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闇の悪役令嬢は愛されすぎる  作者: 葵川 真衣
第二章

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80/116

10.帝国から


 自分はタガが外れれば、暴走する。止められないと自覚している。

 

 結婚後であっても、ある程度は抑える必要があると思うくらい危ないのだ。

 彼女を壊してしまうかもしれない。

 普段の何気ない仕草も、心が疼いて仕方ないのに。あんな瞳でみられたら……。

 

 メルは庭の噴水に入り、頭から水を被った。

 彼女の部屋に戻りたい思いを、懸命に抑える。

 今より魅力的になられたら、始終心配をすることになり、きっと身が持たないだろう。

 なにしろ、彼女を狙う男は枚挙にいとまがなかった。

 特に厄介なのが、生徒会メンバーだ。

 

 王太子アドレーは、クリスティンとの婚約が流れたものの、未だ彼女を諦めていない。

 スウィジンは義理とはいえ兄なのに、クリスティンに恋情を抱いている。

 生徒会という肉食獣の群れのなかに、彼女はいる状態なのだ。

 

 しかし誰より、この自分が最も危険かもしれない。

 今すぐにでも、彼女を攫い、男たちから引き離して、自分だけのものにしたかった。

 クリスティンは、きっとついてきてくれると思う。

 だが後で、彼女が後悔してしまうかもしれない。

 

 今とは全く異なる環境となる。

 冷静に考える時間を置くべきだ。

 取り返しがつかなくなってからでは遅いから。

 彼女を傷つけるようなことになったら、悔やんでも悔やみきれない。


(……でもあんな姿で私を見、あのような言葉をかけられたら……)


 何も考えられなくなってしまう。

 決意も、理性も、消滅しそうになる。

 昼間もスウィジンがこなければ、どんなことをしてしまっていたことか……。

 どれほど魅力があるのかをクリスティンは自覚し、色々控えてほしい。


 今後、もっと自制心を強く持たなければと、メルは思った。




※※※※※




 休日が終わり、クリスティンが学園に戻ると、ルーカスの言っていた彼のハトコが留学してきた。


「オリヴァー・フォルツです」


 彼はクリスティンたちと同じクラスとなった。

 金の髪に、眼鏡の奥で光るスカイブルーの瞳、上品な口元をした少年だ。

 さすが、メルやルーカスのハトコである、美形で長身だ。

 

 放課後、中庭でルーカスから、あらためて彼を紹介された。


「同じクラスになったようだから、もう知っているだろうが、ハトコのオリヴァーだ。ギールッツ帝国の宮廷占星術師で、魔術探偵でもある」

「魔術探偵?」


 クリスティンが尋ねると、オリヴァーがそれに答えた。


「魔術探偵というのは、犯罪をおかした術者、これから犯罪を行おうとする術者を見つけ出す人間のことです」

 

 オリヴァーによれば、魔術探偵は魔力保持者のオーラがみえる。犯罪者は、魂が濁るらしい。

 オリヴァーは、クリスティンとメルにあらためて丁重に挨拶をした。


「これからどうぞよろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしくお願いいたします」


 クリスティンはふと既視感を覚えた。

 

 ──? 

 自分は彼を知って、いる?


(でも……帝国の人だし、今迄会ったことなんてないわ)


 オリヴァーは隣国皇子のハトコ。ゲームに出ていてもおかしくはない。

 これほどの美形なら、攻略対象ではなくとも、それなりに重要キャラだったはず。

『恋と花冠の聖女』に登場していなかったのは確かだ。


 では続編?

 しかし前世、自分は発売前に亡くなった。

 世界観が同じで、隠しルート、メリバルートが印象的といわれる関連ゲームもあり、それは発売済みだったが、未プレイ。


(きっと、気のせいね)

 

 クリスティンはそう結論を出した。

 オリヴァーは、メルを直視する。


「あなたはオレを覚えていないでしょう、メル様」

「敬称はいりません。メルで。私はファネル公爵家の使用人です。敬語も使わないでください。周囲におかしく思われます」


 オリヴァーは戸惑いの表情を浮かべながらも、頷いた。

 メルは続ける。


「幼少時の記憶がなく、私は確かにあなたのことを覚えていません」


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