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闇の悪役令嬢は愛されすぎる  作者: 葵川 真衣
第二章

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6.告白の場面


 ──週末の連休、公爵家に戻って、クリスティンは一目散に書斎へと向かった。


「お父様」


 勢いよく扉を開けるクリスティンの剣幕に、部屋にいた父は目を白黒とした。


「なんだ? クリスティン?」


 クリスティンは拳を握りしめ、心から訴えた。


「お兄様を、なんとかしてくださいませ!」

「ん? スウィジンがどうかしたのか?」

「お兄様が、メルに色々と用を言いつけるのです! 幾らメルが優秀だからといって。メルは、わたくしの──」


 恋人だと口にしそうになり、焦って言い換える。


「わたくしの、近侍ですわ。ですから今後お兄様がメルに命じないよう、お父様から注意していただきたいの。お兄様のせいで、わたくし、筆舌に尽くし難いほど困っているのですわ!」


 それでなくても突然の校則や、メルの真面目な性格や、クリスティンの魅力のなさなど、様々な要因が相まって恋人として過ごせていないのだ!

 

 生徒会役員、主にスウィジンのせいで、一緒にいる時間が大分減っているのである。

 迷惑極まりない。


「ふむ」


 父は顎を撫でる。


「おまえも言う通り、メルは優秀だ。スウィジンも、重宝しているんだろう。だが、おまえに付けた者。不要不急のことでメルを使わないよう、スウィジンに話しておこう」


 本当はメルに一切用事を言いつけないでほしい。

 だがメルは今公爵家に仕えている。父に、それ以上要求することはできず、部屋を後にするしかなかった。

 

 

 薬草園で、気分転換しよう……。

 クリスティンは汚れてもいいようにステテコウェアに着替えて、庭師と薬草園に行った。

 庭の一角に、クリスティンの薬草園があるのだ。

 学園にいる間は、庭師に世話を頼んでいた。


「うん、順調に育っているわね!」


 頬に土をつけて微笑むクリスティンに、長年屋敷に勤めている庭師は、にこにこ笑顔だ。


「ええ、クリスティン様も屋敷にお戻りになられたときは、熱心に世話をされていらっしゃいますから」

「いつも、ありがとう」


 庭師に礼を言い、彼が立ち去ったあともクリスティンはしばらく薬草園で過ごしていた。

 頬や服が汚れたけれど、そのためステテコウェアを着ているし、支障ない。

 だが、父や母や兄に見つかると、お小言を食らってしまうのだ。


(苦情を受ける前に、部屋に戻りましょう)

 

 歩き出しはじめると、木陰でなにやら人の話し声が聞こえてきた。


(?)


 首を傾げて、声のしたほうに移動すれば、メルと、メイドの姿がみえた。

 この屋敷のメイドではない。みたことのない少女だ。

 たぶん、公爵家へ使いでやってきたのだろう。

 なんともいえない雰囲気が漂っている。

 どういう現場か、クリスティンは朧げに理解する。


(…………)

 

 メイドが口を開いた。


「以前、お茶会でお見かけしたときから……ずっと想ってました。今日、このお屋敷にお使いに来て、もしメル様にまたお会いできれば、気持ちを伝えようと思って……」


 可愛らしい少女は潤んだ瞳で、メルを仰ぐ。


「好きです。付き合ってください」


(やっぱり告白の場面……)

 

 今迄、メルが告白されているのを目撃したことは度々あり、遭遇するのは、初めてではない。

 クリスティンは以前とは違う自身の感情の動きを感じた。

 ひどく気分が塞ぐ。

 イケメンで長身、スタイル抜群、仕事もできて有能なメルは性格もよく優しい。

 モテるのは当然だ。


「流石、プレイヤーから攻略対象にと強く望まれていたメルねー」などとこれまでは呑気に思っていたが、今は気が気ではなかった。


「誰とも付き合う気はありませんから」

 

 メルはいつも通り、そう答える。


「誰か好きなひとがいらっしゃるのですか?」

「はい」


 彼はそれを認めた。


「……お呼び止めして、すみませんでした」

 

 きゅっと唇を噛みしめ、メイドは頭を下げて、立ち去っていった。

 その背をクリスティンは見つめた。

 ほっとするが、彼女の心を思い、胸が痛む。

 勇気を振り絞って、告白したのだろう。その気持ちがわかる。


(わたくし、ほぼ勢いで告白してしまったけれど……)

 

 恋が成就して、運が良かった。

 

 すると後ろから声がした。


「クリスティン様?」


 ぎくっとして振り返れば、そこにメルが立っていた。


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[気になる点] 続きが早く読みたいです!主人公がメルの妻になるまで書いてください!
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