非常に助かる。


「はい」


 心臓に悪いことはやめてほしい。


「メルに伝言を頼んだけれど、彼から聞いてくれたかな」

「ええ、聞きましたわ」


 アドレーが謝っていたこと、過度に触れないと言っていたこと、この舞踏会を楽しみにしていることなどを聞いた。


(そういえば……)

 

 そのときメルは元気がなかったのである。

 彼が用意してくれたお茶菓子をとって、クリスティンは快復したが。 


 きっとクリスティンが追剥ぎと対峙したことで、心配を掛けてしまったのだ。

 いつもメルには世話になっていて、気苦労をかけて申し訳なく思う。


(今度、彼に休暇をとってもらって、充分リフレッシュしてもらわなきゃ)


「手に触れるくらいはいい?」

 

 アドレーはじっとクリスティンを見つめ、そう言った。


「え?」

「ダンスでも手を握ったよね?」


 アドレーはクリスティンの手に手を重ねた。


(ひっ)


 クリスティンは条件反射で震えてしまう。


「アドレー様……」

「私達は婚約者だ」


 後一年で婚約は解消となるのだ。

 彼はヒロインに恋をする。


(……ダンスよりはまだ密着していないわ……)

 

 と考え、クリスティンはなんとか耐える。

 だが肩は触れ合っているし、近い。

 じりじりと横に移動し、クリスティンは彼から離れることを秘かに試みた。


「少し前ね、おかしなことがあったんだ」

 

 アドレーはクリスティンの決死の努力の距離を、傍に座り直すことで、一瞬で無駄にした。

 クリスティンは青ざめる。


「……おかしなことですか?」


 これ以上横に移動すれば椅子から落下してしまう。


「そうなんだ」


 アドレーはふっと物憂げに前方を見る。


「学園内を歩いていたときにね、前から怪しげな人物が現れて」


(怪しげな人物……)


「学園内でですの?」

「ああ」


 王侯貴族が通う魔術学園には、怪しい人物などいないはずだが。


「その者が通りすがりに言った。君と私は結ばれない運命だと」

 

 その通りである。


「当たっていますわね!」

「いや、全く当たってなどいないよ……」 

 

 アドレーは強くかぶりを振る。


「私達は結ばれる運命だ」


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